強者の前で女性が声を挙げるということーアンジェラ・デイヴィスから学ぶ

2024年の選挙戦時から”America First”を掲げてさまざまな発言をしてきたトランプ大統領。2025年1月20日の就任の日には、パリ協定からの再離脱を表明、WHOからも離脱、パナマ運河を再びアメリカの管理下に置く意向を表明しました。また、連邦政府における多様性、公平性、包摂性(DEI)に関する政策を終了する大統領令に署名。連邦政府が認識する性別を「男性」と「女性」の2つのみとし、性別の変更を認めないとする大統領令、さらに、2月1日には、トランプ大統領はカナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税を課す大統領令にも署名。2月3日(日本時間2月4日朝)に、イーロン・マスクが、海外援助を管轄する国務省傘下のUSAID(アメリカ国際開発庁)について、トランプ大統領が閉鎖に同意したと伝えたというニュースが飛び込んできました。今日は、教育省の廃止を目指すというニュースが・・。

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民主主義のつくりかたー市民教育から学校文化の醸成へ。Ron Bergerからのメッセージ

アメリカの教育者、ロン・バーガーの主著 ”An Ethic of Excellence”の日本語訳『子どもの心に灯をともす』(英治出版)が2023年3月に出版されてから、もうすぐ丸2年となります。昨年夏には、ロンの来日が実現しました。米国サンディエゴにあるハイ・テック・ハイの教育大学院が2013年から実施している国際的教育カンファレンス、Deeper Learningの日本版(Deeper Learning Japan 2024) を同校とMOU締結の上スタートし、初代キーノートスピーカーとして招聘しました。

 

Deeper Learning Japanはハイ・テック・ハイ教育大学院を卒業した芦田加奈さんをリーダーに、『子どもの心に灯をともす』の翻訳者、塚越悦子さん、High Tech Highに留学した岡佑夏さん、そして同書の企画と解説を担当した私の4名がコアチームとして運営し、その後もロンと緩やかに交流を続けています。今年は、ロンから驚きのオファーをいただき、サンディエゴで開催されるDeeper Learning 2025 (4/2-4) で、塚越悦子さん、私、そして昨夏ロンの通訳を担当した私たちの子どもたちが一緒にカンファレンスのDen Talkに登壇することになりました。(来年度のDeeper Learning Japan(DLJ2025) は2026年1月5-6日を予定しています)

 

そうしたやりとりの中で、ある仕事の関連で教育と民主主義について、ロンにコメントを求めたところ、びっくりするほど丁寧な長文のメッセージをもらいました(本人はRambling Thoughtsと言っていましたが・・)。プライベートでもらったものでしたが、極めて重要なことが書かれており、私の仕事としてのアウトプットは少し先であり、トランプのアメリカ大統領就任というタイミングであることから、もらったメッセージを私だけに留めないほうがいいと考えました。そこで、全文をそのまま、現時点で日本の教育者にシェアしたいとロンに伝えたところ、快諾をもらいましたので、このブログで共有したいと思います。

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「わたし」ってなんだろう(4)〜ジュディス・バトラーから学ぶジェンダー

(本ブログは、哲学登山をきっかけに読んだ本の振り返りとなります)

今年の夏、デンマークに行ったとき、オーフスという街にあるジェンダー・ミュージアムを訪れました。本当に行ってよかった。(上の写真はミュージアム内にある多様な性を示したポスターです)

 

常設展(Gender Blender)では、ジェンダーに関する歴史・研究・議論を追いながら、認識を高めるための工夫がされていて、そこには働くことや、ユーモア、身体、品性、政治、アクティビズム、芸術などの観点からさまざまな展示がされていました。1970年代のラディカルフェミニズム[1]の一つ、レッド・ストッキング運動については個別の展示室があります。

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「わたし」ってなんだろう?(3)ー フーコーから学ぶ「言説」

(本ブログは哲学登山の個人的な振り返りになります)

 

今年のオリンピックでは、体操の宮田笙子選手(19)が喫煙・飲酒が確認されたということで、五輪を辞退するというニュースがありました。「ルールだからいけない」という言い方も無くはありませんが、でもそもそもなぜ「未成年の喫煙はよくない」のでしょうか。

 

「教育言説」という言葉があります。たとえば、「子どもの喫煙はよくない」とか「体罰は必要だ」「いじめは根絶されなければならない」というような教育問題に関わるものから、「教育はこうあるべき」というようなものも入るかもしれません。これらの言葉は、一体だれがいつ決めて、なぜみんなそれを「正しい」と思い込むのでしょうか。
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「わたし」ってなんだろう(2)〜デリダから学ぶ「声」 

2021年の2月頃に重度の障がいがある子のお父さんからお声がけをいただいたことをきっかけに、いわゆる障害当事者家族といわれるお父さん・お母さんのお話を聞くようになりました。今は、FOX Projectといって、さまざまな活動もしています。そこで、当初より続けているのが、コアメンバーである坪内博美さん(医療的ケアの必要な重度心身障がいのある14歳の双子(ゆうすけ君・まさき君)の母)、橋場満枝さん(自閉傾向のある広汎性発達障がいの23歳のRay君の母)、あしたかせいこさん(重度知的障がいのある19歳のTaiki君の母)との井戸端会議。何度か一緒に旅行もしています。この2年ほどは毎月一回Zoomでおしゃべりしています。大体2時間から3時間程度喋りっぱなし。また日常的にSNSのグループでもやりとりしています。

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「わたし」ってなんだろう?(1)〜E.H.エリクソンから学ぶアイデンティティ

私はずっと「自分が何者か」という問いを真剣に持たずにきたような気がします。「持たずに済んできたんだよ」という人もいるかもしれません。いずれにせよ、その問いがとっても苦手でした。自分が優しいか意地悪かどうかということもよくわかりません。実際に優しい気持ちになることももちろんあるけれども、とても意地悪になることもあります。女性らしいのか男勝りなのかもよく分かりません。「ワーママ」「駐在妻」など、さまざまな言われ方をしてきましたが、どれもしっくりきませんでした。今も学校の先生でもないし、研究者でもないのに教育に関わっていて、自分は一体何者なのだろうと思っています。そこに名前をつけたくなくもあります。自分に述語をつけることについては、ずっとモヤモヤしてきたし、今でも抵抗感があります。

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地域とともにある教育(1)ー能登被災地訪問

5月15日から17日まで北陸三県(富山県、石川県、福井県)を周り、とくに16日は震災に見舞われた石川県珠洲市に伺いました。きっかけは、Learning Creators’ Lab(LCL本科)の3期生の杉盛さんが珠洲市に勤務され、移住定住の推進において教育の側面からもチャレンジされていたことにあります。現地の方のお話を聞いたり、被災した各地を回ることができましたので、みなさんにも共有したいと思います。

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アートと教育(3)デューイ・民主主義とクラフトマンシップ

シラーカントと読んできた「アートと教育」ですが、デューイで一旦区切りをつけたいと思います。結論から言って、、デューイ、やっぱり面白い!!です。デューイの感覚って民主主義に対する考え方もそうなのですが、芸術(Art)に関しても、教育の観点が根底にあります。そのことによって、アート(芸術)が誰しもに開かれたものになっていきます。カントもシラーももちろん、私たち一人ひとりが「心に自由を持っていい」と言ってくれたわけですが、まだまだ「芸術作品」は一部の才能ある人たちが生み出すものだと考えられていた時代でした。カントは「天才」に関する考察を行い、普遍的で次世代の模範となるような作品を生み出す人たちについて考えました。シラーも自身がドイツではゲーテと並ぶ大詩人と評価されており、子どもの制作する拙い遊び道具までが芸術作品だとは言わなかったかもしれません。

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アートと教育(2)カント『判断力批判』心と身体をフルに使って理想の形を構想しよう!

前回はシラー『人間の美的教育について』を読みながら、人は美的生活によって「自分自身の欲するものに自分自身をつくるということー自分がありたいと思うものである自由を、完全に取りもどす」ことができるということ、そしてそういう自由のために教育がいかに貢献できるだろうか、ということについて考えていきました。

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アートと教育(1)シラー『人間の美的教育について』遊戯衝動は人を美的人間にする?

昨年は『協働する探究のデザイン』を5月に上梓した後、インクルーシブ教育のFox Projectが本格稼働したので、もうてんてこ舞い。活動ばかりで趣味のブログが全然書けない年でした。「活動しなさい」というメッセージだったのだと思っていますが、やっぱり色々読んだり考えたことは記録に残しておきたいもの。ということで新年の決意(!?)ではありますが、今年は頑張って書いていきたいと思います。

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