アートと教育(3)デューイ・民主主義とクラフトマンシップ

シラーカントと読んできた「アートと教育」ですが、デューイで一旦区切りをつけたいと思います。結論から言って、、デューイ、やっぱり面白い!!です。デューイの感覚って民主主義に対する考え方もそうなのですが、芸術(Art)に関しても、教育の観点が根底にあります。そのことによって、アート(芸術)が誰しもに開かれたものになっていきます。カントもシラーももちろん、私たち一人ひとりが「心に自由を持っていい」と言ってくれたわけですが、カントは「天才」に関する考察を行い、普遍的で次世代の模範となるような作品を生み出す人たちについて考えました。シラーも自身がドイツではゲーテと並ぶ大詩人と評価されており、子どもの制作する拙い遊び道具までが芸術作品だとは言わなかったかもしれません。

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アートと教育(2)カント『判断力批判』心と身体をフルに使って理想の形を構想しよう!

前回はシラー『人間の美的教育について』を読みながら、人は美的生活によって「自分自身の欲するものに自分自身をつくるということー自分がありたいと思うものである自由を、完全に取りもどす」ことができるということ、そしてそういう自由のために教育がいかに貢献できるだろうか、ということについて考えていきました。

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アートと教育(1)シラー『人間の美的教育について』遊戯衝動は人を美的人間にする?

昨年は『協働する探究のデザイン』を5月に上梓した後、インクルーシブ教育のFox Projectが本格稼働したので、もうてんてこ舞い。活動ばかりで趣味のブログが全然書けない年でした。「活動しなさい」というメッセージだったのだと思っていますが、やっぱり色々読んだり考えたことは記録に残しておきたいもの。ということで新年の決意(!?)ではありますが、今年は頑張って書いていきたいと思います。

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「解放の学力とインクルーシブ教育の源流」豊中市南桜塚小学校訪問記(後編)

前編は、豊中市南桜塚小学校に訪問した時の授業の様子などについてレポートしました。その後校長室で、橋本先生には、豊中市には南桜塚小学校にかかわらず、障害のある子を受け入れしている学校はたくさんあること、自分はこの学校に赴任してまだ1年であり、50年にわたる長い人権教育の流れのなかで、今のようなインクルーシブ教育の形が出来上がってきたことをお伺いしました。また、橋本先生自身、自分自身はもともと人権のことについて詳しかったわけではないが、初任のときからあたりまえのように関わることになった教職員組合活動や「障害」をもつ仲間と共に歩む豊中若者の集いのなかで、徐々に障害のある子の包摂を含めた人権教育に対する理解が進み、熱意をもって取り組むようになったといいます。また、授業を見せていただいた阪本珠生先生も豊中市のインクルーシブ教育の中で育ち、中学校の時には当時全国で初めての全盲の先生に教わりました。

 

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「やっぱり一緒でないとあかんねん」豊中市立南桜塚小学校訪問記(前編)

訪問から早5ヶ月が経ってしまったのですが、FOXプロジェクトというインクルーシブ教育の活動の一環で2023年2月20日、大阪府豊中市立南桜塚小学校を訪れました。豊中市のインクルーシブ教育の先進的な取り組みは全国的に知られているかと思います。その中でも南桜塚小学校はメディアにも取り上げられることが多いので、知っている方も多いかもしれません。医療的ケアが必要な重い障害のある子や、全盲の子たちも一緒の教室でほとんどの時間を過ごし、学んでいます。一体現場はどうなっているのでしょうか。

 

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現象学からみる私(2)ーアイデンティティって何?

前回は、私たちの経験世界がどういうものなのか、世界ってなんだろう、というあたりから間主観性(intersubjectivity)まで私の経験から記述してみました。今回は、もう少し「私」ということに迫っていきたいと思います。

 

ところで今回の哲学登山の講義そのものでは直接扱わなかったのですが、副読本として紹介されていた田口茂著『現象学という思考』を年末に読んでみたらとにかく面白かった。まさに「現象学からみる私」、私のアイデンティティとはなんなのだろう、と考えさせられました。今回はこの本を中心に纏めていきたいと思います。「私」ってなんなのでしょう?「私の本質」なんて掴めるものなのでしょうか。

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現象学からみる私(1)ー「事象そのものへ」の子育て

教育に関する哲学書を輪読していく哲学登山というプログラムをやっていて、前回の「現象と人間」からもう半年経っているのですが、振り返りのブログが滞っておりました。色々読み直したり、新しく読んではいたのですが、少し読み進めてはほかの仕事が入りを繰り返してました。でも、年が明けてようやく少しまとまった時間がとれましたので、いつものように簡単にメモにしておきます。

 

なお、この登山では、フッサール『ブリタニカ草稿』、ハイデガー『存在と時間』、メルロ=ポンティ『知覚の現象学』の一部を読んでいったのですが、とにかく面白かった!私の経験に照らし合わせても、日常生活的にたしかにそうだと思い当たる部分がとても多く、且つ教育を色々考えるにあたってイメージが大きく膨らみました。まさに「うっわー!!」の連続。そもそも「観る」という営みは、教育においても「みとり」と言われるくらい大切なもの。自分のためのメモではありますが、私の拙いブログが、毎日の授業や子育ての参考になるようなものになっていたら嬉しいです。

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同じ空気を吸うためにーインクルーシブ教育を切り拓いたジュディス・ヒューマンの生き方から学ぶ

あけましておめでとうございます。

昨年は、スタートしたインクルーシブ教育のFOXプロジェクトの模索の年だったように思います。2021年2月に日本でも数例しかない遺伝性疾患を持ち、重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した、重症心身障害児(重心児)未來君のお父さんから連絡をいただき、重い障害がある子の保護者の方たちとお話をするようになったことがプロジェクトのきっかけでした。その後、寝たきりで医療的ケアが必要な双子のゆうすけくんとまさきくんのお母さん、広汎性発達障害(自閉的傾向)でこだわりが強く、言葉では細かな感情などのコミュニケーションを取るのが難しいRay君のお母さんたちも一緒に、プロジェクトを進めています。

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FOXメンバー合宿してきました!(軽井沢風越学園・ほっちのロッヂ訪問)

今年の夏はとても暑かったですが、だんだん肌寒くなってきました。暑かったことを忘れてしまいそうですね。

 

さて、こたえのない学校では、昨年よりFOXプロジェクトというインクルーシブ教育のプロジェクトをはじめました。重度の障がいを抱える子の親がコアメンバーとして参画していて、住んでいる地域もバラバラなので、いつもはZoomで雑談をしています。でもさすがにみんなで集まって、時間を気にせずに存分に話したいね!とのことで、10月10〜12日、2泊3日で合宿をしてきました。場所は軽井沢!

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障がいがあっても「たのしさ」で繋がる共生社会へ −エグモント・ホイスコーレン訪問

8月中旬にデンマークに行ってきました。千葉で里山をコモンズ(共有財産)として、コミュニティづくりをしている人たちが企画した旅に便乗し、ユネスコ世界遺産を目指すレス島の海藻茅葺の家やエコビレッジなども見に行ったのですが、私自身の主目的は、昨年スタートしたインクルーシブ教育推進のFOXプロジェクトに絡めて、誰もが「ノーマル」に生きることができる共生社会を実現するという、ノーマライゼーションの発祥の地デンマークのインクルーシブ教育・社会の現状の視察。行ってきたのは以下の2箇所です。

 

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