第三の算数? シンガポール算数

 

こんにちは。藤原さとです。

かなーり、ブログが滞っておりましたが、少し書き留めておきたいことがあったので、久しぶりに更新します。

さて、今日のお題は前回に続き「算数」。少し前ですが、こんな記事がありました。

ジェフ・ベゾス氏は子どもに「シンガポール式算数」を教えている
https://www.businessinsider.jp/post-107178

ジェフ・ベゾスは、アマゾンのCEOですが、子供の教育について触れています。その記事によると、ベゾスの子供が学ぶ「シンガポール算数」はマスタリーアプローチであり、アメリカの「マインドセットアプローチ」と対照をなすもの、とのこと。もちろん日本の算数とも違います。

アメリカの「マインドセットアプローチ」は、上記の記事中に「より幅広い概念を学ぶことで算数の考え方をより直感的に生徒に理解させようというもの」とありますが、私も経験がありまさにその通りだと思います。特に低学年では、数字を扱う前に、粘土で模型を作る、ハサミでいろいろな図形を切る、パイを切ったり、キャンディを人数分分ける、コインをジャラジャラだし、いくらになるか計算をする・・といったアクティビティが先に入り、それから数式に入っていました。日本の教育方法に慣れた私にとっては、新鮮で魅力的に映ったものです。

<過去ブログ>
アメリカ小学校の算数・理科・社会 ~キーワードは個別化
https://kotaenonai.org/blog/satolog/1288/

 

一方で、どうしても演習や計算をする時間が減ってしまい、十分にマスターしないまま次の単元に行ってしまう子も多くいました。そういった意味では、算数の学ぶ順番やスピードが非常に緻密に設計され、丁寧に練習をすることでほとんどの子がマスターできるようになっている日本の教育は素晴らしいものだと思うことも多かったです。アメリカは、教科書がない(厳密にいうとあるのだが、それをまんべんなくやるとか順番にやる必要はない)ため、どうしても先生によっては、じっくり取り組むべき単元をすっとばしてしまって、子供たちが混乱に陥ったり、マイルール説明に子供たちが「??」となったりしていました。OECDでも日本の数学のレベルは世界トップクラスであり、公文式のようなものが全世界に広まっていることを考えると、日本のスモールステップの着実な算数の在り方は誇るべきものではないでしょうか。では、シンガポール算数とはなんでしょう?

 

<シンガポール算数って何?>

シンガポール算数がマスタリーアプローチと言われる所以は、年間にいくつかの非常に限られた数の“コンセプト(概念)”を対象とし、それをマスターすることに注力しているからだそうです。

シンガポールポールマスの歴史は比較的新しく、1981年まではシンガポールでも海外の教科書が付かれていたそうですが、1982年にシンガポール教材開発公社がオリジナルの教科書を開発。そうしたところ、TIMSSなどの国際テスト、また米国でも個別の学校統一テストで、シンガポール算数を採用した学校のパフォーマンスが大きく上回ったことで、導入が進んでいます。実は子供の学校の隣の教育区ではシンガポール算数をメイン採用していました。

他、南アフリカ、サウジアラビア、ヨルダン、チリ、パナマ、フランス、アメリカ、パキスタン、インド、インドネシア、フィリピンなど世界中の25カ国以上で、シンガポールの教科書が採用されているそうです。(現地のカリキュラムに含まれる形もあり)

 

<シンガポール算数の具体的問題>

さて、こうしたシンガポール算数ですが、具体的にどのような問題を解いているのでしょう。今、実は子供がシンガポール算数をしていて、良問が多いなあ、と思います。具体的な問題については、「世界一の学力がつくシンガポール式算数ドリル 小学1〜6年: 「バーモデル」で文章題にとことん強くなる!」という本が非常にわかりやすく、子供の使っている教科書の内容とも一致感がありますので、ここで下記引用させていただきます。

たとえば、小学1年生の問題・・
縦横斜めの合計がすべて24になるように解きます。

こちらは、小学校5年生の問題です。バーモデルというものを使って解きます。

答えは、84です!

次は6年生の図形問題です。

こちら、私も8分くらいかかりました。。答えは、31・4㎝です。

 

娘が使っているテキストはこちら。

Source: http://www.hmhco.com/shop/education-curriculum/math/homeschool/math-in-focus-homeschool

<日本の算数>

さて、日本の算数、OECDなどのスコアが高いということは、基礎がしっかりとしていて平均的なパフォーマンスが高い、ということになりますが、実は近年じりじりとその順位が下がりつつあります。

5~16歳の生徒を対象とする、「PISA 数学リテラシー」。日本は2000年の初回調査で1位でしたが、2012年日本は7位、2015年は5位でした。2015年のTIMSSをみると、小学4年生の算数の成績ではシンガポールが1位、日本は5位(38カ国・地域中)。ここでも日本は、1995年の初回調査3位から年々順位を下げてしまっています。(といっても、上位にあるのは韓国や台湾です。とはいえ少し悔しい!?)

また、進度も日本がダントツのトップということはなくなりました。現時点では、シンガポールのほうが明らかに早く、単元によっては、アメリカのほうが早いこともあります。最近のアメリカの算数はシンガポール算数の採用にかかわらずコモンコアの導入後、読解問題の割合が非常に多くなっており、注意深く読まないと間違えるひっかけ問題や考えさせる問題が増えてきています。

こうなると明らかにアジア諸国、そして欧米のトップ層と比較すると、日本の算数はだんとつに高いレベルとは言い切れない状況になっていると思います。日本の算数は進んでいる、と思い込んでいると世界の動きは速いです。きちんとウオッチしておいたほうがいいかもしれません。

では今日はこの辺で。

 

<参考文献>

What is Singapore Math?
http://www.pbs.org/parents/education/math/math-tips-for-parents/whats-singapore-math/

Singapore Math Modelmatics
http://www.teach-kids-math-by-model-method.com/singapore-math.html

PISA2015
https://www.oecd.org/pisa/pisa-2015-results-in-focus.pdf

「世界一の学力がつくシンガポール式算数ドリル 小学1〜6年: 「バーモデル」で文章題にとことん強くなる!」田嶋 麻里江著

http://www.heibonsha.co.jp/book/b162793.html

 

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