2016年5月16日、ポラリスこどもビジネススクール3期、第2回のプログラムを実施しました。
第2回のテーマは「医療の領域を超える」。命を見て触れて、医療と人間の未来を変える最先端技術を探究していきます。
今回のポラリスナビゲーターは神戸大学大学院医学研究科消化器内科 特務准教授、杉本真樹先生です。(杉本先生のプロフィールとインタビューは>>こちらから)
医師でありながら医療の領域を超え、手術現場を中心にバーチャルリアリティや、プロジェクトマッピング、3Dプリンターなどの最先端技術を使ったイノベーションを起こされている杉本先生。その活動は世界でも注目されています。
今回は、杉本先生の伝えたいメッセージ「壁を取り払い、異質なものを受け入れることからイノベーションがはじまる」をセントラルアイディアとして、最先端技術を実際に体験し、未来の医療について考えました。大人も驚きの斬新なアイディアがでましたよ!
(今回富士通株式会社様にご協力いただき、医療・教育・製造などの分野で使える直感型バーチャルリアリティ機器zSpaceを教室で使わせていただきました。ありがとうございました。)
< 手術ついてみんなどんなイメージを持っているだろう?>
前回遠藤先生の回で、気管挿管の技術を体験したみんな。思いのほか難しいものだと思ったようです。
「チューブを気管に入れるのが難しかった。」
「食道にチューブが入ってしまった。」
「人間の顎がもう少し大きいと良かったんだけど。」
「中が見えにくい。簡単に見えればよかった。」
こうした医療、手術の難しさ、どうやって杉本先生は解決しようとしているのでしょう?
次に、実際に杉本先生の開発した技術を見ていきます。
<手術の難しさを解決する道具たち。何に使うの?これ?>
今回、それぞれのグループに技術を一個ずつ置きました。どうやってそれが医療の現場で使われるのかは秘密です。みんなグループごとに移動してそれぞれの技術を体感し、医療現場での実際の使い道を話し合って予想してもらいました。
1.3D生体モデル
肝臓などの臓器をCTでとった画像から3Dプリンターで、立体の重さ、固さ、感触まで再現します。「ぷにょぷにょしてる。肝臓ってこんなに重いんだ!」
2.3Dグラス
「骨の構造仕組みがわかるので手術の時などに助かるね。」「からだの中に入っているみたいだった!」「手術の練習が、実践できるんじゃない?」
3.AR(Augmented Reality: iPad に3D模型の映像が浮かびます)
「骨とかが邪魔して中の構造が見えないところもこれだと見える。便利だね。」「360度回して見れるんだ!」
4.zSpace
立体画像がディスプレイから飛び出してきます!「うわ、すごい!」「一緒に見られるから、患者さんの家族にも説明できるね。」
<杉本先生のプレゼンテーション>
みんなに体験・想像してもらったところで、杉本先生から種明かしがありました。
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この4つの技術に実は共通していることがあります。実は、すべて僕の体のデータをレントゲンなどでとって、コンピューターで処理して3Dにしているのです。
現在の技術では短時間にたくさんのデータを有効にとることができます。でも、データが多すぎると却ってわかりづらい。そこでさっき見てもらった、バーチャルリアリティ(VR)などがあると そのデータが使いやすくなり、それによって、学習しやすく、記憶しやすくなります。この技術をつかえば、実際に体を切らなくても、体の中に入った様な体験ができるのです。
手術の時に このような技術で例えば、iPadで、見ることができると、まるでカーナビがあって運転するように、安全で正確に手術をおこなうことができます。更に体にプロジェクションマッピングで写すことで内臓までの距離などもわかります。
AR(Augmented Reality)では、360度動かして、実際の臓器と自分の手の大きさと比べるなどして、手術の前にも 予め正確なシミレーションすることができます。患者さんの手術は1回きりで失敗できません。こうやって練習できればいいですよね。
さらにzSpaceを使えば 遠隔医療などに役立ちます。同じ画面を見れるので、遠いアジア、アフリカでも最先端の技術を使って手術をすることができるようになります。また手術室の中で助手の人も同じ画面が見ることができます。
3Dプリンターで立体の臓器モデルを再現できると、切ったり縫ったりの予行練習に使えます。樹脂や水分を含ませることで、臓器と同じ固さや感触にします。透明にして中の血管を見えるようにすることもできます。さらに、電気メスで切って血が出る技術を特許も取りました。実は、患者さんにその実際のがんを臓器モデルで見せながら説明すると治療に積極的になるのです。『先生はここまでやってくれるんだ。』と信頼してくれるのです。手術を模型で練習することで動物実験をなくすこともできるなど、沢山のメリットが生まれます。
今日は最先端のテクノロジーをたくさん見ました。それと共に人間も成長しなくてはいけません。自分がどこまでできるか、それを 超えることができるか、それができると思った瞬間、それが『壁をこえる』なのです。
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<医療を変える提案をしてみよう!~プレゼンテーション>
それでは、いよいよ、いままで体験した事・杉本先生のお話を総動員して、グループに分かれ、未来の医療について提案・プレゼンテーションします。
◆1班
一班の案はZspace を使って工事現場に応用する、というものでした。歩行者や車の位置をスピード計測などで予測して交通事故を防いだり、工事の完成図をみんなで3Dで確認しながら進めるので、施工のミスを事前に防ぐことができます。
◆2班
2班は、人工衛星で100万人の人の中から病気の人を見つけて、コンピュータや飛行機にその情報を送り、また、飛行機にも高性能のカメラを付けて 倒れた人がいたら飛行機で見つけて救急車を呼べるというアイディアを考えてくれました。
◆3班
救急車に大人用と子供用のデータがあってそれを使って、どこから血が出ているかなど具体的に分かるようにする。大学の授業などでも使うし、人間だけでなく動物や建物の模型にも使えます。更に新しい病気の薬も発見できそうです。
◆4班
4班の提案は、退院した患者がお医者さんに行くことなく、自分で自分の体の調子を調べることができるというものです。
技術が進歩すると患者を安心させたり、手術する側も失敗することなく素早く手術をすることができる、他のことも安全にできる。病院以外では、星の構造だって見られるようになるのではないかという話まで出ていました!
<杉本先生からのお話>
最後にプレゼンを見た杉本先生からお話しがありました。
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皆さんの発表に感動したところもいくつもありました。病院にいると一般の人や子供の目線で見ないので、そういうのがわかって良かったです。実際に試してみたいなというのもありました。
今日はかなり最先端の技術を小学生でもわかりやすいように説明したつもりですが、それが発表に活かされていました。患者さん同士が自分で自分の身体を見る(診る)というアイデアなどは、これからの医療を変えていくかもしれません。今日は沢山の体験をしたと思います。こうした体験を積み重ねるのはとても大事なことだと思います。これからも沢山の体験をして、そしてそれを自分のものだけにせず、ぜひ社会のため、人のためになることに役立ててください。
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杉本先生、ありがとうございました!
<プログラムレシピ>
セントラルアイディア
「壁を取り払い、異質なものを受け入れることからイノベーションがはじまる」
探究の流れ
手術・医療現場の困難
壁を越えてやってくる新しい医療技術
医療と人間の未来を考える
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