home > Blog > 藤原 さと > アメリカのホームスクーリング事情から考える学校の存在意義について

 

こんにちは。藤原さとです。

テキサスは2月も後半に入るともう夏の雰囲気です。今年は特に暖冬で、クリスマスの日もTシャツでよく、今ももう昼間はTシャツで大丈夫です。車に乗るときにはクーラーが必要です。

さて、本日娘の学校に久しぶりにランチをしに行ったら(こちらの学校はランチタイムに親が学校にふらっと行って、一緒にランチを取ることができます。スーツを着たお父さんを見かけることも多い)、斜め前に最近転校してきたAちゃんとそのお母さんがいました。

ランチのあとで、そのお母さんに声をかけられて、いろいろお互いの話をしていると、ミシガンから最近きて、しばらくホームスクーリングをして、その後カソリック系の私立小学校にせっかく入ったのだけど、ご主人の会社の業績が悪くなって学費が払えなくなって今の公立に来たとのこと。(こちらでびっくりするのが、初対面の人に離婚や家庭の経済状況をカラっとしゃべることです。若干カルチャーショックを受けてます(笑))

 

<周りにホームスクーリングが異常に多い件>

実は、ホームスクーリングをする人と出会ったのはこれが初めてではありません。今月パーティーで同じ席になったアメリカ人家族も、小学生の女の子二人がいるのですが、ホームスクーリングでした。お母さんが歯医者さんで、お父さんが外では仕事をせず、家にいて一日3-4時間みっちり娘たちに勉強を教えていると聞いたばかりでした。

もっというと、私の家のお隣さん(小学校4年生の女の子)もホームスクーリング、私の娘のベビーシッターしてくれる高校生のお姉さんも、今は公立高校に通っているけど、来年ホームスクーリング検討中。クリスマスパーティで会ったイタリアから来た子もホームスクーリング。

いや、、いくら何でも多すぎではないかと思って、ご主人がアメリカ人のママに聞いてみたら、「結構いると思うよー。だって、昼間にスーパーでお母さんと買い物してる子、あれはホームスクーリングでしょ?」とのこと!!

確かにそうなんです。昼間のスーパーでなぜか小学生くらいの子とお母さんのペアを見かけるのです。「私立でお休みなのか?」「はたまたインフルが治ったけど、まだ学校にいけないのか?」などと不思議に思っていたのですが、そうか。。あれは、ホームスクーリングだったのか。。

それにしても、私自身、アメリカ人コミュニティにどっぷりつかって毎日交友・・というようなタイプではないので、そもそも私が触れ合うアメリカ人ママの母数から考えると異常に高い比率なのです。

ということで、アメリカのホームスクーリングしている子ってどのくらいの割合なんだろう?と、調べてみました。

 

<アメリカのホームスクーリングの現状>

さて、グーグルで少し調べたら、出てきました!

2012年のNational Center for Education Statisticsデータ※ですが、5歳から17歳の義務教育期間の年齢の子供の数の総数が、53.446人で、ホームスクールを行っている子が177万人です。ほぼ、3.3%のなので、日本でいう30人クラスのうちに一人がホームスクールというイメージですね。

更に別のレポート※によると2015年で220万人の子がホームスクーリングだとありました。2003年の調査時では、110万人程度でしたので、単純な数だけでいうと、この10年くらいで、2倍にその数が増えています。

下記のデータによると、ホームスクーリングをする家庭の状況もデータとなっており、年収$50,000以上(約550万円以上)の家庭が65%、両親が大学卒業以上の確率が43%などというデータも見れます。

 

homeschoolingdata

(表をクリックすると元データにリンクします)

 

また、アメリカのホームスクーリングの現状についてのリサーチレポート(※※Brian D.Ray 2015)も見ると、何となく全体像が分かってきました。下記抜粋です。

・ ホームスクーリングの数は、ここ数年年間成長率が2-8%の割合で増加している

・ ホームスクールをしている子供たちの成績は、標準的な学力テストで、平均的に15%~30%のポイント分、スコアが高い。そしてその成績は家庭の収入の多寡や学歴と相関しない

・ ホームスクールの子供たちは、大学入試テストであるSATやACTなどのテストで平均以上の成績であり、大学も以前より積極的に受け入れを行うようになっている。

 

そして、驚くことに、下記のようなリサーチの結果も出ているようです。

・ ホームスクールの子供たちは、自己肯定感や、リーダーシップ、自己理解、社会参画などの各種リサーチ手法によるテストに於いて、社会的・情操的・心理的にも平均値を上回る結果が出ている

・ ホームスクールの子供たちは、自宅学習だけでなく、フィールドトリップや4-Hのような青少年活動、コミュニティ活動、教会活動、ボランティア、スポーツなどに定期的に参加している。

 

このレポートは、National Home Education Research Instituteというところから出ていますので、幾分、ホームスクーリングに好意的なデータかもしれませんが、実際私が直接知るホームスクーリングは、「学校に合わないから」ではなく、「より良い教育を求めて」積極的にホームスクーリングを選択している人が多いので、あながち完全に外れているわけでもなさそうです。

なお、私の周りでホームスクーリングをしている人たちは、「“今年は”ホームスクールをしているのよ」という言い方をする人がほとんどでした。その時の状況に応じてかなり柔軟に学校に行ったり、ホームスクールに切り替えたりしているようです。

ただ、まだこちらでもホームスクーリングは主流派というところまではいきません。アメリカ人の場合、私の周りではオーガニックな生活スタイルを求めている人など、こだわりを持って子育てをしている層が多いです。

 

<ホームスクールができる背景>

こうしたホームスクールの環境ですが、アメリカでも決してメジャーなものではありませんでした。時代の移り変わりと共に増えてきているのだと思います。

とはいえ、アメリカはやはりこういったことをポジティブに受け入れやすい環境、また逆に言えば、公教育で満たされないニーズがはっきりとあるので、広がってきたと感じます。私なりの視点で整理すると以下のようなものがその背景になるでしょうか。

 

1) 個人主義の国であり、もともと非常に合理的に考える傾向がある

アメリカの合理主義というか、個人主義は日本との比較でいえば、非常に顕著です。他の人が何をしていようとも、私はこうだ、と思ったらその通りに行動します。むしろ、他の人と違う個性を尊重するように小さなころから育てられます(関連ブログ)。なので、ホームスクーリングをしても、している人のことをあまりとやかくは言いません。また、学校よりもホームスクーリングのほうがメリットがあると思うかどうかだけで判断する合理性があります。たとえば、クラスでいじめられており、学校側も十分に対応しないのに学校に行き続けるという判断そのものがこちらでは「crazy」となります。また地方で農場経営者の場合などは、遠くの学校に行かせるより、子供たちに馬や牛の面倒をみさせながらホームスクーリングのほうが合理的だと考える人もいます。

 

2) 公教育が有効に機能していない

これはとても大きいと思います。こちらも以前に少し書きましたが、アメリカは教育格差がひどく、荒れた地域の学校では、授業中の喧嘩が絶えず、そもそも授業が成立しません。ドラッグや暴力にさらされて、身の危険を感じるくらいなら、自宅で学習したいと思う層があっても当然です。

 

3) ホームスクーリングが成立する教育システムがある

こちらも重要かと思います。私個人の意見としては、ホームスクーリングがこういう形で広がっていく上でのボトルネックとなるのが、学年の進級について明確な基準値をもっており、それが満たされない場合は落第(逆に飛び級もあり)となる制度が入っているかどうかだと感じています。こちらがなければ、何をもってホームスクーリングを認め、認めないのかを決めることは実質的には極めて難しいと思います。私個人としては、フリースクール法案などの議論は、“本来は”この辺の評価と基準値の議論と切っても切り離せないと思います。

ところで、ここにOECDのPISAからとった、各国の落第比較のデータがあります。(データえっせいさん、素晴らしすぎです! 画像をクリックすると記事にとびます)

2012 PISA Dropout

(出所)データえっせい http://tmaita77.blogspot.com/2015/12/2012.html

 

こちらを見ると、落第が実質的にない国というのは日本以外にはありません。日本の落第のない制度がいかに普通でないかが分かります。(ちなみに、落第がないからいけないといっているのではありません)

アメリカの私たちが住んでいる学区域でも小学校1年生から落第があります。もっというと、条件を満たしていなければ小学校1年生にもなれません。娘の場合は英語がまだまだできませんので、第二外国語対象者(ESL)ということで、1年生から2年生には進級できましたが、2年生から3年生への進級は正直ドキドキします。すでに、100点満点で、Language Arts, Math, Science, Social Studiesで評価されており、70点以下をとると落第です。

 

<学校の存在意義と将来の学校のカタチ・・・>

こうして、ホームスクーリングを身近に感じるという経験は、外野としての無責任な言い方かもしれませんが、思考実験として非常に興味深いものです。

目の前に「学校」という箱の存在ついて疑問を持ち、行動に移す人たち。そういう人たちは、決して変わり者ではありません。

もちろん、「学校」としての「場」があり、そこで縁あって集まった子どもたちが喧嘩したり、遊んだりしながらお互いを認め合っていく経験は、ほかの環境には代えがたいものがあります。私自身ホームスクーリングという選択肢は現時点ではありません。

でも、ホームスクーリングだからといって、人とのコミュニケーションを軽視しているわけではなく、選択した課外活動やスポーツ、慈善活動に注力して何が悪い、と言われれば確かにそんな気もします。

もっとリラックスして考えると、金銭面や時間的な条件さえ満たせば、一度子どもとピースボートにでも乗ってゆっくりと世界一周してみたいなどとも思いますので、その間は船上でオンラインスクーリングができれば、そういうのも楽しそうだなぁ、、と妄想します。

 

k12 onlineschool eyecatch

(公教育に対応するオンラインホームスクーリング)

 

前述した娘のベビーシッターをしてくれる高校生も成績の良いまじめな子でアートが大好き。学校の授業が効率的にとれず、時間が無駄なので、来期はホームスクール(オンライン)にして、アートに時間を割きたいというのも理解できます。

そして、実は海外子女というのは、日本人学校に通わない限り、日本の教育という意味では、実はまさに「ホームスクーリング」なのでした!

現在娘は日本語補習校に通っていますが、週に1回だけ集中して日本の学習指導要領の国語・算数の部分だけ一週間分の授業を受けます。そのあとは、(結構な量の)宿題がだされ、自宅でフォローアップの学習をします。

実は、この家庭でのフォローアップですが、かなりハードなもので、私の周りの日本人家庭でも通わせない選択をする家庭がそれなりの数います。また土曜日が補習校なので、スポーツをやっているお子さんがいる場合にはそちらを優先させるケースも多いです。その場合は通信教材を購入したり、各家庭でそれぞれの選択をします。

では、「学校」って何なんだろう?? 「学校」という場でなければできないことって何だろう? そうやって考えていくと逆に「学校」の存在価値がはっきりしてくるように思います。

 

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近年はICTが入り、個別学習のデータトラッキングが進むようになりました。そうなると、特に認知的な学習分野では個人の個性や能力に応じたオーダーメイドの学習が実現します。そしてそうした学習は、ITを通じて提供されるので、だんだんと空間的な「場」というものの概念が曖昧になってきます。しかも、インターネットで世界中のだれとでも繋がれる今、教室を超えていろいろな人とコミュニケートできるようになります。もちろん「学年」の概念もどんどんなくなってくるかもしれません。

将来の学校の姿ってどうなるんでしょう?

そもそも現在の日本のような教室の概念は、明治時代からのもので、江戸時代は寺子屋や藩校でしたし、郷中教育のようなユニークなものもありました。

なんだか、もっと“ゆるっと”学校のカタチについて考えてみてもいいのかもしれません。

「学校ってそもそも何?」という問い、真面目に考える時期が来ているように思います。

今日はこの辺で。

 

(参考文献)

※ “Number and percentage of homeschooled students ages 5 through 17 with a grade equivalent of kindergarten through 12th grade, by selected child, parent, and household characteristics: 2003, 2007, and 2012” National Center for Education Statistics

※※ “RESEARCH FACTS ON HOMESCHOOLING” Brian D. Ray, Ph.D. January 6, 2015

 

<関連ブログ>

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