今年秋、ポラリスこどもキャリアスクール8期「発明と特許申請に挑戦する3か月!ーまだ存在しない「はじめて」を創り出そう!」のナビゲーターとなっていただく、播磨里江子先生にインタビューしました。
「発明」は発明家のアイディアだけで、世の中に広まってみんなの役に立つようなものにはなりません。そこには、縁の下の力持ちのようにして、発明のアイディアを具体なものにして、特許という形でその権利を保護する「弁理士」というお仕事があります。今回弁理士の播磨さんに「発明」「特許」のお仕事、そしてその面白さについて聞きました。
素敵なインタビューとなりましたので、是非ご覧ください!
<播磨先生のプロフィール>
播磨 里江子氏(弁理士)
慶応義塾大学 理工学部 管理工学科卒業 慶応義塾大学院 理工学部開放環境科学
オープンシステムマネジメント専修 ミュージカル愛好家であり、版権・著作権ビジネスをきっかけに知的財産権に興味を持つ。 技術と法律の両面を要する弁理士という仕事に魅力を感じ、在学中に弁理士資格を取得。修士課程において、技術的距離による特許評価指標の研究を行う。 株式会社ゴールドアイピー 取締役 特許業務法人白坂 副会長(弁理士) 東京都医工連携HUB機構 アシスタントプロジェクトマネージャ 日本弁理士会 知財教育支援委員
こたえのない学校: 先生のお仕事について教えてください
播磨先生(以下敬称略): 弁理士という発明に関わる仕事をしています。発明とは世の中の困りごとを見つけ、その困りごとをなくすために世の中を変えることですが、弁理士は、そのアイディアを思いついた人の話を聞いて、特許庁に申請を行う仕事をしています。発明家のサポーターですね。
こたえのない学校: 仕事で大事にしていること、大事にしてきたことはありますか?
播磨:まずは、アイディアはとても貴重なものなので、他の人に知られないように情報の管理を徹底して行います。また、発明には技術だけではなく、発明者の熱い想いというものがあります。なので、その想いをくみ取って、最大限良い特許になるように支援していきたいと思っています。
こたえのない学校: 発明にはストーリーがあるということですか?
播磨:はい。まさにそこを大事にしていて、発明者に発明のストーリーを聞くことにしています。また、そのストーリーを俯瞰して考えて、客観的な視点から、課題がどこにあって、その発明がなぜ世界にとって必要なのかという内容にまとめていきます。発明家の人たちは、自分たちの発明にとてもワクワクしていて、本当に嬉しそうに話します。その勢いのようなものも一緒に感じながら仕事をしていきます。
こたえのない学校: 今まで印象的だったお仕事はありますか?
播磨:発明者は、大きな企業だったり、ベンチャーだったり、個人の発明家だったりしますが、印象に残るのは個人の発明家さんですね。まず情熱が半端でない人が多く、身近な問題で自分自身が悩み、なんとかしたいと思っている人が多いです。ある発明家は、自分が腰痛で、寝るときにうつ伏せに寝れる枕を考えたおじいさんでしたが、事務所に板に釘をつけた状態のものを持ってこられ、自分の情熱を伝え続けられました。とても楽しい仕事として印象に残っています。
こたえのない学校: 今回のプログラムではIP Samuraiという人工知能を使って特許可能性を判定するシステムを使わせていただきますが、そちらの開発にも播磨先生は関わっていらっしゃりますね。これから先生はどんな方向性のお仕事をしたいとお考えですか?
播磨:弁理士の世界は現在とてもニッチで小さなものなのですが、「こうなればいいのに!」という発明の原点に立ち返り、多くの人が身近に感じ、沢山の発明が生まれてほしいと思っています。
弁理士の扱う権利は知的財産、「ちざい(知財)」というのですが、IP Samuraiは、知財の世界にエンターテインメントを持ち込みたいと思っているんです。日本に眠った「発明」「知財」にも黄金があって、それを目覚めさせたい、見つけたい、そんな考えを思っています。IP Samuraiは鉄腕アトムを生んだ手塚プロダクションさんと連携させていただいているのですが、キャラクター開発なども進んでいて、どんどん発明の世界を一緒に面白いものにしていきたいと思っています。
こたえのない学校:播磨先生は小学生のときに海岸でテトラポットを見て「特許」を知り、それがきっかけで弁理士になられたと伺っていますが、どんなお子さんでしたか?
播磨:小学校の時はひたすら書道に取り組んでいました。また母がミュージカルが好きで一緒に見に行って、私も大好きになってしまいました。高校生の時には演劇会というものがあって、クラスで、30分の劇を脚本づくりから演出から全部自分たちで創り上げ、対抗戦をするというものをやっていまして、それにのめりこみました。知財や発明の世界は、一人作業が多いともいわれるのですが、チームでの発明や、発明の世界をエンターテインメントにしたいという今の仕事は小学生・高校生の時から好きだったこうしたことが今に繋がってきています。私たちは、劇場型知財と言っているのですが、「発明」一つ一つに脚本があり、弁理士はそれを演出する役割だと。今、とてもワクワクしています。
こたえのない学校:播磨先生は、4歳のお子さんがいるとのことですが、自分のお子さんのことも思いながら、これからの子どもたちに向けて、メッセージがあれば、是非お願いします!
播磨:そうですね。私も子育ては悩みながらですが、私は演劇の他にラクロスなどもやっており、一人の力では絶対なしえないことがある、ということを何度も経験してきています。なので、チームワークの力を信じてほしい、と思っています。
また、自分の「好き」「興味」を見つけることもとても大事だと感じています。それを見つけるためには沢山の経験をしたほうが良いと思っています。それは、楽しい経験だけではないかもしれません。発明もはじめは楽しい思いつきかもしれませんが、それを形にしていくには、継続力や忍耐力がとても問われますし、時にはやりたくないことも出てくるかもしれません。そうだとすると、さっきの話とは、一見逆に見えるかもしれませんが「やりたいことだけをやりたい」「興味のないことはやらない」というのも自分の可能性を狭めてしまうように思います。自分の「好き」を探しつつも、いろいろなことにチャレンジし、時には失敗し、沢山の経験を子どもたちにはしてもらいたいなぁ、と思っています。
こたえのない学校: ありがとうございました!
<現在播磨先生が監修・講師を務めるポラリスプログラムの募集中です>
こたえのない学校HP
こたえのない学校ブログ
※こたえのない学校の主催する教育者向け年間プログラムです。
Facebook ページ
https://www.facebook.com/kotaenonai.org