先週あるプロジェクトの関係で学校視察のためにハワイを訪れ、これから視察校(SEEQS、Hanahau’Oli など)について順次レポートを上げていきます。
初日に訪れたのは、Mid-Pacific Instituteです。就学時前から高校までの私立学校で、1908年に設立した、創立100年以上の学校です。ハワイには、オバマ大統領も通ったというPunahou Schoolという名門校がありますが、そこと双璧をなす学生数1500名の大規模校です。
夏に関連法人で開催したLearn X CreationにもスピーカーとしてきてくださったMr. Paul Tumbleが校長として7年前から大改革を進め、プロジェクト型学習や起業家教育に力を入れています。
【幼稚園から小学校】
小学校までは2学年混合(1−2年生、3−4年生)でレッジョエミリアアプローチをベースとしたプログラムが組まれており、プロジェクト型学習を行います。アートとプロジェクトが連携されており、例えば、国語でストーリーテリング、キャラクター設定があれば、それに応じたアートプログラムを週一時間半程度実施します。プロジェクトの例としては、3−4年生ではDentistのプロジェクトだったのですが、はじめに歯医者さんがきて、歯はどのように育つのかを教えてもらったら、子どもたちが「木も同じように育つの?」「植物にも気持ちがあるの?」という問いをだしたので、「木の気持ち」を調べる実験をしてプレゼンテーションをしたそうです。iPadのアプリも積極的に使っていました。
教室を訪れた時はリーディングをちょうどしていました。アメリカの学校では一般的な風景ですが、教室内に本棚があり、子どもたちは自分の好きな本を選んで、好きな場所を選んで、思い思いの格好で本を読みます。
【SEL―社会性と情動の学習の導入】
ミッドパックでも、社会性と心を育てるSELは導入しており、幼稚園から50分の単元を2回組み入れているとのこと。ここで、認知的なものだけではなく、自分の感情を自分の言葉で表現したり、他者の気持ちを尊重したり、協働、創造、批判的思考などを育んでいきます。SELの授業ではブレスレットを作ってユニセフに送る準備をしている女の子たちもいました。下の写真はカウンセリングルームですが、とても可愛い!箱庭なども置いてありました。
【中学生・高校生】
中学生以上になるとぐっと内容が高度になり、選択式のプロジェクト型学習(彼らはMPXと言っています)が本格化します。
MPXでは、農業・流通・エネルギーがテーマとなっておりSTEM(科学・テクノロジー・エンジニアリング・数学)と人文がミックスして進みます。ハワイにおける現実の課題、例えば「気候温暖化によってレタスの栽培と収穫に影響が出ているが、どうしたら良いか?」というような問いに対して、地元の農業者や企業、団体などにプレゼンテーションをしていきます。
また、高校生になるとハワイ大学や地元の企業とも連携して起業家教育も実施されています。下の写真はMIT Media Labの考えを取り入れたラボですが、デザインとエンジニアリングを融合して新しいビジネスを生み出します。具体的には年間の初めに子どもたちはそれぞれ個人でビジネスアイディアを考えプレゼンテーションをし、その後実際にフィールドに出てインタビューした上で、実現可能なビジネスプランを数個までに絞り、その後はチームで取り組むそうです。過去2年で実際に3つの企業が誕生したとのこと。
【ART】
ダンスや音楽、演劇などのプログラムも充実しており、国際バカロレアのパイロットプログラムも実施しています。ちょうど学生はいなかったのですが、シアタールームもあって、ここでミュージカルを選択した学生は本場のブロードウエイのように3週間の間、金・土・日と講演して、25ドルで地元の人たちにも公開しているとのこと。基本のスクリプトは先生が決めますが、コスチュームや照明など現場は子どもたちがリードします。そのほかにも、オーケストラやダンス、映像制作などの授業を選択することができます。ダンスでは、音楽も自分たちで作成し、実際のダンスの発表会だけではなく、保護者の人が楽しめるバーチャルリアリティの映像も作成するとのこと。
【学校経営】
当日の案内は、校長のPaulが実際にしてくれたため、直接にいろいろ話を聞くことができました。「起業家プログラムなど様々な授業アイディアはどこから生まれるの?」と聞いたところ、「思いつくんだよね」と言っていました(笑)。もともとはカナダ出身。国際バカロレア校の英語の教師だったのですが、その後カナダの公立校の校長職などを経て、7年前からこの学校の改革に取り組んでいます。
これだけの大規模校を運営するにあたって、教師教育はとても重要で経営の要と考えているそうで、4日間のPBL(プロジェクト型学習)の研修をしており、それは学校外にも広げていくそうです。実際に3ヶ月や半年などで育成のための教育者の受け入れなども実施しているそうです。
この数年、多くの学校を視察してきましたが、やはりリーダーの考え方や学校理念は教室の現場に色濃く反映されるものだと痛感しています。
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