~寝ても覚めても夢を見よう~ 睡眠科学研究者小川雪乃さんインタビュー

 

STEM(科学・技術)をテーマとするポラリスこどもキャリアスクール4期がスタートしました。 第三回目となる「なぜ人も動物も寝る必要があるの? 睡眠の不思議を探究しよう!」のナビゲーターとなっていただく睡眠科学研究者、小川雪乃さんにインタビューしました。「子どもたちには、自分が『楽しい』と思うことに向かっていって欲しい」とおっしゃる小川さん。素敵なインタビューになりました!

 

<講師プロフィール>

小川雪乃氏 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構

慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、2011年同・大学院政策・メディア研究科後期博士課程を修了、博士 (政策・メディア)。同・医学部解剖学教室(特任助教)を経て現職。日々をよりHappyに生きる人と社会のあり方を考えるべく、24時間刻みの生命リズムに科学的にアプローチ。学生時代には遺伝子発現解析とコンピューターシミュレーションを組み合わせて体内時計の仕組みに迫り、現在はニューロサイエンティストとして睡眠リズムの発達形成の仕組みを明らかにすべく奮闘中。

 

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こたえのない学校:現在のお仕事について教えてください。

小川雪乃氏(以下敬称略): 睡眠の基礎研究をしています。実は、寝ることが成長にどれほど大切か、そもそもなぜ眠らなければならないのかということについてわかっていることはとても少ないのです。

知っていますか?赤ちゃんは大人と比べて寝ている時間がとても長く、1日のなかで寝たり起きたりをなんども繰り返します。これは人間だけではなく、哺乳動物には共通にみられる現象です。このような睡眠パターンは、脳の発達に関係していると言われています。でも、この睡眠パターンの発達の仕組みはまったくわかっていません。

そこで、起きている状態を維持するために重要な『オレキシン』というペプチド(短いアミノ酸の鎖)に着目して、オレキシンを作る神経細胞がいつできるのか、オレキシン神経細胞の機能がどのように発達していくのかを調べています。

ところで、睡眠は成長に大切であるだけでなく、子どもにとっても大人にとっても、生きていくために必要不可欠です。睡眠が奪われ続けると生き物は死んでしまいます。そこで、睡眠がなぜ必要なのか、寝ている間になにが起きているのかを知りたいと思い、睡眠不足の脳内で異常を示すタンパク質の役割をひとつひとつ調べる仕事にも取り組んでいます。

 

こたえのない学校: 仕事は楽しいですか?楽しいとしたらどんなところが楽しいですか?

小川: 世界中のまだ誰も知らないことを、自分で調べ、知ることができることが純粋にとても楽しいです。先にもお話しした通り、睡眠について分かっていることは意外と少ないのです。

もちろん研究は、大変なこともあります。一生懸命書いた論文や研究申請書が不採択だとその時は気落ちします。でも、大抵の場合は有意義な助言をもらえるので、それを糧により良いものを目指します。それから、技術的な問題をなかなか解決することができない状態が長く続くと辛くなりますが、それを乗り越えて、解決に至った時の喜びはひとしおですね。

研究はもちろんのこと、自分の仕事については、常に誠実でありたいと思っています。つまり、自分が見たこと、聞いたこと、考えたこと、それらが正しいかどうかを常に問い、考え、自分自身の責任をもって判断すること。自分の考えを正しく伝えることがとても大事だし、そういうことを実現することにやりがいを感じます。

 

こたえのない学校: これからお仕事でチャレンジしたいことはどんなことですか?

小川: 私は、研究を通じて得た知識を社会に還元し、よりハッピーな次世代を育てる助けになりたいと思っています。

例えば、成長途中の赤ちゃんにとっての睡眠がなんのために必要なのかを明らかにしつつ、赤ちゃんの健やかな発達のためにはなにが大切なのか、どのような生活リズム、睡眠、照明、温度、食事の環境が良いのかが分かってくれば、より健やかでハッピーな赤ちゃん、こどもが増えてくるのではないか。そうしたら、よりハッピーな社会になるのではないかと思います。

 

こたえのない学校:. 小さい頃どんなお子さんでしたか。

小川: いろんなことが気になり、かつ自分でやってみたがる、好奇心旺盛な子どもでした。

読書と理科が好きで、中学校で科学部にはいりました。その頃から研究者になりたいと思っていました。しかし興味が幅広く、どんなことも自分でやってみたいと思うタイプだったので、楽器をやったりスポーツをやったり、文化祭実行委員をやったり、いろんなことに取り組んでいました。どうも、ただひとつのことを極めていく職人タイプではないようです。そこで、学際領域をつないだり、科学を社会に発信するといった、最近になって特に必要性が強調されはじめた繋ぎの役割を、科学者として担っていけたらいいなと今は考えています。

 

こたえのない学校: これからの将来、どんな力が必要になってきて、どのように準備をすべきだと考えますか?

小川: 『想像力』と『表現力』が必要だと思います。想像力は未来を作る原動力であり、人間の素晴らしい能力のひとつです。

想像したことや思いついたこと、いろんなアイディア、理想像を誰かに伝えようと表現すると、それを応援してくれる人や、もっといいアイディアへと改良してくれる人が現れて、やがて未来の現実になっていきます。想像力も表現力も、その人がこれまでに得たインプットの組み合わせの賜物です。徐々に多くの考えに触れ、いろいろなものの見方があることを知ること、いろいろな言葉や表現方法を知ること、知ったことを使っていろいろな可能性を考えてみることは、想像力を養うトレーニングになります。またそれを人に伝えようと工夫していくことで、表現力が磨かれていくでしょう。

そして、他者を思いやることも、相手の立場に立って想像してみて、良さそうなことをする、という想像力と表現力の組み合わせです。新世代の人たちにはぜひ、みんながハッピーになれる未来を想像して、現実のものにしていってほしいです。

 

こたえのない学校: 小学生のみんなへのメッセージをお願いします!

小川: 自分が『楽しい』と思うことに向かっていってください。そこにいろんな可能性を想像して、表現してみたら、それが世界の未来になります。

学校の授業はもしかしたらつまらないかもしれませんが、今学ぶことはこれから先の長い人生の土台となるものです。面白いと思える部分をどこかひとつでも探して、取り組んでみましょう。身の周りは理解のない大人ばかりだったとしても、広い世界には誰か必ず理解してくれる人がいます。いつか出会える時まで諦めないで、待ったり探したりしてみてほしいです。

とにもかくにも、睡眠はよくとりましょう!寝ても覚めても夢を見ましょう! 君たちには無条件の可能性と希望があふれています。君たちがつくる見たこともない未来を心から楽しみに応援しています。

 

こたえのない学校: ありがとうございました!

 

<こたえのない学校とは?>

新しい価値を創造する力をグループワークの中で子どもたちが自ら身につけていく、「探究する学び」のフレームワークを使ったプログラムの開発・実施を行っています。今回松田先生にご登壇いただくのは、小学生対象次世代型キャリア教育プログラムとなる「ポラリスキャリアスクール」です。

 

こたえのない学校HP

https://kotaenonai.org/

ポラリスこどもキャリアスクール4期「STEM(科学・技術)」

https://kotaenonai.org/polaris4-stem-kokuchi-0905/

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