2016年10月23日。ポラリスこどもキャリアスクール4期、STEM(科学・技術)をテーマとしたプログラムの初回がスタートしました。
1回目のテーマは人工知能(AI)。昨今人工知能によって将来の仕事が奪われる、などのニュースが飛び込み、科学・技術の発展によって大きく未来の社会が変わり、仕事の仕方も激変するといわれています。でも、科学・技術が変わることはそんなに恐ろしいことなのか。社会はどのように変わっていき、私たちはどのようにかかわっていくのか。こうした変化の大きな世の中で、単に変化を恐れるのではなく、むしろ変化を楽しんだり、さらには変化を起こそう、という気概をもてるようになるとこれからの人生が楽しくなるはずです。
当日のポラリスナビゲーターは人工知能研究者の松田雄馬さん。松田さんは、「AIも道具。道具は使い方次第で毒にも薬にもなる。人を傷つけることもあれば人を助けることもある。」とおっしゃります。今回はそんなAIとどうやってつきあえば私たちの社会は豊かになるのかという問いに向けてみなで探究しました!
今回、みんなが発表した内容は「全体がアイパッドのような黒板」「カーナビの幸せな使い方」「宿題めんどい!AIよろしく!」「ペッパーをどのように使えば幸せになるだろう?」でした。
下記、プログラムの詳細です。子どもたちはどんな思考をたどり、どんなプレゼンテーションをしたのか。よろしければご覧になってください!
<そもそもAIって何だろう?>
まず、みんながAIについてどんなイメージを持っているかを聞きました。
「人によって作り出された知能のことだよね。」
「人間に操作されないもの?」
「自分で考えて動くことができるもの」
「脳だよね。頭だけ。体はロボット。」
じゃあ、AIのできないことって何だろう?
「死ねない!でも、病気になるのと壊れるのは何が違うんだろう?」
「ものを食べられない!」
「子供を産めない!」
確かにそうですね・・!ではずばりAIってなんでしょう?
このあと、AI技術を使って作られたロボットの動画の一部(https://www.youtube.com/watch?v=wE3fmFTtP9g)を見た後、松田さんから脳のメカニズムについて教えてもらいました。脳って、受けた刺激を電気信号で伝えていくのですが、その脳の仕組みをモデル化したものがニューラルネットワークです。松田さんはそのモデルを作る仕事をしているのです。
<人工知能はどうやって色を見分けているの?>
さて、ざっと人工知能が何をしているのかを教えてもらったので、次はいよいよ自分たちが人工知能になって考えてみます。松田さんは脳の視覚情報処理が専門。人工知能がどうやって色を見分けているかを実際に体感してみます!
皆さん、色の三原色はごぞんじですか?すべての色は、赤と緑と青の組み合わせで表現できます。コンピューターは、色を見て、三原色のそれぞれの色の明るさ(輝度)を数字におきかえることはできます。例えば、赤231、緑83、青21のようなものです。でも、この色の明るさをカウントできたところで、写真に含まれる果物を、りんごとみかんに分けていくことはできません。そうしたときに、AIを使ってやることは・・・。まず、人間がAIに、たくさんの画像を、「これは、りんごだよ」「これは、みかんだよ」と教えてあげます。そうすると、AIは、りんごの画像とみかんの画像のそれぞれの、色(赤と緑と青)の明るさ(輝度)の数字を読み取り、どの数字をどのように使えば、りんごとみかんを数字でわけられるのかを、自動的に計算してくれます。こうして、AIは、人間や動物の子供が、新しいことをお母さんやお父さんに教えてもらいながら学んでいくように、新しいことを人間に教わりながら、学んでいくんです。
さて、初めにグループに配られたのは、表にリンゴとみかんの写真があり、裏にRGB(赤と緑と青のそれぞれの色の輝度)が表示されたカードです。これを見ながら、これらのRGBのデータからなぜりんごとみかんに分けられるのかみんなで推測(仮説をたてる)していきます。
みんな、色の輝度の平均を出してみたり、苦労している模様・・。あるグループではRGBの割合に注目し始めました。そして、緑と青の数字が両方影響しているのか、それとも青だけが主な決定要素なのか激論しているチームも。そして、、松田さんから種明かしがありました。
そう!実は、青の大小がリンゴとみかんが分かれる決定打なのでした!
みんなが、いっしょうけんめい考えたこのからくりを、AIは、自動的に計算してくれるんです。
AIって、便利ですね~!
<AIの限界。AIとどう付き合ったら幸せになれるんだろう?>
でも、こうしたAI。限界があります。つまり、人間がやりかたを教えてあげて初めて人工知能は色々なものを認識できるようになるのであって、逆に言うと人間が教えてあげないと人工知能は動けないのです。色の認識で言えば、「色の認識はRGBで考えてね。」「この写真はみかんで、この写真はりんごだよ。りんごとみかんは違うものだよ。」と教えてあげないと何もできないのです。
また、人工知能にはいろいろなものがあります。ルンバのような掃除機もそうですし、Googleやフェイスブックのなかで、ホームページや画像を自動的に探してくれる「検索エンジン」もそうです。でも、りんごとみかんのワークでわかった通り、人間が指示しないと動かないし、人工知能が考えるためには、りんごとみかんの写真のような膨大な量の情報が必要です。じつはこうした情報、個人的なものも含めて気がつかないところで使われているのです。気をつけないと、写真等を通じてどんな生活をみんながしているのか、プライベートなことまでみんな監視される危険もあるのです。
子供たちからも、AIの危険性として以下のような意見が出ました。
「AIの頭がよくなりすぎると暴走するんじゃないかな?」
「コンピューターウイルスをまいて脅迫することもあるよ。機械が自分でやっちゃいけないことをやりだしたり、核を制御してるのを勝手に打っちゃたりして。」
「AIに支配されちゃうかもしれない。」
AIの限界と怖さが少し分かったところで、「AIとどう付き合ったら社会は豊かになるのか?」というメインの問いに向けて、いよいよグループミッションにチャレンジです。
今回は「一つAIを決めて、そのAIをどう使えば幸せになるかを考える」「学校にほしいAIを考えて、どうやったら幸せになれるか考える」の2つのテーマからやりたいほうをグループそれぞれで選択して考えました。さて、みんなどんな発表になるでしょうか!?
<プレゼンテーション!>
そして、いよいよみんなのプレゼンテーションです。1班から4班までみんな何を考えたでしょうか?
1班:全体がアイパッドのような黒板
先生が喋ると、それがそのまま黒板に書かれていくもの。各時間が短くて、きれいに書けるけど、書かなくてもいいこと、たとえば先生が怒っているような声も全部拾っちゃうかも!デメリットとメリットを整理した結果、AIがあったほうがいいかどうかというとあったほうがいいと答えたメンバーは0人、反対が2名、真ん中が3名となりました。
松田さんからは、「わざわざ黒板に手で字を書くのは何でだろう。先生はポイントだけを絞って板書しているのかもしれない。そういったことまで考えると、もっと面白いアイディアが出てくるかもしれません」と講評いただきました!
2班:カーナビをどのように使うと幸せになる?
カーナビは、道を知らない人でも行くことができてとても便利。でも、ウイルスが侵入させ、思い通りに車を走らせようとする悪い人がいたらどうなるだろう?交通事故を起こすことだってできちゃうかもしれないというプレゼンテーションになりました。
松田さんからは、「ウイルスが入って暴走しないよう セキュリティシステムいれたとしても、いれてない人がいるとどうなるだろう?自分だけ気を付けてすむことでなく 社会全体で 考える必要があるね。」とアドバイスをもらいました!
3班:宿題めんどい、AIよろしく!
3班の発表は誰もが一度は想像する!?・・究極のAIでした!メリットは先生が楽だけど、生徒にとっては、宿題をやる人がいなくなり、自分が分からなくなる・・。結果学校の授業が難しくなり、頭が悪くなる・・。結論はずばり、「人間でいい!」でした笑。
松田さんからは、「AIの強みの一つはコピーできるところなので、頭のいい先生を大量生産できたらどうなるかな」と次のステップへのヒントをもらいました!
4班:ペッパーをどのように使えば幸せになるだろう?
この班は、家族みたいな存在で感情を理解し表すプログラムも持つペッパーを選びました。私たちを慰めてくれたり、気持ちを分かってくれる一方で、悪いことを教えて覚えさせると、人を傷つけてしまうかもしれない、壊れて暴走したり、人間を支配してしまうようなことがあるかもしれない、と話し合いが進みました。そして、ペッパーで不幸にならないためには、人が悪いことを教えない、仮に教えたとしてもそれを覚えないような制御システムが必要、そのような制御システムを作れるので、AIは使ったほうがいい!とみんなの意見がまとまったそうです。
松田さんによるとこれはまさに科学者たちが倫理の問題として扱っているテーマだそうです。人間って良いこともすれば悪いこともする。AIもその両面をきちんと見ていく必要がありますね!
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最後に松田さんから、松田さんの考えるAIの理想についてお話ししてもらいました。松田さんの理想のAIは、松田さんが小学生のときに読んだ「ドラえもん」の中に出てくるのび太くんの言葉にヒントがあると言います。
「勉強して発明するんだ。勉強しなくても、頭のよくなる機械を。」
人間にできることは、勉強して発明すること。発明した機械によって、人間がもっと(楽に)頭がよくなって、さらに(楽に)新しい発明をして、さらに機械が活躍して・・・といったように、人間が得意なことは人間が、機械が得意なことを機械がやっていくことで、人間と機械が「共に生きる」ことができます。このためにも、機械の得意なことと、人間の得意なことが何なのかを良く知って、共存していくことが大事なんだ、ということをお話いただきました。
また、プログラム後、松田さんから下記のコメントをいただきました。
「セキュリティやプライバシーは、どうすれば守れるのか?」ということを自分たちで考えていたり、言葉はもっと柔らかかったですが、科学者の倫理について考えているチームもあったり、「学校にAIを導入したらどうなるだろう?」という問いを問い詰めていって、「機械ではなく、人間がやったほうがいいかもしれない・・・」という結論にたどり着いたチームもあったり。もちろん、話し方は「子供」なんですが、内容は、大人顔負けの議論が展開されていました。やはり、「好奇心」を持つ人は、子供も大人も同じですね!まさに、子供は小さな大人ですね!
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松田さん、ありがとうございました!
<こたえのない学校とは?>
新しい価値を創造する力をグループワークの中で子どもたちが自ら身につけていく、「探究する学び」のフレームワークを使ったプログラムの開発・実施を行っています。今回松田先生にご登壇いただくのは、小学生対象次世代型キャリア教育プログラムとなる「ポラリスキャリアスクール」です。
こたえのない学校HP
ポラリスこどもキャリアスクール4期「STEM(科学・技術)」
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