home > Blog > 藤原 さと > 体験型学習・調べ学習と探究型学習の違いとは?~国際バカロレアのIBワークショップから~

 

こんにちは。藤原さとです。

お盆の時期ですこしゆっくりされている方もいらっしゃるでしょうか。

さて、先週、IBワークショップという国際バカロレア(IB)の教師向け用ワークショップに参加しました。こたえのない学校のスタッフと私が参加したのは、初等教育プログラム(Primary Year Program: PYP)のカリキュラムモデルを3日間、朝から夕方まで学ぶものでした。

私たちは、IBでも中心に据えている、探究型学習を組み合わせたキャリア教育プログラムを開催しています。しかし”探究”は非常に奥深いもので、ちょっと本を読んだだけで、出来るようなものではありません。実際の実践と振り返り、そして子供に携わる大人自らが学び続け、探究し続ける必要のあるとてもチャレンジングなものです。我々も日々勉強です。

今回、国立・私立・インターナショナルスクールの先生方と同じグループで学んだため、小学校の教育現場でどのようにカリキュラムを組み立てていらっしゃるのかも知る事が出来、私たちにとっても非常に貴重な機会となりました。

ということで、今回若干マニアックなブログとなりますが、よろしくお願いします。

IB Workshop

 

<体験学習と探究型学習は違う>

さて、この3日間のワークショップで、私の中で非常にクリアになったのが、“概念学習(Concept-based Learning)”の考え方と、“構成主義⇒学習者による意味の構築”でした。

“探究”という言葉が最近良く知られるようになりましたが、そもそも何をもって“探究型学習”と言われているのかも実はあまり理解されていないように感じます。

探究型学習は、アメリカの教育哲学者であるジョン・デューイ(1859~1952)の「教育とは経験の意味を増加させ、経験を改造ないし、再構成させるものである」※という考えをベースに構築され、それが発展してきたという理解を私はしていますが、IBでは常に世界各国の最新の教育手法・研究・モデル・理論を組み込み、フレームワークとカリキュラムを発展させ続けてきました。

デューイやこの辺を書き出すときりがないので、、ここでは深くつっこみませんが、いずれにしても、こうした一連の「探究型学習」の実践の中で「概念(コンセプト)」は非常に重要な位置を占め、切っても切り離せない関係です。

 

<“概念”とは?>

では、「概念(コンセプト)」とは何か?ですが、今回のワークショップでは、まず「お祭り」「恐竜」「絶滅」「家族」「地球」・・などの単語を見せられ、それが「概念(コンセプト)」なのか「トピック」なのかを話し合うものがありました。

単語によっては見方によって解釈が違い、切り分けが難しいものもあるのですが、どうでしょう?

「恐竜」はトピックっぽいけど、「絶滅」は概念ぽいよね、、というようなディスカッションからだんだん見えてくるのですが、「概念」はいくつかのトピックを繋げて一つの共通する意味合いを出すような言葉だということが浮かび上がってきました。

つまり、「恐竜」はトピックですが、「絶滅」は人類の絶滅や、植物など色々なものを対象として考えることができます。

IBでは、「概念」とは以下3つの性質を持っているものであるとしていました。

 

・Timeless (時間や年代を限定しない)

・Universal (普遍的である)

・Abstract (抽象的である)

 

「探究」では、「トピック」を学ぶのではなく、その上の概念を学び、さらにはその上位階層となる、時間や場所、空間を超えて一般化されるアイディアを学ぶことが目的とされており、これが、「体験型学習」・「調べ学習」との大きな違いです。

たとえば、「恐竜の絶滅について調べる」とか「恐竜展に行く」とかは「調べ学習」「体験型学習」にとどまっていますが、「恐竜」というトピックを通じて「絶滅」という概念について学ぶとなると「探究」の要素が出てきます。

IB(PYP)の探究型学習の全体像は以下のようになっています。

 

PYP Structure

 

この図を見ると一目瞭然ですが、暗記型学習に見られるような「FACT」は最下層に位置しています。そしてその上の層に「トピック」が位置します。ここが「恐竜について調べてみよう!」という層です。そして、その上が「概念(コンセプト)」「GENERALISATION(一般化)」と進むのです。

ここが、「探究型学習」と「調べ学習」「体験型学習」の境目です。

 

<なぜ、概念的学習が必要なのか?>

勿論、体験型学習や調べ学習も暗記ものよりは上位層に位置するのですが、なぜ、そこに「概念」が必要なのかというと、「トピック」までだと応用がきかないが、「コンセプト」まで入るとその応用の範囲が格段に広がるからです。ここは、ワークショップでもリーダーから(耳にタコができるくらい!)何度も何度も繰り返し伝えられた部分です。

「恐竜について知っているぞ!」といっても、「あぁ、そう。」で終わってしまいますが、「絶滅」という概念に対して、地球のあらゆる生物についての自分なりの意見と見識が持てたら、どうでしょうか。また「絶滅」に繋がるような「進化」「誕生」「死」「サバイバル」のような概念を繋ぎ合わせ、何等かの一般化した思考に発展させられたらどうでしょうか。

まさに「恐竜を学ぶ」のではなく、「恐竜で学ぶ」のです。

これが、IBの幼児、初等教育向けプログラムの真髄です。

 

<概念型学習が生きる学び方>

加えて、IBの初等教育プログラム(PYP)におけるカリキュラムの定義として「学習者における意味の構築」というものがありますが、こちらも非常に重要な考え方です。つまりコンセプトを頭から教え込むのではなく、子供たち自らが、ある対象に対してそれぞれの個性を生かしながら、理解を組み立てていく形を実践することが非常に重要とされています。ここでの教師の役目は、既に既知のものを授ける(Teaching)ではなく、子供が自分の経験をもとに、ある対象範囲に対する事実や考えを見つけるのを手助けすることです。

現代は生涯学習時代であり、暗記力よりも思考力が重要というのはあちこちで指摘されていることですが、子供の頃から思考力を身につけることは、非常に重要です。且つ、その思考力とは、大人から授けられた知識をうのみにするのではなく、自分で特定の事象に関連する事実を探したり、その中で概念を発見したりする力であり、更には他者(お友達)との関係性も含めて、事実の羅列に何等かの「意味合い」を見出していく力、それを表現してアクションを起こす力に他なりません。

今回のIBワークショップ、内容的には、学習フレームワーク全般と、必要とされる知識、概念、スキル、学習者の姿勢と態度、行動、そして、評価など全般にわたるものでした。よって、「コンセプト」は、PYPカリキュラムの中心的要素であり、学ぶ意義のある学習内容を探究するための構造を提供する非常に重要なものでありながらも、今回の講義の一部という位置づけでした。ということで、PYPは本当に奥深く、私たちも学びがいがあると感じています。我々も成長しながら、子供たちのよりよい学びを実現していきたいと、気持ちを新たにしたのでした。

 

<参考文献>

Making PYP Happen in the Classroom ©International Baccalaureate

「経験と教育」 ジョン・デューイ 講談社学術文庫

国際バカロレア入門 大迫弘和 学芸みらい社

IB position paper Concept-based teaching and learning H. Lynn Erickson 2010©International Baccalaureate

※デューイの探究(反省的経験)の教育的意義について 光成研一郎

 

***********

こちらのFBページで「いいね!」を押すと、ブログのフォローができます。

https://www.facebook.com/kotaenonai.org

メルマガで、今後のプログラム告知・報告・ブログなどの情報を受け取りたい方はこちらから

https://kotaenonai.org/contact/

こたえのない学校 HPはこちらから

https://kotaenonai.org/

藤原 さと