ポラリスこどもキャリアスクール6期「グローバル」も今回で2回目。
前回は「日本のコンビニが海外で成功するにはどうしたらいい?」というビジネスのお話でしたが、今回も「どうしてみんなケンカしちゃうの?戦争をさけるワザは?」という大きなテーマに挑戦です。
【オープニング】
今回はチャレンジミッション(事前課題)がありました。
自分が調べた戦い(戦争や合戦など)の原因(なぜ戦うことになったのか。他の方法はあったか。)と結果(戦った結果どうなったか)について調べてまとめてくるというものです。
「戦争はしてはいけないのか」「戦争はなくなるのか」についてお互いの意見を聞きながら話し合いをしました。
そして、この日のポラリスナビゲーターは志茂雅子さん。
志茂さんが働いてきた「国連」とか「外務省」って聞いたことある?
みんな聞いたことはあるようですね。
国連はニューヨークに本部があって、「どうやったら貧しい国を助けることができるのか」といったことを沢山の国が集まって話し合う場。
また、国連にはそれぞれの目的を持った機関が沢山あります。
その中でも、ユニセフは有名だよね。志茂さんは、中国にあるユニセフ事務所でも働いていたそう。南スーダンのPKOにかかわる活動のサポートややバングラデシュなど、前回の小野さん同様に世界中でお仕事をしてきた方です。
そんな志茂さんからのみんなへの質問。
「どうやったら戦争はなくなるの?戦争を避けることができるの?」
えー!! 今度もいきなりそんな難しい質問?!です。
だって大人の政治家だって解決できない大きな問題です。
しかし、実はこれも「教室のけんかを止める」というみんなの身近な問題から考えることができるのだそうです。
そして志茂さんは、大人も思いつかないびっくりなことをみんなが考えることもできるかも、と期待しているそう。
A君B君のけんかを止める技を1チーム30個、考えてみましょう。
「先生にちくる」
「けんかをしたら掃除をさせる」
「机の間に下敷きを挟んで(はみ出るのを)防ぐ」
「けんかをしたら給食なし」
「口でけんかしたらという。」
「クラスでルールを決める」
「ほかの学年の先生に手伝ってもらう」
「けんかをしたら水をかける」
「逃げる」
etc.
教室のけんかを止める技だったらどんどんアイデアがみんな出てきます。
思ったよりも、けんかを止める技はいろいろありそうですね。それをグループ分けして
実際にやってみたら、どうなるかも考えてみましょう。
ここで志茂さんより重ねて質問です。
「『けんか』と『戦争』ってとても似ています。でも、違うところは?」
うーん、けんかは死なないよね。
そうなんです。
さらに大きく違うのは、学校ではけんかを止めてくれる「先生」がいるけれど、実際の戦争は止めてくれる「先生」のような存在がいないことだそうです。
そして、戦争はいきなり起きるわけでなく、戦争に至るまでには「ステップ」があるそうです。
それをきちんと知ることが大切だそうです。
まず、国際ルールを無視するような出来事が起こり、
ルールを無視した国に対して、国際社会や関係する国が怒ります。
<STEP1> 話し合いが行われます。
<STEP2> 経済制裁(これはケンカに関してみんなが考えた「給食なし」と似た考え方)
そして話し合いも引き続き行うのですが、それでも防げないときは・・・
<STEP3> 戦争が始まってしまう。
今回は この戦争が始まってしまった例、そして戦争を止めることができた例の
それぞれを志茂さんが紹介してくれました。
【戦争が始まってしまった例】
これはみんなも知っている第2次世界大戦。
日本は中国の満州という場所でルール違反をしたと国際連盟(今の国連の前身)で非難されました。そして、なんと国際連盟自体から抜けてしまいました。
そして経済制裁も受けた日本は戦争を始めてしまい、最後にはとうとう大きな犠牲をはらって全面的に戦争に負けてしまったのです。
【戦争を止めることができた例】
みんなはキューバという国は知っていますか?
「カラフルな家」「海きれい」「野球が強い」
良く知っていますね。アメリカのフロリダにとても近い、カリブ海に浮かぶ楽しそうな国ですが、実はここでは世界が滅んでしまうような「核戦争」が起きそうだったときがあるのです。
キューバはアメリカに近いところで、ずっとアメリカと仲良しだったのですが、そのキューバとソ連(今のロシア)が仲良くなって、ソ連がキューバに核ミサイルを配備してしまうという重大なルール違反がおきました。
もちろんアメリカは「激おこ」です。
STEP2の制裁(海上封鎖)が行われました。
軍艦や飛行機でキューバを包囲して物資が行かないようにしたのです。
このことにソ連も、「激おこ」です。
あわや核戦争が始まるかもしれないほどに緊張が高まります。
(ソ連の潜水艦に積んであった核ミサイルが発射間際まで行ったことが現在はわかっています。もしも、それが発射されていたら・・・)
核攻撃は一発殴ったら、100発殴り返す・・・そのお返しに1000発殴り返す・・・
ひとたび、それが起きたらソ連とアメリカだけでなく地球全体も、核攻撃の後の出てくる核の傘に覆われて気候変動がおこり、寒い寒い冬がずーっと続き、本当に世界が終わってしまうのです・・・・・・
しかし、ここではSTEP1の話し合いが行われました。
お互いの考え(核戦争をしたくない)を手紙で伝え、また、それぞれがラジオやテレビなどで、戦争はしたくないんだというメッセージを発信して相手に伝わることを期待しました。
実は当時はアメリカとソ連は、大変仲が悪くて、リーダー同士が話せる直通の電話線もなければ、今のようにインターネットもありません。
けれど、その中で、出来る方法で一生懸命戦争を避けるコミニュケーションを図ったことで、最終的には「戦争を避ける」ことができました。
もし、このとき何かを間違えていたら、ここにいる私たちは誰も生きていないかも知れません。
【戦争を避けるストーリーを考えてみよう】
北朝鮮のミサイル問題。
先ほどの3つのSTEPを意識して、今なにが北朝鮮で起きているか、みんなで考えてみましょう。
まずはNHKのニュースの映像をみんなで見ます。
みんなに与えられたミッションは3つです。
✔︎ 起きた問題、国際社会が何に怒っているのかを説明してください。
✔︎ 戦争をさけるストーリーを考えて、提案してください。
(いつ、どこで、だれ(とだれ)が、何を、どうするべきか?)
✔︎ 戦略のポイント、工夫したところを教えてください。
今回も志茂さんが 話し合いで出てきたみんなの疑問について個別に答えてくれました。
「北朝鮮からお金を取り上げるのって国際ルールに違反じゃないの?」
「どうして話し合いにロシアが入っていなくてはいけないの?」
「北朝鮮はお金がないのだからみんながうらやましい、もっと仲間にしてあげたら?」
鋭い疑問が次々と出てきます。
さらには、どんな方法で戦争を止めれるんだろう。
話し合いにも熱が入ります。
【プレゼンテーション】
<1班>
北朝鮮は、「なめられたくない」「攻められたくない」から、ミサイルを飛ばす。
それに対して、他の国は「危ない」「迷惑」と考えている。
戦争を避けるストーリーは、寸劇で発表してくれました。
タイトルは、「キムの絶望〜部下引っこ抜き作戦の巻〜」。
まず、アメリカや日本や他の国がお金をあげて、キムさんの部下を引き抜こうとします。
作戦が成功すれば、ミサイルの開発ができなくなります。
お金で説得できなかった場合には、キムさんのみを狙う暗殺計画にうつります。
聞き手からの質問もありました。
Q1「暗殺に失敗したら?」 →A1「何度でも作戦を実行します」
Q2「暗殺に成功した後は?」→A2「一般人にヤンヤヤンヤ言ってもらう」
<2班>
核を使って北朝鮮がアメリカを攻撃しようとしている。
日本はアメリカと北朝鮮の真ん中にあるから、二つの国の喧嘩を気にしている。
北朝鮮のミサイル発射が失敗したら日本に落ちて、日本に住んでいる人が危ないから。
そして、「逃げる(攻撃を受けないようにする)」「約束(交渉)をする」という視点で、
戦争を避けるアイディアを複数考えてくれました。
・アメリカの人が北朝鮮からもっと遠くに逃げる。
・アメリカに壁を作る。ミサイルが入らないようにする。
・アメリカも北朝鮮に向けてミサイルを発射する。
・アメリカはお金を持っているので北朝鮮がミサイル発射をやめたらお金をあげることを約束する(交渉)。
<3班>
今の北朝鮮は、世界中から責められている。貧しいけれど、ミサイルの技術を進歩させている。
アメリカは、北朝鮮が来年もミサイルを撃ってくるのではないかと分析している。
戦争を避けるためには、北朝鮮の話を聞いてあげて、お金を渡し、ミサイルの開発をやめてもらう。
ミサイルを作っていないかどうか、他の国が何回か調べに行く。
調べた結果、ミサイル作りをやめていればさらにお金を渡して、日本のような普通の国になってもらう。
ミサイル作りをやめない場合は、お金は渡さない。
実際のニュースでは、2017年11月から12月にかけて、北朝鮮がグアムに4発ミサイルを打つ計画があると発表されている。ミサイルを撃ってこられた場合、すでに準備されている現実の対策としては、迎撃ミサイルなどがあると思うが、
3班としての対策案は、色々と考えたけれど、まだわからない。
<4班>
北朝鮮が他の国に攻撃をして、戦争をしそう。
「どこで説得するか?」「北朝鮮はどうすれば嫌がるか?」「ミサイルを作らせないためにどうするか?」
の3つをポイントにして、戦争を避けるストーリーを考えました。
具体的には、ロシアと中国から北朝鮮に対して圧力をかけてもらうように国連の場で説得する。
圧力をかけることによって、北朝鮮はお金がなくなる。
さらに、選択式クイズでみんなに北朝鮮のことをもっと知ってもらいます。
Q1「北朝鮮に圧力をかけている国は?」
Q2「協力をしていない国は?」
Q3「北朝鮮はどうしてアメリカを挑発するのか?」
の3問で、例えば、Q3の答えは、「自分たちの力を認めて欲しい」でした。
<5班>
北朝鮮が日本に向けてミサイルを撃ってきた。これは、グアム、つまり、アメリカにも圧力をかけている状態。日本やアメリカを含む他の国は、怒っているが、なるべく戦争をしたくないので、北朝鮮への天然ガス輸出をやめたり、非難をしたりしている。
戦争を避けるために、まずは北朝鮮と話し合いをする。キムさんにお金をあげたり、天然ガスの輸出再開の話をするなど、もので釣る。
それがダメなら、北朝鮮が日本を威嚇している理由は米軍基地があるからなので、アメリカに一時的に立ち退いてもらって、最近EUを離脱して太平洋の国と仲がいいイギリスに守ってもらう。
それでもダメだったら、武力でミサイル阻止。PAC3やSM3などの迎撃ミサイルについて詳しく紹介してくれました。
北朝鮮の土地を奪ったり北朝鮮をつぶしたりしない、という点が工夫ポイントです。
最後に、発表を聞いた志茂さんから
各班への講評とみんなへのメッセージをいただきました。
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【講評】
<1班>
「暗殺作戦」というのは実際にアメリカや韓国にあるそうです。
<2班>
「逃げる」「守る」とそして「壁」いう発想は「教室のけんか」の時にあった「下敷きで壁をつくる」というのを思い出させますね。実際にアラスカにその壁にあたるもの(ミサイルで防ぐ)を作っているそうです。
<3班>
お金をあげて、その後きちんとやっているか調べるシステムはイランの核ミサイルの時にもありました。ただ、北朝鮮がお金を受け取るかが問題ですね。
<4班>
アメとムチの方法があるとき、どちらか一方というより両方使うこともあるのです。
<5班>
基地からアメリカの軍隊が出撃できるから日本を守っているという発想もある。あるからダメ、あるからOKという問題ではないところが難しいですね。壁は何重にもあるのがいいですね。またイギリスに守ってもらうというのもユニークです。
【メッセージ】
みなさん、素晴らしいですね。全部の班が違った方法を提案してくれました。
みなさんが気付いていたように、今の北朝鮮は「アメリカに振り向いてほしい」「このままでは北朝鮮という国がなくなってしまう」という考えを持っているように見えます。
でも本当の心はなかなかわかりません。ここが難しいところです。
だからこそ、話し合いを続けることが大切なのです。
100年近く前からずっと、国際社会では、戦争を避けるために、国連や軍縮、国際協力などの形でコミュニケーションを増やす努力を続けています。
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志茂さん、ありがとうございました!
◆今回のセントラルアイディア◆
「戦争を避けるにはコミュニケーションが不可欠である」
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