~自分だけの物語をつくろう~人工知能研究者松田雄馬さんインタビュー

 

来週よりSTEM(科学・技術)をテーマとするポラリスこどもキャリアスクール4期がスタートします。 第一回目となる「人工知能って何ができるの?これからの社会はどうなる?」のナビゲーターとなっていただく、人工知能研究者松田雄馬さんにインタビューしました。

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東北大で行っていた人工知能における視覚情報処理の研究はまだまだ発展途上です。「『ものを見る』とはどういうことか?」を知ることは、「脳とは何なのか?」ひいては「我々人間とは何なのか?」という問いとも切り分けられない、過去の偉人が挑戦し続けてきた問いであり、ゴールはありません。ですが、少しでも「『ものを見る』とはどういうことか?」についての研究が進み、機械が、少しずつでも「ものを見ること」すなわち、「この世界を理解すること」ができるようになれば、我々の生活はガラリと変わるはずです。そうした観点から、自分は、研究することを通して、(自分を含む)世界の誰かの生活が、少しでも面白くなればと思っています。

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素敵なインタビューとなりましたので、是非ご覧ください!

 

<松田さんのプロフィール>

1982年9月3日生まれ(どらえもんと同じ誕生日) 2005年京都大学工学部卒業後、同大学大学院情報学研究科にて、数理工学を専攻し、生物の脳を数学的に解明する「ニューラルネットワーク」の研究に着手。大学院卒業後は、日本電気株式会社にて数学理論を携帯電話の電波解析に応用するプロジェクトへの参画、中央研究所での脳の視覚情報処理の研究を経て、独立。現在、生物の脳の機能を実現する人工知能の研究を行いながら、それをビジネスに応用する企業の設立準備を行っている。2015年情報処理学会DICOMOにて最優秀プレゼンテーション賞/優秀論文賞を受賞。同年東北大学大学院工学研究科にて博士号(工学)を取得。「知能とは何か?」という課題と日々格闘中。

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こたえのない学校: 現在のお仕事、そのお仕事をするようになった経緯について教えてください。

松田さん(以下敬称略):生物の脳の機能を実現する人工知能の研究をしています。また研究に関連する技術を使って新しいシステムを生み出す会社を設立する準備を行っています。

もともと大学(学部)では、地球工学を専攻し、水の循環を数理モデルを使って解析することをしていたのですが、そのうちに数学そのものに興味を持つようになりました。大学院で数理工学を専攻し、生物の脳を数学的に解明する「ニューラルネットワーク」の研究をはじめました。

その後、日本電気株式会社(NEC)に入社し、人間のコミュニケーションを考える研究所に入り、無線通信のシミュレーターを使ったコミュニケーション、数理モデルを携帯電話の電波解析に応用するプロジェクトに携わりました。その後、会社の中で、脳の動作原理、生命とは何かということも含めた、より上位概念としての人工知能を、東北大と一緒に研究する共同研究プロジェクトの立ち上げメンバーとして参画し、人工知能における視覚情報処理の研究をしてきました。

 

こたえのない学校: 仕事で大事にしていること、大事にしてきたことを教えてください。

松田: 研究というものは、大雑把に言って1)イントロダクション 2)中身 3)ディスカッションという3つの構成要素でできているのですが、その中でも一番重要なのが、1)のイントロダクションの部分です。実は研究で一番大事なのは、歴史です。「自分は何をしたいのか、しているのか」と研究における歴史を振り返って、自分のやっていることが、どの文脈の上でどのように歴史的に位置づけられるかがきちんと自分自身で把握できていなければなりません。

もちろん、情報科学の分野というのは流行りもありますし、それに乗ってしまえば、歴史や文脈についてあまり考えなくても研究はできます。手法もある程度決まっています。そのようなやり方も勿論あるのですが、僕はあくまで「自分」を主軸において、自分独自の世界観を持ち、自分が主人公でありながら、科学の歴史をたどり、歴史を作っていく、そんな人生を歩みたいと思っています。決して楽な道ではないのですけれども。

 

こたえのない学校: 仕事で嬉しいと思うときはどんな時ですか?

松田: 研究者にもいろいろなタイプがあると思いますが、僕は自分のアイデアや想いが、形になり、実際に「サービス」として多くの人に利用してもらえると嬉しいです。「自分の研究が、世の中にとって何故必要なのか?」「自分の研究を通してどのような世界を実現したいのか?」を常に考えながら、新しい研究を行っています。もちろん私のやっている研究は、明日役に立つようなものではないかもしれません。ですが、自分の研究によって、(自分を含む)世界の誰かの生活(ライフスタイル)が少しでも変革できればと思っています。研究を行うことは、新しい世界観を創っていくこと、すなわち「物語」を作ることだと思っています。

 

こたえのない学校: 仕事で辛かったことはありますか?

松田: 「生みの苦しみ」と言われますが、アイデアが全く出ないことはよくあります。それから、考え抜いたアイデアが、既に他の人が技術として実現していて、寧ろ、自分のアイデアの何倍も良いものだったりすると、軽くヘコみます。本来は、そうした既に実現されている技術を如何に利用して、さらに新しい世界を創っていくかを考えれば良いので、ヘコむ必要は何もないのですが。

 

こたえのない学校: これからお仕事でチャレンジしたいことはどんなことですか?

松田: 東北大で行っていた人工知能における視覚情報処理の研究はまだまだ発展途上です。「『ものを見る』とはどういうことか?」を知ることは、「脳とは何なのか?」ひいては「我々人間とは何なのか?」という問いとも切り分けられない、過去の偉人が挑戦し続けてきた問いであり、ゴールはありません。ですが、少しでも「『ものを見る』とはどういうことか?」についての研究が進み、機械が、少しずつでも「ものを見ること」すなわち、「この世界を理解すること」ができるようになれば、我々の生活はガラリと変わるはずです。そうした観点から、自分は、研究することを通して、(自分を含む)世界の誰かの生活が、少しでも面白くなればと思っています。

また、これまでになかった組合せを試してみたいですね。例えば、これまでご縁のなかった国の方々に自分の技術を使ってもらう、とか。今年の春にラオスを含めた東南アジア諸国を回ってきました。NEC勤務時代に香港の企業にある技術提案を行ったのですが、初めは全く興味を持ってくれなかったのが、ある技術ポイントが先方のニーズにピタリとはまり、先方の目の色が変わったという経験をしました。その技術が、先方が困っていた問題を解決するものだと明確に理解された瞬間です。こうしたことこそが価値を生み出していくのだと思っています。

 

こたえのない学校: 小さい頃どんなお子さんでしたか。

松田: 「古生物学者になるのが夢!」といいながら、手書きの恐竜図鑑を作ったり、化石を掘ろうとしてみたり。ドラえもんを見て、出てくる道具を真似て、画用紙で工作してみたり。児童会や生徒会もやっていたのですが、大阪の学校だったからか、如何にみんなを笑わせるかを頑張って研究したりもしていました。先生に「吉本に行け!」と言われて喜んでいたのを覚えています。子供の頃に楽しんだのは、ドラえもん、恐竜、レゴブロック、ボウリング、などなどですね。こうして遊んだことは全部今に繋がっている気がします。

 

こたえのない学校: 今の小学校の子どもたちへのメッセージ、お願いします。

松田: 自分自身の「物語」を作ってほしいと思います。これは、研究開発だけでなく、どのような職種にも必要だと思います。そのためには、世界のことをもっとよく知ると共に、自分自身がどんなものにワクワクするかを、様々な経験を通して知ることが重要だと思います。

皆さんの時代は凄く恵まれていて、少しの知識があれば、いつでもどこでも誰とでも、新しいことを始められる時代です。まさに、自分で作った「物語」を、自分の力で実現できる時代だと思います。

とは言え、世界にはさまざまな問題があります。「高齢化社会」と言われ、地方には若い人がいなくなってしまっていたり、国際競争が激しくなって、心が病んでしまう人も増えています。そうした、便利な世の中だからこそ、直面している問題も多いのです。

皆さんと一緒に、そうした問題を解決しながら、新しい世界を創っていきたいと思っています。これからも一緒に頑張りましょう!

こたえのない学校: ありがとうございました!

 

<こたえのない学校とは?>

新しい価値を創造する力をグループワークの中で子どもたちが自ら身につけていく、「探究する学び」のフレームワークを使ったプログラムの開発・実施を行っています。今回松田先生にご登壇いただくのは、小学生対象次世代型キャリア教育プログラムとなる「ポラリスキャリアスクール」です。

 

こたえのない学校HP

https://kotaenonai.org/

ポラリスこどもキャリアスクール4期「STEM(科学・技術)」

https://kotaenonai.org/polaris4-stem-kokuchi-0905/

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