【2018年下期】発明×探究:ポラリスこどもキャリアスクール8期開催報告

昨年11月16日から12月16日と今年の1月20日までの3回にわたって、ポラリスこどもキャリアスクール8期のプログラムを実施しました。

テーマは「発明」。

今回のポラリスナビゲーターは、弁理士の播磨里江子さんです。 (播磨さんのインタビューはこちらから)

播磨さんの伝えたいメッセージ「『発明』はそれぞれの『工夫』でまだ存在しない『はじめて』を創り出すことである」をセントラルアイディアとして、“発明”について探究していきました。

3回を通して、発明のタネをたくさん探すところからスタートし、発明につながりそうなものを選んで、特許になるような発明に育てあげるプロセスを体感しました。

第1回から順番にその様子をご紹介します。

第1回~発明のタネを探そう~

2018年の11月18日に行われた第1回。最初はドキドキわくわく入り混じる子どもたち。ゲームで仲を深めるところからスタートです。

いくつかゲームをしたところで今回一緒に取り組むチームも決定。いよいよ発明って何かを考えていきます。

発明ってなに?
考えるためには経験が大切です。考えるための活動は2つ。一つはペーパータワー。もう一つは、実際の発明を見て、発明者の想いを想像することです。

ペーパータワーは、紙50枚とテープを使ってなるべく高いタワーをつくります。ただ高ければよいわけではなく、最後にカップラーメンを乗せられなければいけません!

5分間グループで作戦を立てて、5分で作り上げます。思った通りに行く場合もあれば、想像してたのと全然違うことも。話し合いの進め方によっても影響がでたようです。結果、接戦。終わった後も、もっとこうしたらいいんじゃ・・・と考え続ける姿も見られました。

もう一つは発明者の意図を探るというワーク。今回の題材は「フリクション」「カップラーメン」「ハリナックス」。それぞれ特徴的な発明ですが、みなさんは誰のためにどんな工夫がされたものかわかりますか??

発明のヒント
二つの活動を通して播磨さんが伝えたかったことは、なんでしょうか。

それは・・・

発明は、それぞれの「工夫(くふう)」で

まだない「初めて(はじめて)」をつくり出すことである

ということ。

では、いままで聞いたこともない全く新しいものだけが発明なのでしょうか?
発明には2つあります。

① 新しいものをつくる
② つくられたものを活用したり、組み合わせたりして、新しい価値を生み出す

ペーパータワーは紙とテープを組み合わせただけですが、それは全く新しい価値を持ったものになっています。これも発明の一つの形なのです。

では、どんなことが工夫をするきっかけになるのでしょうか?播磨さんは以下の2つを挙げます。

みんなの経験=自分の経験を「くふう」で変えたい
みんなの想い=誰かのために「くふう」でお手伝いしたい

発明のタネは経験や想い。これがきかっけになって今ある素晴らしい発明もあるのです。発明を考えるヒントは、「生活の中の不便を感じてみる」こと。そして、「何とかならないかなと考えてみる」ことなのです。

東日本大震災の時、被災した方々は体育館などの避難所でプライベートのない生活を長期間送っていました。そこで、有名な建築家の坂茂さんはどうしたでしょう。坂さんは、我慢するのではなく、「何とかならないだろうか」と考えてみました。

間仕切り設置完了風景(大槌高校大体育館)© Voluntary Architects Network / 

避難所用簡易間仕切システム4 ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク ( VAN) van@shigerubanarchitects.com

発明のタネを探してみよう!
発明のコツを体感したところで、最後のワークです。発明のタネとなる、生活の不便を探してみましょう。身近な困ったことあるあるやこんなことできたらいいのになどの想いを、自分の日常を振り返ったり見学にいらしてる家族の人、そして会場のあるIID世田谷ものづくり学校の中を探検したりして発掘しました。各チームみつけた発明のタネがたくさんのポストイットに書かれました。どんなアイディアが出たか、写真でぜひご覧ください!

第2回~発明のタネを育てよう!~

第2回は2018年12月16日に開催されました。1か月空いているので、まずはチームごとに前回みつけた発明のタネを振り返るところから。久しぶりの再会でも、ちょっと話をするとたちまちリラックスした雰囲気に!この日のために家でも発明のタネを探してきたメンバーも。幸先のよいスタートです。

さて、第2回でやるのは発明のタネから実際に発明につながりそうなものを選び出すこと。そして、その発明を育ててみることです。
でも、発明につながりそうかどうかってどうやってわかるのでしょうか??

「特許」につながる発明の条件とは!?
ここで播磨さんよりお話し。小学生が特許を取った話は知っていますか?
例えば、一つは、自分が犬の散歩に行って困った経験から紙でできたスコップを発明した事例。

あるいは、自分のおじいさんがお店を経営していて、自動販売機の缶を分別するのに苦労しているのを見て、アルミ缶とスチール缶を分別する箱を発明した

他にもいくつかご紹介いただきました。みなさんも探してみてください!

この「特許」というものは、発明へのご褒美とのこと。発明を自分のものにできたり、他の人が使う許可をだしたりできるとのこと。なんだかすごそうな「特許」だけど、それってどうやったらとれるの??

そこで播磨さんが教えてくれたのが3つの条件。

これを基に、発明のタネから発明に育ちそうなものを選んでみましょう!!

発明のタネを育てよう!!
播磨さんの教えてくれた条件で各チームたくさんあったタネから、話し合いを重ねて絞りました。それぞれの思い入れもあるタネから一つに決めるのは大変!それでも3つの条件に照らして、各チーム1つか2つに絞りました。

たくさんのタネからの選りすぐり、今度は大事に育てましょう。ここまできてようやく、より具体的な発明のアイディアを考えていきます。

それぞれのチームで「とっきょしようしょ」を作成するところまで頑張ります。最後は資料を使ってプレゼンテーション!みなさんは「とっきょしようしょ」からどんな発明か想像できますか??

第3回~発明をよりよく伸ばしていこう!~

最終回となる第3回はさらに1か月後の1月20日に開催。
その間、各チームが2回目に中間発表した発明に関連する既存特許を播磨さんが調べて特許性をチェックしてくれました。

そう、播磨さんの仕事、弁理士とは特許をとるためにどうしたらいいかアドバイスしてくれる仕事なのです。第3回を迎えて、播磨さんの仕事がどんなことかやっとわかってきた子どもたち。

しかも、今回はその仕事をAIが手伝ってくれたようです。その名も「IP Samurai」。播磨さんの所属する弁理士事務所が開発した、特許性と関連特許を検索してくれる人工知能です!なんと、これがあることで、1か月ぐらいかかる仕事もほんの数十秒でできてしまう。AIすごい!

無料版はどなたでも使えるそうです。ぜひご覧ください。

IP Samurai (https://ipsamurai.jp/

・・・という話も加わりながら、子どもたちは自分たちの発明についてフィードバックをうけます。判定はA~D。今回はCだった発明もあれば、Aが飛び出すことも!播磨さんはCが出てしまったらやる気をなくしてしまうんじゃないかと心配されていました。

発明に磨きをかけよう!!
ちょっとドキドキの播磨さんからアドバイス。C判定でも特許をとれた人はいるからあきらめないで!

このアドバイスを受けて、判定がCだったチームも発明意欲を最後まで燃やし、それぞれのアイディアをブラッシュアップしました。

最終発表、そして証書授与
最後の発表ではそれぞれのブラッシュアップしたポイントを紹介。聞いている子ども達からも質問が飛び交い、白熱するプレゼンテーションとなりました。中には発明の内容だけでなく、プレゼンテーションの仕方にまで言及する人も。3回を通して、いろいろな視点で学び合う姿勢が身についたようでした。

最後は播磨さんから証書の授与がありました。みんな緊張した面持ちで前に出て、一人ひとり手渡しで証書を受け取りました。

(お顔出しOKのお子様のみの集合写真です)

中には、この後、実際の特許出願書類を作成するこども発明プロジェクト(https://ci-projects.jimdo.com/)にチャレンジする人も(※)。今後の挑戦がどうなるかも楽しみです。

※特許出願にチャレンジする可能性のある発明に関しては、公開すると新規性を失うとのことで、アイディア創出からの途中プロセス含めて詳細は伏せさせていただいております。

播磨さん、ありがとうございました!