11月8日。ポラリスこどもビジネススクール2期、第2回のプログラムを実施しました。
第2回のテーマは「発明」。
今回のポラリスナビゲーターは、日本大学生産工学部で、非常勤講師をされ、大学及び小学校において知的財産教育の啓蒙に尽力されている弁理士の橋場満枝さんです。 (橋場さんのインタビューはこちらから)
橋場さんの伝えたいメッセージ「不便を感じる気持ちを大事にすることが新しいアイデアを生み出す」をセントラルアイディアとして、“発明”について探究していきました。
発明ってなに? 発明はどうして生まれるの?
まず、参加してくれたみんなが「発明」についてどんなイメージや考えを持っているかを教えてもらいました。
「今までになかったもの」
「今まであるものを進化させる。」
「もっと便利にするもの」
「不便を便利に変えること?」
じゃあ 例えば どんなものが具体的に発明なんだろう? さらに聞いていきます。
「車。エンジン」
「火から電気に変わったところ」
「蜂蜜の瓶からスクイーズボトルになったところ」
「iPhone。 ボタンではなくて、画面上でタッチで動かすことができるようになった」
「指紋が暗証番号」
「PCが小さくなって進化してる」
「でもさ、TVは大きくなっているよ。」
「ということは、(それぞれのものは)一番使い易い大きさなっているという事だよ!」
「消しゴムからペン型の消しゴム」
「3D・4Dの映画もそうかな。」
沢山 出てきます。さて、これらの発明の共通点や役割(機能)、生み出される時の秘訣はなんでしょう? 探究への旅がはじまります!
ペーパータワーをつくろう!
さて、ここで、グループワークをします。お題は、できるだけ丈夫で(ティッシュボックスが乗るくらい)高くペーパータワーを作ること。
まずは グループで作戦を立てるのに5分、作るのに5分。
「高く」「丈夫」が最も達成できたのは 1班。この短い間に見事に2段の丈夫なタワーを作ることができました。工夫のポイントは、4本の紙の筒をテープで止めて、それを重ねること。ほかの班も出来たところ、うまくいかなかった点を振り返っていきました。
ここでやったことが一体なぜ、発明に関係するのか? これから橋場さんからお話があります。
弁理士 橋場さんのお話
橋場さんは弁理士さんですが、弁理士さんというのは、どんな仕事をする人なのでしょう。
「発明を守る人」なんですね。
ここで橋場さんから質問「発明を守るって?」
「マネされないようするってことだよね。」「コピーライトって言葉があるよ。」
そうなんです。特許があれば「マネしないで」とちゃんと言えるわけです。さっき色々発明についてみんなから意見が出ていたように 発明って何か新しいものを考えてそれを作り、生活の不便を解決することなのです。弁理士さんは発明した人の権利を守る仕事をしているのです。特許庁や実際の特許証の写真もみて子どもたちにも弁理士さんのお仕事が少し具体的に分かった様子。
そして、ある一つの発明を見ていきます。
ここで震災時の体育館の写真を見ましょう。なんだか、雑然としていますね。
これを見て何を感じる?「不安?」
そうですよね。着替えたりするのだって隣の人の視線を気にするよね。ゆっくりできないしし。そんな時 2つの選択があります。
- しょうがないから我慢する。
- 何とかならないか考える。
あなたは、しょうがないから我慢しますか?それとも「何とかならないか考えてみますか?」
そこで、有名な建築家の坂茂さんはどうしたでしょう。坂さんは、我慢するのではなく、「何とかならないだろうか」と考えてみました。
そして考えたのがこれです。
間仕切り設置完了風景(大槌高校大体育館)© Voluntary Architects Network / 避難所用簡易間仕切システム4 ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク ( VAN) van@shigerubanarchitects.com
さっきと雑然としていた同じ体育館にきちんと区切りができていて、整然としている。すごいですね。ここにいた人たちもプライバシーが守られ、だいぶ生活がしやすくなりました。ここにも発明があり、特許が発生しているのです。
そうです。発明をするコツは
「生活の不便を感じてみる」→「何とかならないかなと考えてみる」なのです。
さっき、ぺーパータワーを作りましたが、これは、ただの紙でも工夫をすれば、とっても丈夫なものを作れるということを伝えたかったからです。これこそが「発明」の「なんとかならないか」の重要なプロセスとなります。
身近な生活の不便から発明を考える
エジソンのような偉大な発明、そして坂さんの体育館の仕切りの発明に共通する点はなんでしょう? 意外や意外、どちらも身近な不便を解消することから発想を得ています。
身近で特許を取っている発明には、超立体マスク、ハリナックスという針を使わないホチキス、好きな文字を入れたスタンプをつくれるXスタンプ、片手が使えない時に片方の手だけで、シャンプーを適量手に載せることができるカタシャンボトルなどがあり、それらを実際に手に取って、「何が不便なの?」「どうやってその不便を解消したの?」と話し合っていきました。
また、最近小学生が特許を取った話は知っていますか?
自分のおじいさんがお店を経営していて、自動販売機の缶を分別するのに苦労しているのを見て、アルミ缶とスチール缶を分別する箱を発明しました。
<写真出所:東京新聞>
実際の特許の出願書類の図面や先行技術の図面を皆 真剣に聞き入っています。
橋場さんは、こんな難しい書類を出してみんな興味を持ってくれるかなと少し心配されたようですが、皆が真剣に聞き入っている姿に却って感心されたようですね。
特許公報 特許第5792881号
身近な生活の不便から発明を考えてみよう!
さて、ここからが本番です。みんなに生活の不便の「あるある」を考えてもらい、そこから発明をしてもらいます。
生活のあるあるとは・・・
「自転車をもって電車に乗れたら!」
「お風呂が沸いたときに中の水はまだ冷たいよ」
「ファスナーに布が、はさまって開かなくなってしまうのが嫌だな」
「ペットボトルを開けるのは、結構力がいるよね。」
などなど。
こんな便利な世の中だけれども、じつは、色々不便が転がっています。「それ、あるある!」と盛り上がりました。
今回は、少し難しいかもしれないけど、実際の特許出願みたいに仕様書も書いてプレゼンにチャレンジします。
仕様書に必要なのは
「発明の名前」
「解決した不便」
「解決方法(工夫したところ)」
「図面」
です。
それぞれのグループで一つの発明の発表をしますが、沢山ある不便を一つに絞り切れない、実際の不便を解決する方法がなかなか具体的に表せない、実際にみんなでペットボトルの蓋を何度も触ってみて、どうしたらよいか考える・・・。それぞれ、頑張って、プレゼンの用意に取り組みました。
発明の発表!
そして、いよいよ発表です!各班の発明は以下の通りとなりました!
◆1班 自転車ラクラクEXPRESS
実際に自転車があっても泊まれるホテルがあるから電車でもできるのはないかという発想から生まれました。自転車を駅の自転車置き場に置くときに行き先を登録すると電車の後ろにくっついたローラーで上に運ばれて、行き先で自転車を受け取れるというアイディアです。自転車は、自転車置き場で車輪を止める装置使って固定します。
◆2班 (秘密・・)
物干しに関する発明を提案しました。
⇒2018年1月にチームの発明の特許出願が公開されました。
◆3班 温かくなる自動プロペラ
お風呂って、お湯の熱いところとぬるいところがまじっちゃうよね、という不便から発明を考えました。
お風呂の温度を一定にするためにお風呂につけるプロペラをつけてみました。
◆4班 ペットボトルオープナー
おじいちゃんおばあちゃんでも力の弱い人がペットボトルを開けるとき大変だね、というところから発明をしてみました。
→手を触れず簡単に開けることができるように工夫しています。
本体はアルミを使って軽く、滑らないように滑り止めの素材も付けます。
橋場さんからそれぞれの発明について講評をしてもらいました。いろんな「あるある」があってその体験を分かち合っていること、図面が具体的なところ、中には実用化を目指せるものもあって、これからも積極的に発明に取り組んでほしい、と熱いメッセージをいただきました。
さて・・、発明とは? セントラルアイディアに戻ってみましょう。「不便を感じる気持ちを大事にすることが新しいアイデアを生み出す」です。 アイディアはどこかから飛んでくるものではなく、不便を感じる気持ちから生まれます。その気持ちを大事にして“なんとかならないか”と工夫を重ねることでヒラメキが出てきます。
みなさんも、身近なところから発明を考えてみませんか?
なお、本気で発明を考え、特許申請まで頑張ってみたいお友達については、このような場を使うこともできます! 是非みんなもチャレンジしてみましょう!
2017年に公開された、本プログラム初の特許出願はこちらから見れます。
こども発明プロジェクト
http://yamazaki-ip.com/cips/index.html
ありがとうございました。
<プログラムレシピ>
セントラルアイディア
「不便を感じる気持ちを大事にすることが新しいアイデアを生み出す」
Lines of Inquiry
・発明の生まれる仕組み (function)
・何とかならないかという気持ちの大切さ (perspective)
・身近な生活の不便から発明を考える (connection)