「五感を通して感じることが発明の源泉」~弁理士橋場満枝さんインタビュー~

 

10月18日に、ポラリスこどもビジネススクール2期がスタートします。 その中で登壇いただくナビゲーターたちの素顔を少しずつ紹介させて頂いています。

今回は、第2回のプログラム「きみもエジソン!震災の避難所で生まれた発明とは!?」のナビゲーターとなっていただく、橋場満枝さんです。

大学や小学校でも、知的財産について教えていらっしゃる橋場さん。「発明は、不便を感じる気持ちを大切にして、それを五感で感じることがとても大切」とおっしゃります。ポラリスこどもビジネススクールの講義も、「不便を五感で感じ」そしてそれを発明に繋げるというプログラムを考えて下さっています。

素敵なインタビューとなりましたので、是非ご覧ください!

 

<橋場満枝さん 経歴>

講師: 日本大学生産工学部 非常勤講師 日本弁理士会 知財教育委員 弁理士

慶應義塾大学人間工学の研究室で「ヴァイオリン演奏動作の3次元運動計測」について研究後、電気メーカーで「’85つくば万博ロボット」のシステム設計を担当。その後、弁理士に転向。特許事務所経営を経て、現在は、主に、大学及び小学校において知的財産教育の啓蒙にあたる。大学では、「ハンディキャップのある人のための発明」というテーマでパテントコンテストにチャレンジさせ、複数の入賞実績を持つ。

 

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こたえのない学校: 現在のお仕事について教えてください。

橋場さん(以下敬称略): 大学や小学校で、知的財産について教えています。知的財産とは、発明や著作権など、人がアタマの中で考えたアイディアのことを言います。

発明者の頭の中にあるアイディアをうまく引き出すことを仕事としています。

 

こたえのない学校: 仕事で大事にしていること、大事にしてきたことを教えてください。

橋場: 長年、特許事務所で、弁理士として発明者が考えたアイディアを、特許として権利にするためのお手伝いをしてきました。

弁理士としては、発明者のアタマの中にあるアイディアを、どうすればうまく引き出せるか、そして権利としてきちんと守れるような文章にできるかということをずっと大事にしてきました。

その経験を踏まえ、今の大学や小学校で教える仕事では、一人一人のアイディアがとても価値のあるものであることを分かりやすく伝えたい、と思っています。

 

こたえのない学校: 仕事の楽しさはどのようなところにあると思いますか?

橋場:発明者の頭の中にあるアイディアをうまく引き出すことができて、強い権利となって、発明者に喜んでもらえたときはとても嬉しいですね。

例えば、ご自分のお母様が膝痛のために膝を曲げてのトイレの使用が難しい、という不便さを解消するために、女性用の立位用の便器を考えた方がいらっしゃいました。

膝が痛くて曲げられないということを、自分自身に置き換えて感じることで、より発明の本質を理解することができて、発明者の意図することを特許出願としてきちんと書類にまとめて権利化することができました。大手トイレメーカーともライセンス契約されて実用化することができて、喜んで頂けたのが嬉しかったです。

また、大学や小学校では、発明工作授業で、例えば、「ストローを使ってペットボトルを乗せられるような橋を作ってみよう」という課題を出したりするのですが、子供達が自分だけの独自のアイディアをアレコレ考えながら、色々な形や構造のものを楽しそうに作っている姿を見るのが好きです。

 

こたえのない学校:これからお仕事でチャレンジしたいことはどんなことですか?

橋場:今は、「教育」に面白さを感じているので、「こたえのない学校」がベースとしている探究型の授業を大学や小学校でも取り入れてみたいなと思っています。

また、大学では学生に「ハンディキャップをもった人のための発明」を課題として発明を考えてもらっていますが、もう少し広い視点で、ハンディキャップがある人だけでなく皆が使い易い、「ユニバーサルデザイン」という視点から考えてみたいと思っています。

例えば、私の年齢になると、小さいものが見難くなったり、高い音が聞き取り難くなったりというようなことがあるんですね。例えば、駅を例に取ると、誰にとっても見易い駅の路線図や乗り換え表示だったり、聞き取り易い乗り換えアナウンスだったりすれば、子供からお年寄りまで分かり易く使い易いものとなります。

小さなハンディキャップであっても工夫することによって、多くの人が使い易いものが変わっていくと思います。

 

こたえのない学校:これからの将来、どんな力が必要になってきて、どのように準備をすべきだと考えますか?

橋場:これは、すごく難しい質問だと思います。

私は、最近、「アタマ」だけでなく「カラダ」の感覚、五感を大事にすることで本当のものが見えてくるのではないかと思うようになりました。

発明でも、単に「アタマ」でイメージして考えるだけだと本当に不便なのかがわかりづらい。実際に体験してみて、五感を通して感じるということが、新しい生み出す力になるのではないかと思います。

例えば、美的なアイディアの発明をされた石材屋さんの例ですが、石などの板を立てて、その表面に横方向に細い溝を入れることで、上から水を流すことによって、美しいさざ波模様ができるという発明を考えられました。

このアイディアも単にアタマだけで考えてしまうと、石に溝を作って、上から水を流しただけのものとなってしまいます。でも、実際の発明品を見ると、細かい溝の配置が工夫されていて、上から水を流すと、さざ波がその時々に変化して見えて、美しさを感じられるものでした。

新しいアイディアを見たときに、美しいと感じられる感性というものが大事だと思いました。特許出願としてまとめるときも、この美しさを権利化してあげたいと気持ちをこめて仕事をさせて頂きました。このように、もちろん、「アタマ」は使いますが、「カラダ」の感覚を使って理解することが大事だと思います。

 

こたえのない学校:小さい頃どんなお子さんでしたか。

橋場:内気なおとなしい子供でした。一人で色々考えたり、周りを観察しているようなタイプでしたね。

子供の頃は、刺繍や編み物などの手芸や、身近な材料を使って、収納するためのものを作ったり、高校生位になると、自分の興味のある分野、旅行だったり、新しい文房具、女性の生き方などの情報を分類整理してスクラップブックを作ったり、新しいアイディアを考えるのが好きでした。

 

こたえのない学校:どうして弁理士になろうと思ったのですか?

橋場:大学では機械工学科でしたが、人間に関係することを勉強したかったので、人間工学の研究室に入りました。クラブでヴァイオリンを弾いていたので、ヴァイオリンを弾くときの動きを測定することを研究していました。

最初、電気メーカーの就職し、システムエンジニアとして、85’つくば科学万博のロボットシステムの仕事を担当しました。3台の腕のような形の産業用ロボットに、ダンスをさせたり、紙飛行機を組み立てさせたり、ボールにサインさせたりという動きをするようなプログラミング設計をしました。

弁理士になろうと思ったのは、システムエンジニアの仕事も楽しかったのですが、結婚後も長くできる仕事が良いのではと思ったからです。理系の知識を活かせて、文章を書く仕事もして見たかったことから弁理士試験に挑戦してみようと思ったのがきっかけです。

 

こたえのない学校:今の小学校の子どもたちへのメッセージ、お願いします。

橋場:自分が好きなことが自分の支えとなってくれると思うので、迷ったときには、「自分は何が好きなんだろう」ということを思い出して、ずっと大事にしてほしいと思います。

 

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橋場さんが第二回の講師をつとめられるポラリスこどもビジネススクール

「探究する学び」×「キャリア教育」のプログラム 小学3・4・5・6年生向け

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https://kotaenonai.org/news/event/527/

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関連ブログ

ポラリスこどもビジネススクール第一回講師の千星健夫さんのインタビュー

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