home > Blog > 藤原 さと > 子供の幸福度No.1 オランダの教育から学ぶことは何?

こんにちは。藤原さとです。

6月初めから一時帰国中ですが、東京では目移りするほどいろいろなシンポジウムや、教育関連のイベントがあり、その中で、先日オランダの教育についてのレクチャー※がありました。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、オランダは子供の幸福度世界が先進29か国中1位。私の頭の整理も含め、みなさんと共有できたらと思います。

 

<ハピネス大国オランダ>

最近テレビや雑誌などでチラホラとみかけるようになったオランダの教育。

まず何をもって、子供の幸福度No.1かということですが、UNICEFにおける“Child Well-being in Rich Countries”で、「物質的豊かさ」「健康と安全」「教育的豊かさ」「行動とリスク」「家と環境」という5つの側面と子供自身の声(親や友人との関係、生活への満足度)から調査した結果として、オランダは調査対象の先進29か国の中で、総合1位※※になったとのこと。

更に、2005-6年のWHOによる13歳の子供の健康行動国際比較によると、41地域中、生活に満足している子供の項目で1位、学校が好きだと答えた率で4位、父親になんでも相談する率で1位という結果が出る一方で、OECDの学力到達度調査(2006)でも数学的リテラシーで日本を上回り、科学的リテラシーでもほぼ互角の結果となるなど、非常に良好な結果を出しています。

子供はハッピー、しかも成績も良い、となればどんな教育がされているか、気になるところですね。

 

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<オランダの教育の自由は、筋金入り!?>

私、実はオランダの教育についてはほとんど知らず、なにか特別なスゴイ教育法をオランダの子供が均質に受けていることで、子供たちの学力と幸せが担保されているのかと思っていました。

しかし、現実は寧ろ逆でした。オランダでは、市民社会に立脚した「教育の自由」が本当の意味で保証されており、その結果、学校ごとに個性あふれた多様な教育が実現しており、それこそがオランダの子供たちに多大なプラスの影響をもたらしているという理解のほうが正しいようです。

オランダでは1917年に、憲法の23条が改正されたことによって、学校の「設立の自由」「理念の自由」「方法の自由」が保障されました。日本で言う公立学校も私立学校も認可外のフリースクール(オルタナティブスクール)も全く同じように扱われ、200名の生徒を集めるなど一定の条件をクリアすれば、市民も自由に学校を設立することができるのです。そして、学校の校舎を建てる費用、教員の給与、生徒一人当たりの補助費用を全くの同条件で受けられ、国は、宗教や教材選択や学級編制などを含む教育方法について基本口出しをしません。時間割も自由、国語・算数・理科・社会のような分け方でなくて、自由に教科を組んでよいのです。

このような制度の中で、オランダの初等教育では、約4分の3は私立学校※※※、10%がオルタナティブスクールと言われる一般的な学校とは違った教育法を採用する教育機関という構成となっており、実に多様な教育がなされています。また、親も子の教育を選択する自由があるため、学区制ではなく、親が子供に良いと思った教育、もしくは自分が受けたい教育を受けられるのです。

 

<幸福度に教育がどれだけ貢献するの?>

ところで、オランダの教育というと、子供たちの個性を認め、対話や協業によって社会を深く考えさせるイエナプラン教育※※※※が非常に先進的で素晴らしい教育法としてフォーカスされ、テレビでも紹介されています。

このイエナプラン、教育を実施する学校はオランダの3%にすぎないのですが、他の教育法も含めて「公教育」となっていることで、横の情報共有が出来、その内容が認められオランダの新初等教育法で、手法の一部が参考にされ、盛り込まれているとのこと。こうして、良いものはシェアされ、広まっていく仕組みができているのでしょうか。

いずれにしても、子供の幸福度には、こうした「教育の自由」があり、健全な競争を潜り抜けてきた良質な教育を自分のスタイルに合わせて受けられるほか、そもそも社会として同一労働・同一待遇を実現するワークシェアリングが進んでいることから、両親を含めた家族や周りの人とゆったりとより良い人間関係を構築できることなどがプラスの結果を導いているのだと感じました。

 

おらんだ

 

<真の市民社会を目指して>

オランダという国は、国土は九州くらい、人口は東京に横浜市の人口を足したくらいの人数の国です。オランダ東インド会社に見られるように港があり商業が栄えた地域である一方で、歴史的にはローマ帝国時代から統治の体制が何度も変わり、1830年からネーデルランド王国として、現在の形になっています。小国にもかかわらず、ロイヤルダッチシェル、フィリップス、ユニリーバなどのグローバル企業が活躍しています。

こうした決して広くはない国土(しかも国土の26%が海面下!)の中に異文化が入り乱れ、国境を越えた経済活動と市場原理にさらされる環境下であることに思いを馳せると、どうやって国家としてのアイデンティティを確保するのか、どうやったら幸せになれるのか・・などという問題にオランダの人たちはずっと真剣に取り組んできたのではないか、と想像してみたりもするのです。そして、そうした取り組みの結果としてこうした「教育の自由」が実現したのではないかと。

私のオランダとの接点といえば、学生時代ジュネーブの国連機関でインターンをした時にとても周りにオランダ人が多かったことを思い出します。仕事でも非常に助けてもらったし、みんなでよく遊びに行きました。ドイツやフランスなど他のヨーロッパの国出身の人に比べ、学生時代にバックパッカーとして世界を回っていた人も多く、途上国も含め海外経験が豊富で、明らかに英語が上手で性格もオープンだったことが印象に残っています。

そして、良く一緒にあちこち出かけていた仲間のうちの一人にあるとき日本の政権と選挙について問われた時のこと。ひととおりの説明をした後、「どこの政党も支持出来ないから、あまり選挙に行かない」と軽い気持ちで言った私に対し、いつもは下ネタジョークばかりの彼が見る見る間に顔を真っ赤にして怒りだし、「市民としての最低限の責任を果たしもしないで、政策の話をするのではない」と強く諭されたことを思い出します。オランダでは、社会の構成員としてすべきことをして初めて一人前の大人なのです。それから真面目に私が選挙に行くようになったのは言うまでもありません。

こうした市民教育が根付いていて、社会の構成員として果たすべき義務について共有認識をもっている社会。これがオランダの子供の幸せにつながっているのではないかなぁ、と思ったりします。つまり、“親”だけが子供を育てているのではなくて、“社会”が子供を育てているから、子供も社会を信頼してハッピーでいられるのではないかと。

海外教育のモデルケースというと、どうしてもきらびやかな日の当たる部分ばかり見てしまいますが、やはりそれを支えるバックグラウンドや国の思想背景が見え隠れするので、それを尊重しながら、日本で出来ること、、ということを考えていくべきなのだと自戒も込めて、考えてみるのでした。

 

<日本の教育の強み>

実は、日本の教育は、外から見てみると非常に良いところもあるのです。たとえば、OECDのスコアは充分すぎるほどに高いです。また、オランダやドイツは小学生の終わりに統一試験を受け、大学進学をするか専門学校などに行って職人の道を選ぶかの選択を迫られる第一関門が来ます。勿論ここで最終決定ではなく、中学校でも進路を決める余地はあるそうですが、自分自身を振り返っても、個人的にはたとえ中学生だったとしてもそんな年齢で将来を決めるのは難しいよなぁ、、と思ったりします。日本はだれでも高卒認定試験(旧大検)を受ければ大学入学に門戸が開かれるなど、リベンジの機会が与えられており、大学卒業後も私のように業界をまたいで転職をする人も多いし、大学を出ていない人が起業してビジネスをすることに大きな社会的バイアスはなく、多くの海外の人には驚きをもって受け止められているのです。日本でのキャリア形成はとても自由度があるので、そこは強みだし、生かすべきではないの?と感じています。

さらに、アメリカでは子供にしっかりと基礎力をつけさせたいと考える親は多く、実は公文は現地で大人気です。プロジェクト型学習、探究型学習といっても、スポーツと一緒で、素振りや走り込みにあたる基礎演習(つまり読み書きそろばん)がとても大事なのですが、基礎演習が不十分なまま、試合にばかり出ているようなやり方に疑問を持つ親も多いのです。そういった意味でも、日本の教育は良いところが多いと思います。

逆に、OECDのデータでも顕著に表れているように、日本の場合は、子供の自己肯定感の低さや、モチベーションの低さ、問題解決能力の低さなどが問題です。アメリカとは逆で、走り込みや素振りばかりして、全然本番ゲームをしないのであれば、それはやはり問題です。それでは学ぶ楽しみを知ることはなく、本当の意味で自分を知る事もできなければ、自己効力感を持つことも出来ません。それを克服するような仕組みを日本の文化的、歴史的背景の中で無理なく入れていくことが望まれているのではないかなぁ、などと思ったのでした。

ということで、今日はこの辺で。。

 

※リンク:ハピネス大国オランダのイエナ教育プランに学ぶクリエイティビティの本質http://www.creative-children-education.com/#!publiceducation/c17kd

※※ UNICEF(2013年4月)http://www.unicefirc.org/publications/pdf/rc11_eng.pdf

※※※ 公立と私立の違いは、日本と違って宗教があるかないかだけの違いで、通学に関して費用的な負担は基本的には一定

※※※※イエナプラン教育についての情報はこちらから

日本イエナプラン教育協会HP

http://www.japanjenaplan.org/

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藤原 さと