home > Blog > 藤原 さと > 無料オンライン学習で本当に得するのは誰?~カーンアカデミーをやってみた(1)

こんにちは。藤原さとです。

今日は、無料オンライン学習について書いてみようと思います

eラーニングはこの数年で動きがさらに盛んになっています。特に「2020年までにすべての学校で1人1台のタブレットを導入したIT授業を実現する」閣議決定もあって、昨年あたりから教育領域でテクノロジー採用の取り組みが本格化してきています。

MOOC(Massive Open Online Courses:ムークと読みます)はご存知ですか? 2012年にアメリカで複数立ち上がった「オンラインで公開された無料の講座を受講し、修了条件を満たすと修了証が取得できる」講座のこと(定義:JMOOC) です。大学生以上向けにはコンピュータサイエンスを中心とした最先端テクノロジーに関する講座を多く配信するUdacity, 世界中の多くの大学と協力し、それらの大学のコースのいくつかを無償でオンライン上に提供するCouseraやedXが有名で、既に数百万人規模のユーザーがいます。日本では、日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)公認の「gacco」が昨年4月にスタートしたほか、「edX」などが立ち上がっています。

(有料のものも含めると、最近ベネッセが提携したUdemy とか、Schoo、リクルートの受験サプリなど、沢山のものがあります)

 

<カーンアカデミーをやってみた>

今回は、MOOCの中でも、大学生向けではなく、小学校から高校生向けの無料オンライン学習プラットフォームサービスとして、世界最大規模のカーンアカデミーを実際やってみました。

ちなみにはじめ英語で受講していたのですが、なんとこちらのサイトから多くのコンテンツが日本語で見れます。(ということは、日本語のサイトと比較しながらタダで沢山英語が学べますね☆)

カーンアカデミー日本語のサイト

https://ja.khanacademy.org/

まず、小学校の5年生の算数。分数の掛け算です。

カーンアカデミーG5

そして、授業の内容は他もいくつか見てみましたが、非常にベーシックでした。内容はゲームのような派手さはなくて、学校でも先生はこのくらい教えてくれるだろうし、私がン十年前に受けてきた授業とほぼ同レベルでした。正直拍子抜けしました。ちょっと期待しすぎていたのかもしれませんし、逆にいえば、日本の先生の授業のレベルが高いのかもしれません。

でも、どんどん進んでいくと、難しくなってきます。

こちらは、Geometry (幾何学)の中でのAngles & Intersecting Linesという項目で、多角形の外角の合計値を出すための説明をしています。

カーンアカデミー外角の合計

こちらも、学校で受けた授業と似た感じですが、確かに教え方が上手だし、グラフィックで見せてくれて、いいですね。

そして、、微積分などに突入。。

 

カーン微積分

 

全ては見れていませんが、やはり何か派手なことをやっているという感じはありませんでした。

一方で、講義だけではなくて、実際に問題を解いていって、一定の正解率を達成すると、先にどんどん進めて、ポイントをゲットでき、そのポイントでアバターを選んだりパーツを買っていくことができます。

 

カーンアカデミーポイントとアバター

 

授業そのものに派手さはなくても、こうして、ステップアップがきちんと設計されていて、どのくらい正解したのかのチェックができるところ、学校の現場でも簡単に使え、保護者も管理できるバックエンドシステムはさすがです。こちらが本丸でしょうし、これらが全部無料なんて素敵ですね。

 

<数学以外のコンテンツ>

なお、カーンアカデミーには、今のところ数学ほどではないですが、歴史、音楽、アート、コンピューティング、科学などのほかに、起業家のインタビュー、受験対策、などもあります。

たとえば、NASAとのコラボ授業

カーンアカデミー NASA

中には、ピケティの資本論とか、、

カーンアカデミーピケティ

イノベーションのジレンマを書かれたクリステンセン教授のインスティチュートとテクノロジーを取り込んだ教育の在り方に関する講義とか、、

カーンアカデミークリステンセンコラボ

面白いものがあります。良かったら覗いてみてください。

 

<無料オンライン教育の普及で得するのはだれ?>

さて、、この教育を見てみて思ったことは、これは個人で使うには、「学習意欲が高くないと出来ないなぁ」というものでした。

面白いんです。でも、面白いというのは、一般授業の面白さです。なので、何等かの切迫した学習へのモチベーションがないと一個二個はやっても、ずっとステップアップしていくのは厳しいだろうなぁ、と思いました。

少し前に「テクノロジーは教育の“どこ”に効くのか?」という投稿があって、なかなか面白かったのですが、以下の表はその現状をズバリ言い当ててると思います。つまり、デジタル教育はモチベーションの高い層に効き、従来型のリアル授業はモチベーションが低い層により適しているという内容です。(文字がボケている場合は画像をクリックしてみてください)

 

デジタル教育の効くところ

 

アメリカで先行しているMOOCsも修了率が4-5%と極めて低く、はじめは面白いと思っても、なかなか継続できない・・という問題を抱えています。逆にカーンアカデミーは教育現場で採用されて、リアルの授業との組み合わせでも使われているのと、大学受験など切迫した履修ニーズがあるので、これだけ評価されているのだと思います。

あと、以前こちらの小学校でのオンライン教材について、ブログを書いたのですが、実は・・自宅内学習としてはどれも継続できていません。。(笑) Raz-Kis もMathletics もRosetta Stoneもだんだんにやる頻度が落ちていってしまいました。ただ、授業内での使用は継続しているので、こうしたものを使うモチベーションを維持する仕掛けが必要なのだと思います。

・・・となると、こうした無料オンライン学習が実質的に一番効果を持つのはどこかと考えると、ズバリ、発展途上国なのではないかと思います。

 

私は2012~2013にかけて、ミャンマーでの医療プロジェクトの立ち上げをしていたので何度か同国を訪問したのですが、そこで印象的な出来事がありました。現地の国立病院の医師と、日本の国立大学病院等の医師と、乳がん手術後の抗がん剤治療やホルモン療法に関するディスカッションをした時のことですが、日本の大学の教授がこうおっしゃりました。「ミャンマー人医師は本当に良く勉強している。薬も医療機器もないが、インターネットで日本の医師と遜色のない知識を持っている。英語だからなんでも読めるんだろうな。むしろ、逆に日本のほうがよっぽどガラパゴスだね」

その時は、ミャンマー人医師に日本に来てもらって研修も受けてもらったのですが、とにかく学ぶ意欲が桁外れ。現地でタクシーの運転手さんや、通訳さん、医療機器の代理店さんなど少しお話することもあったのですが、とにかく前向き。国が成長するとても強いエネルギーの中でビジネスをしたい人が多く、回線が弱いので、比較的アクセスが安定する夜中に起きて必死に知識を吸収しているのです。

こうした人たちは、「勉強すること」が将来の自分の人生を大きく変えることが分かっているので必死なのです。彼らにとってはタダで受けられる上質の授業はこれ以上はない魅力でしょう。

 

逆に言えば、カーンアカデミーのような授業は、日本の平均レベルの学校では既に受けることが可能です。もちろん、もっともっと勉強を進めたい子供たちにとっては有益だし、学校教育の現場に入る事で、より良い授業ができると思いますが、発展途上国に比べるとその効果は限定的のように思います。

そういった意味で、世界中で教育の底上げを実現するプラットフォームを作ってしまったカーンアカデミーは素晴らしいの一言ですが、相対的に日本がこのプラットフォームで得をするかどうかというと、少し疑問に感じます。

インターネットが普及することによって、世界の最高レベルの授業が世界中で安価に受けられるようになる・・ということの意味するものは、それだけ競争が激しくなるということ。

結局、カーンアカデミーも含めて「知識はグーグルで検索すれば出てくる時代」です。最近佐藤優さんの本で、東大レベルの授業は放送大学と受験サプリで安価に受けられるとありましたが、(単に知識を得るという意味では)本当にそうだと思います。英会話も今は、オンラインでかなり安価に勉強できるようになりました。

となると、結局こういう勉強はモチベーションのある人に軍配があがります。「自分は何のために勉強しているのか」というのが分からないと、モチベーションは上がりようがありません。且つ、こうして得た知識をどう自分の頭で選別して、ストーリーを作って、価値に転換するという作業ができるかどうかが勝負どころなんだな、、と思うのです。

さて、カーンアカデミーは、授業をオンラインで低コストに提供することだけを考えているのではないのです。とても面白いコンセプトなので、また続編を書きたいと思います。

では今日はこの辺で・・。

 

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藤原 さと