【開催報告】ミクロの世界・原子の世界を探究しよう!〜ポラリスこどもキャリアスクール7期

7月15日(日)、ポラリスこどもキャリアスクール第7期「医療・科学技術」第四回(最終回)を開催しました。

今回のテーマはミクロの世界。ナビゲーターは、東京工業大学理学院物理学系助教の山崎詩郎先生です。
山崎先生曰く、とても小さなミクロ世界を研究することで、私たちが普段見たり触れたりしている世界のことも、もっと大きな宇宙サイズで起こっていることもより深く知ることができるとのこと。
プログラム中お話いただいた、山崎先生が科学者になったきっかけやどういう科学者になりたいかなど含めて、以下ご報告します!

 

まず、身の回りの小さいもの探し。
10cmサイズから徐々に0.1㎚(1㎚は、十億分の1m)サイズの世界へ。

 


指先の上にミニ日本列島が乗っているとすると…
そこで生活するミニ人間の、指先の大きさが、原子の大きさ!

 


一番小さなものってどんなものだろう?
形、手触り、におい、温度などをみんなで想像します。

 

光の粒より小さなミクロの世界は、光学顕微鏡では見ることができません。
そこで登場するのが、走査トンネル顕微鏡。


-270度に冷やされ、磁力で宙に浮いています。
振動も、音も、電気ノイズもNG!

 

そして、この走査トンネル顕微鏡でシリコンウエハーを見たときの画像と実際にシリコンウエハーを割ったときの形から、

・小さな世界と大きな世界はつながっていること
(シリコン原子の形と、シリコンウエハーの割れ方が同じ)
・原子はや綿あめのようになっていること

を見ていきました。

 


原子の形⇒正三角形、花形、〇が二重三重になっている、四角形、六角形…
黒い部分⇒へこんでいる、つぶれている、空気の穴…
いろんな予想が飛び交います。

 


様々な模様の量子ゴマ。暗いところでレーザーを当てながら回すと、色とりどりの粒があちこちに移動するように見えます。
この動き方が、「綿あめのようになっている」状態のイメージ。

 

 

休憩をはさんで後半は、光の性質について考える実験からスタート。

穴が2つだけ空いたところにレーザーの光を通すと…
1万個?近くの光が映し出されてみんなびっくり!

 

そして、
・光が波の性質をもつこと
・すべてのものは(原子や電子レベルで)波の性質をもっていること
・波の性質を持っていれば、壁を通り抜けられること

について山崎先生からお話いただきました。

 

ドラえもんの通り抜けフープを論理的に説明してみせたのがシュレーディンガー。
彼は、1つのものが複数個所に同時に存在することについても理論づけています。

 

最後は、ミクロの世界の特徴を使って、グループごとに、学校で使えるひみつ道具を考えます。

 

使うミクロの世界の特徴は、次の3つ。
・なんでも、かべを通り抜けられる
・身のまわりのものがみんな波で綿あめみたい
・人やモノが同時に2つ、3つと存在することができる

 

発表する内容は、次の3つです。
・ひみつ道具名
・ミクロの世界のどのような特徴を使ったか
・学校での使い方

 

【発表】
<1班>

Q:「無制限に増えるの?」⇒A:「増える。」

 

<2班>

Q:「行先を間違えたら?」⇒A:「元のバス停に戻る。」
Q:「混んでいたら?」⇒A:「(普通に)階段とか使う。」

 

<3班>

 

<4班>

Q:「もこもこ椅子は座れるの?」⇒A:「座れる。」
Q:「もこもこしていないってこと?」⇒A:「もこもこはしている。」

 

発表後、山崎先生からコメントをいただきました。

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発表から、みんなが原子の難しい話を一生懸命聞いて理解しているな、と思いました。
1班は、ただ増やそうとしているだけではなく、食糧問題などの社会的意義も考えているところが良かったですね。立体的な絵もわかりやすかったです。
2班は、実際に自分が遅刻しそうになったことがあるのかなと思いながら聞きました。自分の経験を解決するアイディアを出しているのがよいですね。
3班は、好きな給食を増やすところは1班と似ていつつも、人やボール、本なども増やすなど、使い方や目的が違っているところが面白いところでした。
4班は、一人ひとりのアイディアを組み合わせたという点がユニークでした。特にもこもこ椅子は、聞き手のみんなからの関心を集めていましたね。

どの班も、ミクロの世界の特徴をいかした道具を考えてくれたなと思います。
ただ、最後に、ミクロの世界の特徴について、もう少し詳しく伝えておきたいところがあります。3つ目の特徴として、「1つのものが2つ、3つ存在する」ということを話しましたが、実は、残念なことに、同時に2つ、3つ存在するといっても、どれか1つを使ったり食べたりした瞬間に他のものはなくなってしまう(1つだけが残る)んです。数が増えるというのとはちょっと違うんですね。

今日は「もしも話」でみんなにいろいろと考えてもらいましたが、こんなふうに、みんなの常識では考えにくいような不思議なことが、小さなミクロの世界では、本当に起こっています。これが、今回、僕がみんなに伝えたかったメッセージです。
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また、プログラム中、子どもたちやご参観の保護者の方々からの質問を受けて、科学者になったきっかけやどういう科学者になりたいか、科学者になるうえで大事な科目などについて山崎先生が話して下さいました。

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●科学者になろうと思ったきっかけ
小学校3年生にみたテレビの科学番組の影響が大きいですね。
また、学校の先生が毎回こういう(今回山崎先生が実践しているような)授業をしてくれました。とても幸せなことだと思います。

●どういう科学者になりたいか
最先端の研究をして、できればノーベル賞を狙いたい…しかし、現実的には大変難しいかな(笑)。後は研究と教育と両方ができるように。みんなに科学の面白さを伝えていきたいですね。
具体的には、普段の授業ではできないような凄い最先端のことをわかりやすく伝えたいので、小学校で課外授業をやっています。今日のプログラムでは説明をたくさんしましたが、説明なしでコマの実験だけをやることもありますね。

●科学者になるうえで大事な科目
理科は勿論のこと、算数も大事ですね。シュレーディンガーの法則なども数式で書かれているので、理解するには算数の知識が必要なんです。
後は、英語も必須です。科学には国境がなく、最先端の論文など基本的に英語で書かれています。英語ができないと最先端の論文を読むことができませんし、世界に向けて自分の研究を発表することもできません。僕は昔、英語が苦手だったのですが、克服して今では得意になり、海外の学会での発表も楽しめるようになりました。

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山崎先生、ありがとうございました!

 

 

【参考】
●2016年(4期)に実施した「ミクロ」の回の様子
https://kotaenonai.org/blog/report/1578/

●ポラリスこどもキャリアスクール7期
第一回:基本ワークショップ・チームビルディング
https://kotaenonai.org/blog/report/2712/

第二回:病院救急–最前線の救急の現場を探究しよう!
https://kotaenonai.org/blog/report/2869/

第三回:人工知能って何ができるの?これからの社会はどうなる?
https://kotaenonai.org/blog/report/2981/