2016年6月19日。ポラリスこどもキャリアスクール3期、第3回のプログラムを実施しました。
第3回のテーマは引き続き「医療」ですが、今回は、医師でなく日本でとても新しい職業、「チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下CLS)」のお仕事にフォーカスします。
今回のポラリスナビゲーターは、国立成育医療研究センターの現場でCLSとして活躍される、伊藤麻衣さん 小林奈津美さん 米道宏子さんの3人の方です。 ➽各CLSのインタビューもぜひご覧になってください!
医療は、「チーム医療」という言葉がある通り、医師だけでなく、看護師さんや、検査技師さんなどのコメディカル、ソーシャルワーカーさん、セラピストさんなどの各種専門家、そして患者本人・家族まで含めて、チーム一丸となって治療・医療を行います。
CLSは、医療環境にある子どもや家族に、心理社会的支援を提供する専門職です。病気やけがや障害をかかえた子どもは、手術や長期入院だけでなく、繰り返される検査や採血などの医療処置に臨まなくてはならないこともあります。そうした精神的負担を心の準備をサポートすることなどで軽減し、また、遊びや自己表現、感情表出などを通じて、子どもや家族自身が主体的に医療体験に臨み、その医療体験を上手く乗り越えていけるように、援助していきます。
今回は、CLSの3人の方で伝えたいメッセージ「医療は生きる力に寄り添うものである」をセントラルアイディアとして、探究していきました。
<今回の主人公、せいくん>
さて、今回の主人公は小学3年生の男の子、せいくんです。せいくんに対し、CLSのする仕事はどんなものなのでしょう? CLSのみなさんが常日頃実践しているお仕事についてお話しを聞き、せいくんに対してどんなことをすれば、せいくんが厳しい治療に前向きに向き合うことができるようになるか案をグループのみんなと考えました。
<せいくんが受ける治療とは?>
せいくんはお父さん、お母さん、妹のいくちゃんと一緒に暮らしています。今まで一度も病院に入院したことはありませんでしたが、せいくんは、最近なんとなく疲れやすかったりめまいがしたりしていました。
心電図という、心臓のうごきをみる検査などをしてみると、せいくんの心臓が元気に働いていないことがわかりました。心臓は元気に生きるために大切なもの。そのままほうっておくことはできません。治療が必要です。
成育医療研究センターの心臓のお医者さんがいろいろな検査の結果を見て、せいくんの心臓にペースメーカーをつける手術が必要なことが分かりました。せいくんが前向きに治療に向き合うためにはどのようにせいくんに向き合い、どのような援助をすれば良いでしょうか?
<CLSのお仕事>
今回のナビゲーターのみなさんが勤務する国立成育医療研究センターには、非常に厳しい病気、中には原因がはっきりせず、治療手段が確立していない難病の子も多く訪れます。病院に来る子どもたちが検査や処置が必要となるとき、その不安や恐怖を和らげるためにCLSはサポートを行います。また、自分の体に何が起こっているのか、それを直すためにどんな手術をするか、体の仕組みを絵本や人形、イラストを使うなどして、わかりやすく説明したりします。
実際の医療の現場で使う人形や、本も持ってきてくださり一緒に触って、説明をしてくれました。
こうして、大切な自分の身体のことをちゃんと知れるように、病気や障がいのこと、けがをしたあとも自分の身体を大切にしていけるように、今、自分の体に起こっていることをわかりやすく子供に伝えます。そうすることによって、きるだけ不安なことやわからないことを少なくして、患者さん本人が治療や検査や手術などを「乗り越えられるよう」にお手伝いする仕事なのです。
<プレパレーションって何?>
さて、CLSのみなさんが毎日やっているお仕事、「プレパレーション」とは何でしょう? プレパレーションでは、もちろん、病気の状況や経験について本人に理解してもらうようにしますが、まずは 自分を知ることを大事にしています。そして実際に経験する治療や検査などについてそれぞれの年齢や理解度に合わせた介入をします。
プリパレーションの中で「ネガティブな感情だって出していいよ。」という事を伝えることも大事です。受け止める過程に寄り添い、支援します。何を経験するのか知ることで、その子なりの心の準備と対処法を見出し乗り越えることで、大変な治療経験に対しても肯定的にとらえることができるようになります。
<実際に自分たちで“プレパレーション”を考えてみよう!>
CLSのお仕事を体感し、説明を受けた後は、実際に手術をうけることになったせい君に対し、今回の手術を乗り越えるために どんなプレパレーションが必要なのか、どんな情報が知りたいのか、グループで考えることになりました。
ワークの中では、それぞれのペースメーカーの手術について予備的な知識もCLSさんからが子供たちの質問に答える形で、教えてもらいます。例えば、手術のあとが残ってしまう事、体の成長に伴い、心臓も大きくなるため、ペースメーカーを付け替える手術が数回にわたり必要であることなど、示すべき(あるいは示すべきでない)専門的な必要な情報などを教えてもらいます。
<プレゼンテーション>
グループで、たくさん考えた上でいよいよ発表です!各班の発表は以下の通りとなりました!
◆1班
1班は実際にプリパレーションをどのように行うかを小さなホワイトボードを数枚使い説明してくれました。
まず初めに「深呼吸」をしてもらい、その後、なぜ、いつ、どこで、誰がということを説明しました。初めに深呼吸を入れたのは、せいくんの立場に立ったら、なんで手術をしなければならないか心配で不安な気持ちになるので、まずは深呼吸して、気持ちを楽にして、リラックスしてもらうことが大切だと考えたからです。
◆2班
2班は模造紙を大きく使って右に「不安な事」と左に「プレパレーション」をかいてわかりやすく説明してくれました。
例えば(右)いたそう→ (左)麻酔がかかっているから大丈夫。(右)ペースメーカーの電池がいつまで持つのかな → (左)5,6年もつよ。
せい君が考えそうなひとつひとつの不安に応えてあげていました。対立したのは「電池交換のために、また、手術が必要になることをせい君に言うか、言わないか。」
◆3班
少しでも、せい君も心を不安にさせないように工夫しました。テンションを上げるように挨拶や明るい言葉も大切だそう。プレパレーションで工夫するのは、伝えるべき大切なことは、人形や模型を使って伝える。グループ内で意見が分かれたのはペースメーカーの手術が心臓に孔をあける手術であることを伝えるか伝えないか。このことを伝えたことで余計に手術が怖くなってしまうのではないかと考えたからです。
◆4班
4班はせい君は何を感じているかから考えました。
「不安」「生活は変わらないのかな」「体はどうなっちゃうのかな。」これに対しては気持ちを安心させる、家族に近くにいてもらう。手術を説明する。などの具体的なプレパレーションを考えました。手術の説明もゲームなどを使って楽しみながら気持ちを安心させてあげるそうです。手術の説明にはリアルじゃないものを使った方が安心するかな、と自分たちより年下のお友達の気持ちに寄り添っていました。
<修了式>
さて、今回で3回を通じての医療のプログラムが終了しました。3回を振り返ってもらいましたが、お医者さんを含めた医療に携わる専門職のみなさんが命を大事に考え、日々命について真剣勝負で仕事をされているのかの実感がわいたようでした。また、患者さんに対する理解が深まり、病気があってもなくても同じ人間だということがより理解できたようです。
最後ですので、修了式も行いました。今回のプログラム「救急医療」「医療イノベーション」「小児医療」のすべての回でナビゲーターのみなさんに共通する想いは、“命の尊さ”でした。ここで考えたこと・感じたことをさらに探究していってください。応援しています!
<お知らせ>
今回プログラムにご協力いただいた国立成育医療研究センターは今年、病気や障がいを抱えるこどもと家族のためにこどもホスピス「もみじの家」を発足しました。今回ナビゲーターをしてくださったCLSのみなさんも携わられています。ぜひWebサイトやFBページに訪れて、応援いただけますと幸いです。
■国立成育医療研究センター“もみじの家”公式webサイト
■国立成育医療研究センター“もみじの家”公式facebookページ
https://www.facebook.com/minnna.no.ouchi/
■国立成育医療研究センターの”成育すこやかジャーナル” 公式facebookページ
https://www.facebook.com/ncchd/
■国立成育医療研究センターの”成育すこやかジャーナル”メールマガジン
http://www.ncchd.go.jp/mailmagazine/index.html
※本件に関する連絡先
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
電話:03-3416-0181 (代表)
総務部総務課専門職(広報係)
Email: koho@ncchd.go.jp
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