「デザインとは工夫の積み重ね」デザイナー千星健夫さんインタビュー

 

10月18日に、ポラリスこどもビジネススクール2期がスタートします。 その中で登壇いただくナビゲーターたちの素顔を少しずつ紹介させて頂きます。

今回は、第一回のプログラム「デザインの仕事とは?みんなでデザインしよう!」のナビゲーターとなっていただく、デザイナーの千星健夫さんです。

デザインの本質ってなんだろう? 子どもたちへのメッセージとは?

非常に興味深いインタビューとなりましたので、是非ご覧ください!

 

<千星健夫さん経歴>

NECKTIE design office デザイナー

GRAPHIC・WEB・PRODUCTとジャンルをはみ出したデザインを手掛ける。自身でデザイン・製造・販売するプロダクト「TEA BAG HOLDER “SHIROKUMA”(ティーバッグホルダー・シロクマ)」は海外でも高い評価を受けているほか、メッセージアクセサリーブランド5108(コトバ)のイメージプロデュース、大手グローバル企業のWEBサイト製作など多方面で活躍中。

千星さん写真

 

こたえのない学校:現在のお仕事について教えてください。

千星さん(以下敬称略): グラフィック・プロダクト・ウエブのデザインを行うほか、自社開発のプロダクト(TEA BAG HOLDER “SHIROKUMA”等)の販売も手掛けています。

 

こたえのない学校: デザインとはどのようなものだと考えていますか?

千星: デザインとは、見た目がキレイなものを作る仕事ではないと思っています。 それはたしかにとても重要ですが、要素の一つでしかないと考えています。それよりも、デザインは工夫の積み重ねだと感じています。 工夫とはあれこれ考え、良い方法をえようとすることです。

世の中は素晴らしい”工夫”に溢れています。たとえば、電気ポッドのマグネットコード。なんでもないことのようですが、電気ポッドのコードに手や足をひっかけてこぼしたりしないで安全に使えるようにするための工夫です。 このデザインはMacBookにも取り入れられていて、普段何気なく使っているもののなかにも、実はさまざまな工夫・デザインが施されています。

そして工夫は、「自分がどういう気持ちになるか」という”気づき”と、「相手がどんな気持ちになるか」という”妄想”から生まれてくると感じています。”妄想”と言ったのは、想像よりもっともっと深く相手の思考をたどっていくものです。 まずはそのデザインを使う人のことを妄想し、自分の”気づき”を重ね合わせていきます。その繰り返しでデザインを考えていっていると思います。

 

こたえのない学校: 仕事で大切にしていることは何ですか?

千星: とにかく一生懸命考えて、自分ができるベストを尽くすことです。改めて考えると難しいですね(笑)

 

こたえのない学校: 仕事の楽しさはどんなところにあると思いますか?また逆に辛いことはありますか?

千星: 100%想像どおりになることはないですが、思ったことが形になるところはやはり面白いです。あと人に褒めてもらえるとやっぱり嬉しい。 逆に仕事で辛いこと・・ 辛いというと表現とは少し違うかもしれませんが、毎回同じ条件の依頼がくることは絶対ないので、過去のものをそのまま使えることはありません。毎回新しいことを考えなくてはいけないので、それはもう毎回悶絶します。よく言う「生みの苦しみ」ですね。また自分なりにはこれはベストだと思って回答しますが、相手にとってこれが本当にベストかはいつも不安で、常に悶々としています。

 

こたえのない学校: これから仕事でチャレンジしたいことについて教えてください。

千星: 学校、病院のデザインをずっとやりたいと思っています。 単純にサインとかロゴとか平面的なものではなく、構造だったり考え方に入ってくる部分です。たとえば病院の待合室は、病気で行っているのに居心地の悪い場所になっているかもしれない。製薬会社の張り紙がいっぱい貼ってあったりして、一方で無理に落ち着かせようという作為的な壁紙の色があったりして。そもそもここで待たなくちゃいけないの?とか、もっと根本的な部分から解決できないかなど、色々なことを考えます。

また学校のトイレ。男の子は個室のトイレに入るのは今でも恥ずかしいはず。でも、こういうこともデザインで解決できるはずだと思うんです。こういうことをロゴのような平面的なものではなく、解決していけたらと思っています。

 

こたえのない学校: これからの将来、どんな力が必要になってきて、どんな準備をすべきだと考えますか?

千星: そんなの全然わかりません!(笑) その都度、目の前にある課題を精一杯やることでしょうか。 たとえば、スマートフォンは10年前は影も形もありませんでし、20年前はグーグルもなかった。今はみんなが持って使っている。そういうことを予見するのはほとんど不可能だと思いますし、そんな先のことを予測したところで、預言者の人以外はあんまり役に立たないと思います。

ただ、歴史をたどることにはある種の慰めにはなると思っています。特に近・現代の人たちはついさっきまで生きてた人たちですから、状況もイメージしやすい。歴史の中の人たちも、やはりそれぞれの状況や制約の中で試行錯誤して、新しいものを創造しています。たとえばタイポグラフィでいえば長く金属活字の時代がありました。活字ボディという物理的な制約がたくさんある中で、さまざまな人が試行錯誤のすえに良質な書物が生み出されてきました。その時代における制約なかで、多くの個人が小さな工夫と進歩の重ね、少しずつできることをやってきた。それがデジタル全盛の世界になった今でも、深いところで礎になっているのだと感じることができます。だから今やれることを精一杯やろう、というのが僕の歴史観です。

 

こたえのない学校: 小さいころはどんなお子さんでしたか?

千星: あまり覚えていないんですが・・、たぶんかなりタチが悪かったかと・・(笑)。 ひたすら屁理屈をこねる典型的現代っ子でした。 たとえば、小学校の時、国語の時間の出来事。国語って回答がないはずですよね。でも、自分がどう感じたかを書けと言っているのに、自分の意見を言ったら先生と口論になったり。 給食も全然美味しいと思わなかったり、嫌なやつでしたね。 体育も好きでなかったし、なかなか周囲ともなじめませんでした。 でもそんな中でも何人か仲のいい友達がいたのが救いだったような気がします。 そういえば、ずっと楽しくないと思っていましたが、高校はいい友達との出会いがあって楽しかったですね。クラブが楽しかったです。 誰と出会うかというのはとても重要ですね。

 

こたえのない学校: 小学校の子どもたちへのメッセージ、お願いします!

千星: そうですね。 「世界はどうにか素晴らしい」 でしょうか。 無条件に素晴らしいっていうことではないんです。現実は世知辛いし、ろくでもないし、狡猾な人もいるし。 日々何かに追われてやっていられないこともいっぱいある。 がんばってデザインしたのに、ネットでいろいろ言われたり。

けれども嫌な経験は、いつかその意味が逆転する時がくると思っています。オセロの駒がひっくり返って、黒い部分が真っ白に変わるように。黒が多ければ多いほど、ひっくり返ったときの白の量も多くなる。だからどうにかやってこれたんじゃないかな、と思うんです。嫌な経験をすることで、人に優しくなれたり。なので、「嫌な経験も、いつかどこかで、くるっとひっくり返るときがくる。だから、どうにかこうにか、やっていける。」ということを子どもたちに伝えたいですね。

 

こたえのない学校: ありがとうございました!

 

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⇒千星さんは、10月18日の第一回プログラム「デザインの仕事とは?みんなでデザインしてみよう!」の講師として登壇されます。この日は千星さんのナビゲートによって、子供たちがあるプロダクトをデザインし、それをレーザーカッターで千星さんが作成してくださります。IID 世田谷ものづくり学校1FにあるPTA(Prototyping Thinking Area)とも連携したプログラムです。

>>詳細とお申込みはこちらから

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