home > Blog > 藤原 さと > 評価を学びに生かすたった一つの方法~成績をハックする

 

藤原さとです。

こたえのない学校では、小学生向けのプログラムのほかに教育者向けにLearning Creator’s Lab(LCL)というものを運営していまして、公立・私立の小中高の先生たちや、教育事業経営者、大手民間教育事業に携わる民間教育者、人材開発に関わる一般企業勤務の企業人や地域活動家が集まって約半年強、自分たちでチームを組んで探究プロジェクトを創って実施するということをしています。

そんな中で自主勉強会みたいなものを作る先生もいて、LCL1期生の小学校の先生2人が立ち上げた定期的なオンライン読書会に私も時々参加しています。いつもブログにしようと思うくらい面白いのですが、今回、私の気づきもあったので、シェアしようと思います。

当日、みんなで読んだのはスター・サックシュタインの「成績をハックする」。この日は、現役小学校教師2名、元現役小学校教師1名、学校外2名の組み合わせ。一人はオランダに在住しています。

 

<成績表にもいろいろある>

さて、いきなりオンライン読書会の話ではないのですが、私の子どもはたまたまアメリカに小学校1年生から3年生までいましたので、いろいろな成績表や認知テストの結果をもらってきています。まずはこんなのがあるというご紹介を。

〇日本語補習校の成績表

日本の公立小学校の成績表に少し似ているでしょうか?

〇アメリカ現地公立校の成績表

私の住んでいた地域の公立の評価は客観評価のみでした。小テストの結果などの積み上げで、100点満点。70点以下は落第となり進級できません。関心・意欲・態度のようなものは主観的評価の範疇となり、説明ができないため、含められません。非常にシンプルです。

〇3年次、国際バカロレア校での成績表

3年生の時のみ国際バカロレア校のPYPでした。探究の単元(Unit of Inquiry)における各プロジェクトの評価と、所謂国語算数理科社会など各学科の評価(細目あり7段階)と両方ついていました。このページの他にもTransdisciplinary Skillsといって、社会的スキル、リサーチスキル、考えるスキル、セルフマネジメント、コミュニケーションを8段階で評価されており、評価表は期末は10ページほどのものになります。

〇2年次に受けた認知テスト
こちらは、州や教育区によって違いがあり、私たちの所属する教育区では小学校2年生の時にGifted & Talented の選出があり、全ての生徒がCogATという論理・推論・空間把握などを測る認知テストを受けます。こちらとIOWA TESTというものの組み合わせで決定されました。アメリカでは、アフリカンアメリカンやヒスパニックなどの人種の差や、家庭の経済格差、娘のような母国語が英語でない子供たちがいて、学校のテストだけでは子どもの本当のポテンシャルが拾えません。貧困層や移民などで学校の成績が悪くても別のところで評価してもらえるのは、マイノリティの家庭にとってはありがたい仕組みです。

〇3年生の時に受けた外部評価テスト

こちらは、団体によるテストで、私学や国内でもインターナショナルスクールが多く採用しているテストです。問題はTOEFLのように、正解すると自動的に難しい問題が、不正解だとどんどん簡単な問題が出くるので、5年生が13年生レベルのものを解いたりその逆もあります。学年はじめと学年終わり(学校によっては中間も)にテストを受け、相対的にその子が同学年で学校外も含めた全体のデータの中でどこに位置するか、1年でそれが伸びたのか、それとも後退したのかが一目瞭然となります。先生はこの結果で評価されることもあるようです。この年はたまたま娘は英語が伸びた時期でぐっと成績が上がりました。このテストはNWEAというものですがMAP、iReadyなどいくつかメジャーなテストがあります。

これだけいろいろ受けていて、違った尺度で評価を受けると、「ここではよくても、あそこではよくない」みたいになりますので、良くも悪くも、あまり気にしてもしょうがなくなります笑。

 

<先生たちと話したこと>

そんな評価ですが、先生たちは「評価」に悩んでいました。「通知表」はフォーマットというものがあり、それを埋める作業が必要なのですが、それが子どもたちの姿を示しているのかというとそんなこともない、自分で勝手に通知表のフォーマットを変えることはできない。子どもたちの成長は日常的なものなのに学期末の紙一枚でどこまで何が言えるのか。子どもたちがその評価を使って自立的に学んでいけるのならいいのだけど、そんな風にも使われていない、評価は何のための評価なのか。成績表はだれのためのものなのか、、そんなことでモヤモヤしていました。

そもそも子どもたちは学校の成績以外にもいろいろな評価を受けています。受験勉強をしている子たちなら偏差値があります。また、別に成績表なんかなくても非明示的に「〇〇ちゃんはスポーツが得意」「〇〇君は算数がすごくできる」というのは子どもたちは感じ取っているものです。さらに家庭でも「お兄ちゃんは〇〇なのに」「従妹の〇〇ちゃんは〇〇大学に入ったらしいわよ」と評価の攻撃は押し寄せてきます。100点取れたらおもちゃやお小遣いということもあるでしょう。

先生たちも評価されています。「〇〇先生は私たちの話をよく聞いてくれる」「〇〇先生はえこひいきをしない」など。もちろん校内での人事評価もあります。

どうやら、評価というものはなくならなさそうです。。

 

<評価とどう向き合うか。ある先生の実践から>

そんな中で、話し合っていた6年生担任の先生の一人が、ずっとこの1年間「評価」というもを考え続け、どうしたらいいのかということを教室実践として取り組んできていました。

その先生は、今年の4月、学校の成績表と並行して、サブ通知表をつくる取り組みを始めました。サブ通知表※についても子どもたちと、評価をどうするか、どのように考えるかというワークを表現も含めて、何度も話し合いを繰り返してきています。

その成果が出てきている様子も教えてもらいましたが、それよりも「子どもたちが評価に振り回されないようにする」「通知表の濃さを薄めたい」「通知表の評価が君の評価じゃないんだと言い続けている」いるといった言葉がとても印象的でした。

そうなんです。もちろん、よりよい評価をつくっていくことも重要なのですが、会社に入れば、人事考課は避けられないし、フリーランスになれば仕事があるかないかが評価になる。会社を経営すれば売上利益で評価される。子どもたちに一生懸命お弁当を作ったのに大量に残されたらお母さんは落ち込むものなのです。

評価はどこまでたってもなくならない、だったらそれを逆手にとって、「評価」に振り回されず、むしろどんな「評価」でも逆手に取ってしまうマインドが必要なのかもしれません。

結局のところ、人生においては、「自分で自分のことを自分の言葉で表現できるようになる」ことが自己評価としてのゴールなのではないか、そういうふうに人生を歩めるように大人は子どもを支援していくべきなのではないか、そんな風なことに気づかされたブックリーディングになりました。

 

<未来の評価>

そんなたかが評価、されど評価の世界ですが、今AIも出てきてどんどん変わってきています。人事評価では、ITコミュニケーションツールで、誰が誰とどのようにコミュニケーションをとっているかというようなことを解析することで、評価するようなことが始まっていますし、IoTのようなものを使って、学び手の生体情報を得るようなことも技術的には可能です。結婚相手も、AIが提案した相手のほうが、自分でよいと思ってお付き合いした相手よりも関係性が長く続く、というようなことも起きています。

余談ですが、今年の秋に実施する小学生のためのプログラムでも子供たちの発明の特許性の評価はAIが行います。今回お世話になる弁理士の先生たちは、発明もそのうちAIがやってしまうだろう、おっしゃっていました。

ユヴァル・ノア・ハラリが描く「ホモデウス」の世界では、人工知能が自分より自分を知っている世界について書かれていますが、部分的にはそういったことがどんどん起きてくる、そんな時代の入口に私たちは立っています。

そんな時だからこそ、「自分は何者なのか」といったことについて振り回されずに考え続けられる人であろうとする努力が必要なのではないか、そんなことを思います。

あ、、「成績をハックする」のレビューではなくなってしまいました。この本には副題として「評価を学びにいかす10の方法」とありますが、それをもじって恐れ多くも「評価を学びにいかすたった一つの方法」と題名をつけさせていただきました。怒られるかな。。。とはいっても、この本、とっても良いです!実際の教室実践に使える方法や考え方のヒントが満載です。是非読んでみてください。

では今日はこの辺で。

 

 

※具体的には、キャシー・ハーシュ・パセック氏の提唱する6つのCを使ってみているそうです。6つのCとは、コラボレーション、コミュニケーション、コンテンツ、クリティカルシンキング、クリエイティブイノベーション、コンフィデンスです。

 

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