home > Blog > 藤原 さと > 日本人の「個」と教育について考える(4)~般若心経と「個」

 

藤原さとです。

前回まで、「代表的日本人」→「日蓮」「法華経」「日本の仏教」→「大乗仏教」という流れできましたが、この辺でいよいよ「般若心経」に入りたいと思います。

ここは、「般若心経」「集中講義大乗仏教」ほか多数の仏教に関する著書のある佐々木 閑先生のガイドに従って、自身のメモとして書いていきます。

 

<般若心経とは?>

般若心経は、悟りの世界に行けるのは限られたごく一部の人だけではなく、誰もがいけるという大乗仏教の経典で、5世紀にインドに渡った玄奘が持ち帰った経典の一つ。たった262文字の中に込められている教えの深さと広さから英訳「Heart Sutra」としても世界中に知られており、スティーブ・ジョブス、ジョン・レノンにも大きな影響を与えたそうです。

今回はじめてじっくり読んでみましたが、非常に興味深く、且つとても魅力的なお経でした。日本人で多くの人の心の支えになっていることはもっともですね。

 

 

<私とは何だろう?般若心経の認識論は面白い!>

まず、仏教の認識論がとても先進的で面白い! 大乗仏教以前より、仏教の「私」は五蘊(ごうん)という以下の構成要素で成り立つとしていますが、これはまさに今の認知科学がとらえている世界観や「個」の概念と非常に近いですね。

 

色(しき)(=肉体)

受(=感覚)

想(=想像)

行(ぎょう)(=心の作用)

識(=意識)

 

さらに、欧米ではデカルトの「我思う、故に我あり」という認識論は厳然たる説得性をもって現代でも生きているし、教育の分野でも、正に五蘊から受け取ったもので「概念」を創り上げていくという考え方は、構成主義的な考え方、ひいては現在の教育論にもつながりますが、般若心経ではそこから一歩進んで、こうした五蘊は仮の姿であり、「空」なのだと言い切ってしまいます。デカルトの「我」すら「空」だと。なんと!

つまり、般若心経では、あなたが見た「本」「友達」「太陽」などは「概念」であり、すべて「空」である、そしてそれを見ているあなたも「空」であるとします。例えば、目の前に見える「本」が「本」だと認識するのはあなたが「概念」として本だと思うだけのことであって、ネズミにっては「本」ではないし、夜になって見えなくなれば、それはあなたにとっても「本」ですらなくなる。

だから目に見える、感じ取れる「概念」にとらわれた生活をしていると、逆に不自由になったり、誤った判断をすることがあるとこのお経は警鐘を鳴らしているのですが、こうした考え方が5世紀よりも前に存在したことは無論のこと、お経として日々の生活の中に溶け込んでいるというのは、なんとも先端的ですね。

 

<認識・言語を超える「空」の世界と「個」>

さて、この「空」とは何かですが、般若心経の「色即是空(しきそくぜくう)」は、「現象」、移ろいゆく世界の法則、しかし人間の叡智や言語を超えたものを「空」としたと佐々木閑先生は書かれています。人はその移ろいやすいものを美しいと感じ、スナップショットとして切り取っていきます。その切り取った姿は写真かもしれないし、芸術かもしれないし、万有引力の方式などの物理方程式かもしれません。

こうして「空」を切り取った喜びは人間本来の喜びであり、そうした「空」をきりとる何気ない日々が私たちの人生に意義を生み出すとのこと。「空即是色(くうそくぜしき)」というそうです。今でいうと、映画インターステラ―で追い求められている宇宙の始まりを知る「万物の理論」なんかの話もここだと思うと何かワクワクしますね。

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今回、般若心経を私自身いいなぁと思うのと同時に、欧米にはない特有の価値観を感じました。何でもかんでも、言語化しないと気が済まない(西欧的な)世界や価値観ではなく、「空」を「空」としたままおいておく。そうした在り方に清涼感とすがすがしさ、なにより親近感を感じます。だからこそ、日本が他宗教に対して非常に寛容なスタンスを維持できており、それが一つのこの国の魅力になっているのかもしれませんね。

 

<般若心境の「個」。人のために生きる~キリスト教との共通点>

さて、もう一つだけメモをしておきます。「空」と同じく仏教でよく出てくる「煩悩」という言葉。般若心経では最終的に「(菩薩として)何もこだわりも煩悩も持たず、人のために尽くす」ことが書かれており、変な自我など捨てて、人のために生きてしまったほうがのびのび生きられると言っています。

このあたりになると、一見「空」や「煩悩」と無縁に見えるキリスト教と仏教の世界は実はいきなり近くなってきます。その辺次回書いてみたいと思います。

今日はこの辺で。

 

<関連ブログ>

1)仏教の「個」と教育

http://kotaenonai.org/blog/satolog/2775/

2)「法華経」と「個」

http://kotaenonai.org/blog/satolog/2780/

3)仏教と信念対立 仏教の上陸から鎌倉時代まで

http://kotaenonai.org/blog/satolog/2787/

4)般若心経と「個」

http://kotaenonai.org/blog/satolog/2795/

5)キリスト教と仏教と「個」

http://kotaenonai.org/blog/satolog/2798/


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