home > Blog > 藤原 さと > 授業成功のポイントは徹底的な個別化~アメリカ公立小学校の先生のインタビュー

 

藤原さとです。

今年の1月から地元のカレッジで教職課程にあたる授業を2コマとっていました。一つは教師になりたい人が初めに取る「Introduction to the Teaching Profession」というもので、もう一つが、クラスにおける特別支援教育(発達障害等を含む)や人種・ジェンダーなどの問題を扱う「Introduction to Special Populations」です。

2月には地元の公立小学校で、各授業16時間、合計32時間の授業観察(Observation)を行いました。やっと本学期が終わって少し解放されたので、両方の授業の振り返りもかねて、今後数回にわたって、学んだことを共有できたらと思います。アメリカネタが続きますが、お付き合いください。

 

まず、最初は先生のインタビューの課題があったので、そちらの内容から。娘も通った地元の公立小学校R校、2年生担任、Ms.Bです。

こちらの学校に子どもを通わせて、つくづく思っていることが、学校における子供たちのミッションが「それぞれの個性の最大発揮」であることです。インタビューはそれを裏付ける内容となりました。

 

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Q: 先生としてのキャリアを教えてください。

私は、現在の公立小学校で8年目、他の公立小学校で4年、合計12年の経験があります。その前は、6年間保育園(Pre-School)の先生をしていました。今は2年生の担任をしています。

 

Q: 教えるときに一番難しいのはどんなことですか?

一人一人の子どもに対して、何が有効な手立てかを見つける部分です。もちろん一斉授業をすることもあれば、グループワークをすることもあるけれど、いずれにしても、それぞれの子どもが何を得られるのかということについては、常に考えています。そしてそれは、実のところ、魅力的なことである一方、かなり骨の折れること(exhausting)でもあります。多様な20人以上の子の問題に関わり、ニーズにこたえていくというのは非常に大きな問題です。

 

Q: どんな時に一番喜びを感じますか?

なにか困難に直面した子に対して、明らかに変化を起こすことができた時がその時です。子どもたちが知識や自信を身に着けていくのを見るのは本当にうれしいことです。自分の教え子が何年か後に訪ねてきてくれて、「先生があの時算数を教えてくれたからすごく算数が好きになったんだよ」などと行ってくれると天にも昇る気持ちです。

また、教師の仕事は毎日、毎年変化があるところが個人的には好きです。常に常にもっといい授業をしたいし、新しく試してみたい事があります。このレッスンが終わったから、今度はこれをやってみよう、変えてみよう、と考えているのはとても楽しいです。

 

Q: 学級運営をうまくいかせたり、子どもたちを惹きつけるためのコツはありますか?

とにかく一人一人の子をよく理解することに尽きると思います。何が好きなのか、何が得意なのか、どんな認知特性があるのか。それらをきちんと理解した上で、個別化(Differentiation)を行います。これはクラス経営にも関わってくることで、頭ごなしになにかを指示したり強制してもうまくいかないことが、子どもをよく理解することで解決することがあります。クラスを統制(Discipline)するテクニックはいろいろあるけれど、子供たちを理解すること以上に大事なことはありません。たとえば、うつ伏せになって寝ている子がいたときに、病気なのか、前の日によく寝れてないのか、理由を理解することです。一方で、一見相反する内容のようですが、どんなクラスで在りたいかという目標については、高い目標を共有し、それをみんなが腹落ちするレベルで理解していることも必要です。

 

Q:子どもとの関係をどのように構築していますか?

これも同じです。子どもをそれぞれ個別に理解し、認めてあげることです。それが大きな違いを生みます。また、間違ってもいい、何かあったら絶対助けてあげる、と声をかけ続けることをしています。

 

(2年生の教室の写真。奥にカーペットがあってゴロゴロリラックスできる場がある。手前のテーブルはDifferentiationという個別化の単元で、みながバラバラなことをする時に学習の遅れが出ている子たちが数名集まって先生の補講を受けたりするのに使われる)

 

Q:先生というのはタフな仕事だと思いますが、デメリットはありますか?

毎日毎日なにかしらの事件が起きます(笑)。長い夏休みが取れるからという理由で教師になってしまったら、とてもではないけれども、割の合う仕事ではありません。膨大な事務処理や保護者対応もあって、それは大変な仕事です。子どもたちの個性の発達に責任のある重要な仕事なので、生半可な気持ちでやったら、絶望的な気持ちの子どもたちに囲まれて、自分も絶望的な気持ちになるでしょう。

 

Q:アメリカの教育は変わってきていると思いますか?

教師に要求されることは明らかに増えてきています。具体的には、以前は「勉強」を教えていればよかったものが、今は子どもの個別化に対応するようになってきています。また、以前は特別支援の対象でクラスにいなかった自閉症の子もレギュラークラスに入るようになりました。明らかに子どものために時間をさけなくなっている保護者が増えてきていて、生活指導(靴の紐をきちんと結ぶ)なども担任の役割の範疇に入ってきました。

また、指導要領(Standard)も頻繁に変わります。つい数年前まで、算数でこの教え方をすべきと言われたものがすぐ変わります。また、学びの低年齢化が進んでおり、20年前、本格的に読み書きを覚えるのは小学校1年生になってからだったのに、今はKinder(年長)の時点でアルファベットは勿論のこと、いくつかの単語をスペルすることがもとめられ、それが出来なければ at Riskの判定が出る。それが5歳の子どもに求めることなのか非常に疑問です。正直すべてに賛成できないこともあります。

 

Q: 教師という仕事はアメリカでどのようにとらえられていますか?

アメリカで教師の職業としての地位は非常に低くとらえられています。夏休みが長く取れる代わりに、給与の低い仕事、という位置づけです。社会に対して寄与していること対しての給与はあまりに低いと思います。その辺のフットボールコーチですら、私たちの2倍の給与をもらっているんですから!

私が高校生の時にキャリアカウンセラーに「小学校の先生になりたい」と言ったときにそのカウンセラーが言った言葉が忘れられません。彼女は「あなたは先生になるには優秀すぎる」と言ったんです。それって、先生という職業に対する侮辱発言ではないでしょうか。つまり「教育の分野には優秀な人材は要らない」と言っているのと同義です。非常に屈辱的なことだと思っています。

 

Q: そんな大変な仕事ですが、やはり教師になりたい!という人にアドバイスはありますか?

常に常に新しいことにチャレンジし続け、好奇心を失わないこと。教師には2種類いて、20年間同じことをやり続ける人と、毎年新しいことにチャレンジする人がいます。ハッピーな先生になることの第一歩は多少大変でも後者になることです。

また基本的に非常にチャレンジングな仕事なので、評価やいろいろなことに惑わされず、ベストを尽くすことに集中すること。そして、自分の期待値を調整してストレスまみれにならないことがとても重要です。時にはリラックスしてきちんと自分を認めてください。

教えることが好きで、自分を手なずけることさえできれば、これほど楽しい仕事はありません。そして、教師ほど尊く、エキサイティングで、心を満たす職業はありません!

 

クラスの手前にあるカーペットスペース

 

<最後に>

アメリカの教育のキーワードともなっているのが、Differentiation(個別化)です。これは授業でもレポートの課題でも何度も何度も繰り返し言及されます。この数年は、それが進化し、“Personalization”という言葉もさかんに使われてるようになっています。

もともと、個性重視で、集団行動やチームプレイより、個々の違いを浮き立たせるような教育を指向するアメリカですが、教職課程でも個別化に向けてのインストラクションにますますフォーカスがあてられています。(かつ、ソーシャルスキルの育成はスコープに入っていますが、チームワークについてほとんど言及されていないところがなかなか興味深いです。)

それにしても、先生というのは、国が違っても同じだなぁ、と最近思います。教師という仕事が大好きで、まじめでついつい仕事をしすぎてしまう。そして、内省的で子ども想い。そんな“教師”という仕事の社会的な認知を上げ、先生が安心して教室に向うことができる、そんな社会設計が必要だとますます思う今日この頃です。

 

なお、個別化については、ヴァージニア大学教育学部教授Carol Ann Tomlinson の“The Differentiated Classroom” が書いた「ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ」という本が有名です。日本語訳が最近出版されましたので、ぜひ読んでみて下さい。

 

<関連ブログ>

 

子どもの個性を認めるのはさすがに得意!アメリカ公立小学校の新学期

http://kotaenonai.org/blog/satolog/861/

 

学びの個別化をどこまで学校で受け持つのか~アメリカ小学校でのアダプティブラーニングの使い方を見て

http://kotaenonai.org/blog/?s=%E5%80%8B%E5%88%A5%E5%8C%96&submit=search

 

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