home > Blog > 藤原 さと > アメリカの小学生はどのように作文を学んでいるのか~ライティングワークショップの現場から~

 

藤原さとです。

今回はアメリカのカレッジで学んだこと第三弾です。地元のカレッジで教職課程にあたる授業を取っており、公立小学校で、合計32時間の授業観察(Observation)をしていました。今回は、アメリカの作文指導です。数日間をあけながら合計4日間(16時間)見てきました※。

さて、初日の見学日、、ミニレッスンからスタートした先生。「??」んんん?あ、これは・・・もしかして「作家の時間(ライティングワークショップ)」だ!!!

日本でも、約10年前に作家の時間―「書く」ことが好きになる教え方・学び方(実践編) が出版され、多くの優れた実践家を生んでいるライティングワークショップですが、まさかこんなところで実践が見られるとは思っていませんでした。

※(2018年8月補足)”インザ・ミドル ナンシー・アトウエルの教室”が2018年7月に出版されています。

アメリカの実際の学校でどのように実践されているのか、見てきましたので、その時のメモをベースに皆さんに共有したいと思います。

さて、見学したのはG4、小学校4年生の教室です。私の見学期間にみんなが書いていたテーマは「自分の好きな場所」。

 

 

【5パラグラフエッセイ】

この週にみんなが取り組んでいたのは「Expository Writing」というものです。Expository Writingというのは、あるアイデアを深く考え、エビデンスを評価し、アイデアを解説し、そのアイデアに関する議論を明確かつ簡潔に記述することを要求するエッセイのジャンルです。

先生は冒頭にミニレッスンとして、どうやって書いたらいいのかを下記のように説明しながら、例文を出して、みんなの意見を聞いていました。具体的には下記のような形です。

 

第1パラグラフ:Strong Central Idea

  • 明確で簡潔、且つ効果的なセントラルアイディアを記載する
  • ここで、読み手を引き込むこと、および自分のトピックを明確にすることが必要

第2パラグラフ:Reason 1

  • 自分の伝えたい内容の理由を掲載する。
  • ディテールを書くこと。
  • 自分の個人的な経験(Personal History)を反映させることが有効

第3パラグラフ:Transition

  • 自分のReasonやエビデンスを論理的につなげる

第4パラグラフ:Reason 2

  • さらに自分のCentral Ideaをサポートする理由、エビデンスを提示する。(文脈や第2パラグラフの設定によっては必ずしも必要ではない)

第5パラグラフ:Conclusion

  • 単なるCentral Ideaの書き直しではなく、理由を踏まえた上で、まとめを書く。

 

【ブレインストーミング】

まず、スタートはブレインストーミングから。これは個別作業で、好きな場所、その理由、関係する経験・・などを抜き出してワークシートに書いていきます。1日かけてやります。その上で、まずはじめのドラフトを書きます。(実は私の見学の前の週まででこの部分は終わっており、推敲の段階から私は見始めました)

 

【はじめのドラフトチェック】

出来上がると、友達とペアになって読みあいます。その内容をクラスでシェアし合います。その上で、もう一度ドラフトを書き直します。

 

【先生との読み合わせとスモールグループでの読み合わせ】

次のドラフトが出来たら、出来た順番にホワイトボードに自分の名前を書いていくと、先生の大きなテーブルに4人ずつ呼ばれます。そして順番に自分の書いたものを音読してみんなに聞いてもらいます。

NYが好きだというある女の子はブルックリンのベーグル屋さんについて書いていました。でも美味しいから・・、妹と食べました、という単調な書き方になっていました。

そこで、先生は言います。「私もNYのベーグルは大好き!おいしいベーグル屋さんはみんなすごく並んでも買うのよね。そのベーグル屋さんに人並んでいた?(絵を描いて)こうやってビルの角をぐるっと回っても人が待ってるのよね!自分の記憶をたどってみて。どんな種類のベーグルがあった?チーズ入り?ナッツ入り?出来立てのベーグルって本当に素敵な臭いがするわよね。二つに割った瞬間にほわっと湯気が立って、いい匂いがして!目をつぶって想像してみて。」

そこにいた4人がみんな目をつぶって、においをかぐ想像をしていたのが可愛かったです。

そのあと、あとの3人の生徒にその文章について話してもらいます。

 

男の子「NYがなぜ好きかの理由が、ベーグルの例からわかって、いいなと思う」

女の子「でももっと町の風景が分かるといいなぁ。天気がどうだったとか。」

女の子「でも、ベーグルが好きだからNYが好きなんじゃないわよね。雰囲気が好きなんだってことが伝わればいいと思う」

 

******

次は自分の家が好きだと書いた男の子。母の日にお父さんと一緒にカップケーキを焼いてお母さんを驚かせたエピソードを書いていました。

先生は、容赦なく、なぜこういう文章を構成していったのかを聞いていきます。

「”My Father made a difference on my life.”というこの文章、先生すごく素敵だと思う。何が“Difference”をもたらしたのかもうちょっと教えてくれるかしら?」

「なぜ、あなたのお父さんはあなたにとって大事な人なのかしら?」

「あなたのお母さんの驚いた時の顔についての表現はとてもよかったわ!ここから、なぜ家が素敵な場所なのかのTransition Sentenceが必要ね」

 

・・・といういうことで、何度も書き直してきます。子供たちも先生のコメントを聞いているので、負けないようにいいコメントをしようと頑張っています。

 

先生の言葉のメモが残っておりそのまま書きますが、“Vocabulary Choice is important(言葉の選択)” “Specific experience needed.(特定の経験の記述)” “Relate your personal example to the transition sentence.(個人的経験の反映)” “Writing and Editing are equally important.(推敲の重要性)” “Elaborate the expression.(表現の上達)” “Attract the audience.(読み手を掴む)” Corporate facts to your memories.(記憶と事実の連携)” などなど。使う言葉も本格的です。「”Cool”というようなぼんやりした(Generalな)言葉を使わない」「My favorite is‥My favorite is‥My favorite is‥と連続させない」「その例は主題とずれている」などという具体的な指摘も飛びます。

戻っても、お友達と読み合せてから、次のラウンドで先生の個別のアドバイスをもらい、友達のフィードバックをもらう・・を繰り返します。

こうして、シンプルな1テーマに対し、3週間程度かけて毎日の授業で書き直していくのでした。

 

 

【文章の上達】

見ていたのは4日間だけでしたが、この間だけでも、目に見えて子供たちの作文は良くなっていきました。初めのころはアリゾナ州について書いているのに、内陸にはあり得ない海の話を書いている子、「好きな場所」について書くことになっているのに好きなゲームについて延々と描いている子。ユニバーサルスタジオの乗り物について羅列していた子。。。

それらの子の文章は変わっていきました。アリゾナからテーマを変えた子は、きらきらと光る海と水しぶきについて書きました。ゲームのことばかり書いていた子は自分の家のゲームルームの様子が目に見えるように書いていました。ユニバーサルスタジオについて書いていた子は、ハリーポッターのバタービールについてフォーカスした文章になりました。

それぞれの子の語彙力や表現力はまちまちなのですが、その子なりに成長していました。

 

【構造を読み、構造で書いていく】

なお、こうやってCentral Ideaを中心に読んだり書いたりするのは、4年生からではなく、実は1年生からです。過去読み書きについては何度か書いているので、参考までに載せておきます。

 

アメリカの公立小学校での論理力の育て方(G2)

http://kotaenonai.org/blog/g2-review-at-us-school-satoblog160502/

アメリカの公立小学校1年上期の授業

http://kotaenonai.org/blog/satolog/465/

アメリカ流読書好きの育て方

http://www.futureedu.tokyo/education-news-blog/2017/4/15/readint-education-in-the-usa

 

こうやって論理構成を意識しながら読み書きを進めること、そして「書く」にあたって、あまり急ぎ足にならず、一つのテーマでじっくりと文章を書くと、子ども自身も自分で文章が上達したな、と実感できるのではないでしょうか。

 

【統一試験でもライティングの試験がある】

こうしたエッセイライティングの授業なのですが、学校で力が入っているのには訳もあります。というのもテキサス州の統一テスト※※で4年生はライティングがあるのです。参考までに2016年の4年生の筆記試験の内容をご紹介しておきます。(この試験は特別支援対象者等一部の子を除き、地域に関わらず公立小学校に通うすべての子が受け、100点満点で評価されます。)

Source: Texas Education Agency

http://tea.texas.gov/student.assessment/STAAR_Released_Test_Questions/

 

*********

出題:「人はどんなに年をとっても、楽しむことができるものである」

 

これを読んで、まず4年生として、あなたが楽しいと思うことをいくつか考えてください。そのうえで、4年生が好きだった理由を一つ書いてください。何があなたは好きで、なぜそれが好きなのか、書いてください。

書くにあたって、

  • 主題(Central Idea)を明確にしなさい
  • 作文はOrganize(構成)しなさい
  • ディティール(細部)まで表現しなさい
  • 言葉を正しく選択しなさい
  • スペル、句読点、文法を正しく表記しなさい

*******************

この試験の解答欄は26行。ハンドライティングなので、大雑把な話で恐縮ですが、日本語で言えば原稿用紙2枚分くらいだと思います。なので、先生の教え方には当然差はあるはずなのですが、実践は一般的という理解でいいと思います。

上述の通り今回見学したのは、非常に構成的なワークショップの形でしたが、これだけ機能しているのは、書きたいものを書いていくということも含め、小学校1年生からのライティングとリーディングの積み重ねの上に成り立ちます。日本の場合はこうした積み重ねはないケースも多く、構成の考え方にも違いがあるので、工夫が必要ではありますが、逆に自由に組み立てられる楽しさもあるように感じます。「書く」ことは、自分がモヤモヤとしていることを言語化する能力、人に伝える能力含め、何にでも応用できる基礎中の基礎スキルです。

 

どのような言語であれ、文化背景があれ、子どもたちが自分の思考を見つめなおし、人に伝え、新しい社会を創り出していけますように。そんなことを思う、見学となりました。

 

<今回の授業観察におけるレポートはこの第三弾で終了です!>

第一弾:授業成功のポイントは徹底した個別化~アメリカ公立小学校の先生のインタビュー~

http://kotaenonai.org/blog/satolog/1954/

第二弾:発達障害等の子はどう過ごしている?アメリカ公立校の特別支援教育の現場

http://kotaenonai.org/blog/specialeducation_lsc_170500/

 

※見学した学校は、実は娘が通った地元の公立小学校です。

※※テキサス州は全米で統一されたCommon Coreに準拠しておらず(Common Coreは任意)統一試験も学習内容も独自のものとなりますが、独自といっても、Common Coreを見る限り範囲に大きな違いはないという理解です。また、5Paragraph Essayの指導は伝統的にもアメリカの学校でずっと続けられている標準的指導という理解でいます。(もし間違っていましたら法人ホームページまでご連絡ください)

 

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