home > Blog > 藤原 さと > 発達障害等の子はどう過ごしている?アメリカ公立校の特別支援教育の現場

 

藤原さとです。

5月21日にNHKスペシャルで、「発達障害~解明される未知の世界」が放送されました。ご覧になった方、いらっしゃったでしょうか。アメリカにいるので、見れないと思ったのですが、Youtubeで検索してみたら、(いいことかわかりませんが、、)見ることができました。

番組冒頭、発達障害には①ASD(自閉症スペクトラム)②ADHD(注意欠如多動性障害)③LD(学習障害)の3つに大きく分けられることが説明されたところで、まずASDの人たちの中には、そもそも認知の基本であるモノの見え方や聞こえ方が平均的な人たちと違う人がいる・・、たとえば聞こえ方が違って、不要な音まで大きく拾ってしまうので相手の話がしっかり聞き取れない、というシーンが説明されました。

そこで、私、あっと驚いてしまいました。というのも、実は私も聴覚検査などでひっかかりはしないのですが(むしろ小さな音はよく聞こえる)、飲み会などで沢山の音が混じったりすると、雑音に紛れて話し相手の声を聞き取ることが難しくなるのです。基本的にうるさいところが苦手で、小さなころから、耳をダンボにして聞き取ろうとするのですが、特にざわざわしたところでは聞き取れず、苦労していました。小学校のころに、一生懸命頑張って聞いているのに、お友達から「さとちゃん(本当は違うニックネーム笑)また私の話を聞いていない!」と言われて傷ついたことも一度や二度ではありません。いつしか何度も聞き返すのも面倒くさいし、やめてしまいました。ちなみに、音楽の歌詞は音に交じってしまうので、ほとんど聞き取れません。一時期補聴器を買うと良くなるかなぁ、と探していたことも。。私を直接知る人は気がついているかもしれませんが、飲み会でひとの話を聞くときは、耳の後ろに手を当て、前のめりになっていることが多いです。

ということで、自分の耳がちょっと人とは違う聞こえ方をしているらしいことに薄々気が付いていたのですが、どっちかというと視力が悪い、、と同じような感じかなと勝手に解釈しており、耳が悪いってわかってもらいにくくて不便だな、、くらいでした。今回のことで、パズルが合っていくように私の症状に説明が付き、「おおおおおっ!」とつい驚いてしまいました。同時にこの度合いが今以上に強いと相当大変だろう、ということは容易に想像がつきます。私のような人も実は結構な数、いるのかもしれませんね。

さて、私の個人的な話はこの辺までにして、アメリカのカレッジで学んだこと第二弾です(第一弾はこちら)、クラスにおける特別支援教育(発達障害等を含む)や人種・ジェンダーなどの問題を扱う「Introduction to Special Populations」を受講しており、現地の公立小学校で16時間、特別支援学級のオブザベーションをしてきました。今回はその内容を共有します。

 

【アメリカの特別支援教育の基礎】

まず、アメリカでは特別支援教育のことをSpecial Educationと言います。そして法制上、1975年に施行された連邦法、Individual with Disability Act(IDEA)が基本となっており、現行のものは2004年改訂のものです。

ちょうど一年前くらいに、私たちの地区の教育区(Conroe ISD)のSpecial Education担当のトップにインタビューをしていましたので、その時のブログを再共有します。(http://kotaenonai.org/blog/satolog/1399/

基本的な考え方は、「まず通常クラス内で対応可能かということを第一選択肢とする」ということに大きな特徴があります。通常クラスがどうしても不可能なら、Special Class(特別支援学級)、Special School (特別支援学校)の可能性を探ります。なので、こちらでは、Special Schoolというものがそもそもほとんどなく、仮に全盲の児童生徒であっても、Regular Class(通常学級)の可能性を第一選択肢とします。

この考え方はLeast Restrictive Environment と言い、IDEAの6つのPrincipleの中でも根幹をなすべきものとして、クラスでも何度も取りあげられました。詳細についての日本語の説明としては、テキサスとカリフォルニアでは運用が少し違いますが、こちらのURL (http://eigomoromo.exblog.jp/17595124/)が参考になるかもしれません。(ちなみに一般論ですが、カリフォルニア州は財政難から教育予算が削られやすい傾向にある一方、テキサス州はいわゆる教育県のような感じで教育に予算を投入する傾向があり、恵まれているなぁ、と思います)

 

【現場の公立小学校はどう運用されているか】

さて、今回私がObservation(観察)先として選定したO小学校は私の自宅から車で20分くらいのところにありますが、上述のConroe ISD(コンロ―教育区)で非常に平均的な学校です。州統一テストのスコアも教育区平均値、人種ミックスも平均値(黒人10%、ヒスパニック30%、白人40%+その他)です。Economically Disadvantagedの子はISD平均より少し多くて、37%でした。

総生徒数550名のうち、Special Education対象は45名(8%)です。Special Educationのクラスには2種類あります。一つは比較的程度の重い子が学業の前段階としての生活力を身に着けていく場としての「Life Skills」というクラス、もう一つは発達障害の子を中心にレギュラークラスと行ったり来たりする子が特別支援を受ける「Resources」というクラスです。

 

【Life Skills】

Life Skills のクラスは上述の通り比較的程度の重い子が対象となります。社会生活・日常生活に支障がある場合は、このクラスでまさにライフスキルを学んでいきます。このクラスにいる子のの人数は14人。うち7名が自閉症児、4名がダウン症児でした。ほぼ全員が発話障害(Speech impairment)、知的障害を持っており、精神的な問題を抱えている子もいます。

このクラスでは、曜日や色、文字をマッチングさせたり、音楽を使って体の部位や動きを確認したりという毎日のワークがあり、それを座ってきちんと行うことをしていました。14名の生徒に対し、専門職員2名、フルタイムサポート教員3名という人数がついて見ています。

音楽や体育などの時間と合わせて、レギュラークラスに入って学ぶ時間、またSpeech Therapist が入って、スピーチセラピーを受けたりして一日を過ごします。

 

教室の裏にリビングルームのようなところがあって、そこで排せつトレーニングやお菓子を自分の席で座って食べる、歯を磨くなどのライフスキルを身に着ける場もありました。

 

【Resources】

次に、リソースルームです。こちらは、普通学級に基本的には席をもちながら、一時的に別の部屋で、個別の学習サポートを受ける部屋です。

このクラスには23名の生徒がいて、内訳は約半数がOther Health Impairmentというカテゴリーで、多くが発達障害(ASD、ADHD)の子どもたちです。そのほか5名程度がEmotionally Disturbedといって感情的な障害を持ち、3名が高機能自閉症(high functioning autism)、2名がディスレクシア(読み書き障害)の子でした。

このクラスにはやはり2名の専門教員、そして2名のフルタイムのサポートスタッフがいました。こちらのクラスでは、それぞれの子に対し、IEP(Individual Education Plan)というものが作成されており、そのプランに記載された目標に向かって、毎日の学習が進んでいきます。IEPは、学校の教師、専門家、保護者が一緒になって年間計画を作成し、レビューを行っていきます。

 

この写真にあるように、それぞれの子供たちが行ったり来たりのスケジュールを持っており、多くの子が一人で来て帰ることができないため、かなり忙しそうでした。このクラスの専任教員は、普通学級に出入りするタイミングを外から伺って、さささっと教室に入り、その子を取り出す前に、普通学級の先生にどういうサポートをすればよいか簡単に話し合い

連れ出します。そして、タスクが終わったら、また教室の窓から様子をのぞき込み、「いまだっ!」という感じで教室に入って、その子の状態を伝え教室を出ます。

 

【両クラスで16時間を過ごしてみて】

まず、大部分の時間をすごしたLife Skillsのクラス。3日間通ったころには子どもたちもなついてくれて、ちょっとした授業をやってみたり、一緒に遊んだりしましたが、一番の感想は「なんてこの子達はかわいいんだろう!!」ということにつきます。恥ずかしながら、あまり身近に自閉症の子もダウン症の子もいなくて知らなかったのですが、とろけるような眼差しで、ぺったりと横につかれたりすると、まさに溶けそうにかわいいです。自閉症の子も例外ではなく、目線が合わなかったり大きな声を出したり、吠えるように泣いたりしますが、手を振り払われても、鼻水だされても、叩かれてもなんだかかわいいんです。自分の子どもの小さかったころを思い出す感覚に似ているでしょうか。

もちろん親御さんの日常の苦労や、成長した時の心配、先生方の日々の大変さを私がそのまま分かったわけではないのですが、こんなにかわいいから(かわいい瞬間があるから)頑張れるんだ、という想像がついたことが私自身の大きな学びになりました。

そして3日もいると先生と雑談をする時間も増えてきて、いろいろ聞くことができました。特に2名の先生は、自分自身の子がLDだったりDislexiaを持っていて、子育てが一段落したところで、教員になるための勉強をして教師になった人です。これらの経験を持っている教師は、明らかに子どもを見る眼差しがやさしく、情熱があります。そして、下手に甘やかしもしません。しっかり叱るときは叱るし、一見厳しそうにも見えますが、Life SkillsにいたC先生は、「この子たちはいつか社会で生きていかなければならないのだから、ちょっとしたチャレンジを与え続け、自分は出来ることがある、と思いながらスキルを上げていかなければならない。何でもかんでも面倒を見すぎては結果的にこの子たちのためにならない。」と何度も言っていました。たとえば、食事の時もすぐに手づかみで食べようとしますが、そうすると手を外してスプーンを持つまでなんどもそれを自分で出来るように指示したり、自分で落としたものを自分で拾うまでは絶対に許しませんでした。

ResourcesにいたJ先生も子どもがディスレクシアで、引退後この仕事についたそうですが、ディスレクシアは教授方法やキットも確立されているらしく、あれこれやり方を教えてくれ、「とても大変だけど、Resourceにいる子はある日突然ポーンとジャンプするように出来るようになる瞬間があるんだ。それは普通学級にいる子ではたぶん経験できない充実感なんじゃないかな」と話してくれました。

ただ、両方のクラスとも精神面、行動面に課題がある子には悩まされていました。Life Skillsではある日クラスに入ったら、だれもいないし、先生が一人泣いていました。何事かと思ったら、ひとりシビアな行動の問題がある子がいて、椅子から机から投げてしまって大変で他の子を非難させたところでした。また、ResourcesのK先生も生徒のコントロールが効かなくなってしまい、少し前に親指の捻挫をしてしまったようで、以前も投げられたペンが肩にあたって、けがをするようなこともあったそうです。やっぱり家庭環境も大きく影響するとのことでした。

 

 【最後に】

「まず通常クラス内で対応可能かということを第一選択肢とする」といっても、実際の運用はかなり手もお金もかかることを実感しました。また、サポートの必要な子を何も考えずに普通学級に入れることは必ずしも適切ではないだろう、という感想をいだきました。日本は特別支援学校などには相応の予算も配分され、整備もされていますが、発達障害の子どもたち、特にグレーゾーンの子供たちの適切な診断とケアについてはまだまだこれからだという理解をしています。

NHKの番組にもあったように、いろいろとわかってきていることも多く、出来る取り組みは沢山あるはずなので、一つ一つ前に進んでいってもらいたいと思います。

 

 

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