運動会って何のため?

藤原さとです。

私の住んでいるアメリカ南部はまだまだ暑く、Tシャツで過ごしていますし、日中外にでるとジリジリと強い日差しが照りつけます。さて、先週末にヒューストン日本語補習校※の運動会があり、参観してきました。

なんだかんだといって、私が保護者として参加した運動会は日本の公立小学校のもの、アメリカの現地校のもの、そして日本語補習校のもの、と3種類となりました。こうして3種類の運動会を見た中で、感じたことを忘れないうちに書き留めておきたいと思います。

 

<日本語補習校の運動会>

まずは、先日の日本語補習校の運動会。運動会に関わらず、帰国後の学校教育、生活への適応を視野に入れていますので、大玉送り、リレー、綱引き、騎馬戦、玉入れのようにベーシックなものが多いです。

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もちろんみんな体操着を持っているわけではないので、白いTシャツを着て、ハチマキを借りて競技に参加するのですが、親にとっても自分の小学校時代を思い出させる運動会の応援ができるというのはなんとなく嬉しい気持ちがするものです。

running_undoukai

ヒューストン日本語補習校は、中学・高校もあるので、お兄さんお姉さんたちがボランティアで運営をしてくれます。ちなみに週一回のみの学校ですので、練習は授業の合間合間に最低限やるだけです。なので、当日はトラックを外れてしまう子がいたり、列が乱れたりは当然ありますが、ご愛敬!

 

<アメリカの現地校での運動会>

次にアメリカ現地校の運動会(Field Day)です。こちらはさらに、準備はほとんどなく、基本的に当日の運営はPTA(PTO)の保護者が準備をして、体育の専門の教師(PE)がサポートに入ります。なので、担任の先生は当日の引率のみで、全く運動会に関わる必要はありません。校庭も日本のように真四角で広いわけではないので、競技をする場所が決まっていて、その競技場所をクラスごとに順々に回っていく感じです。

ゆるっゆる(!)で、あまり何かをここで学ばせる・・というよりは、「楽しい日が一日あったね!」くらいのノリです(笑)点数も一応つけてはいるのですが、保護者がカウントしている程度なので、あまり信頼できません。。

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なぜかびしゃびしゃになる競技。こどもたちは大はしゃぎ!

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どのチームが一番早くワニを持って帰れるかを競っています。

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<運動会ってなんのため?~運動会の歴史>

実は、運動会について書き留めておこうと思った理由は、FBで流れてきたいくつかの投稿でした。一般的に長い長い準備をかけて行う運動会。これだけ時間をかけるものなのか、一糸乱れない行進をすることの意義はなにか、運動会をすることで子どもたちは何を学ぶのか。保護者のものもあれば、教員の方のものもありました。「楽しかった!」というものもありましたが、その一方でぼんやりとした違和感について書かれたものも多かったのです。

その時ある人とやりとりしていて、「運動会の起源について知っておいたほうがいいよ」と言われ、下記の記事を教えてもらいました。

 

日本の運動会発足のいきさつは、複数のページで紹介されているのですが、やはりこの文章が一番面白かったのでそのまま抜粋します。

http://www.ita.ed.jp/edu/ita8es/zencho/h26/h26zencho04_kigen140526.pdf

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運動会の起源は、明治7年に築地の海軍兵学校でイギリス人教官のもとに催された「競闘遊戯会」 とされている。以後、札幌農学校の「力芸会 、東京大学予備門の「運動会」と続く。東京大学予備」 門とは、第一高等学校(現在の東京大学)の前身にあたる。学校教育が始まって間もない明治16年 10月、勉強ばかりやっていると潤いがなくなるので、多くの人々に見せるために始まったらしい。 運動会という名称で行われた競技会は、どうやら東京大学が最初のようである。 その運動会が学校行事として定着するのは、初代文部大臣の森有礼が文部省令を発したことに端を 発している。森文部大臣は、横浜の外国人租界地で行われた陸上競技会を見物して体育教育に有効と 判断し、全国の小中学校で運動会を催すよう訓令を発したのだった。 しかし 命令を出された方は 大いに困惑した なにしろ教育制度が定まったばかりの時代だから運動場なんていう施設はなかった。困った学校関係者は、いくつかの学校で話し合い、合同で神社や寺の境内を借りて運動会を開催することを考えた。ただし、場所を借りるためには、氏子や檀家とい う神社やお寺と関わりのある地域の人々の許可が必要になる。そのため、生徒がただ競走するだけで なく、氏子や檀家も一緒に参加してもらおうということで、彼らが参加できるような競技を考える必要が生じた。今でいうなら「住民参加」である。そして考え出されたのが、どんな人でも楽しめる娯楽性の高いパン食い競走や大玉転がし(中には、ブタ追い競走というのもあった)だった。 さらに、どうせ神社やお寺でイベントを行うなら、夏祭りや秋祭りも一緒にしてしまおう、という ことになり、中央に櫓を組み、盆踊りや豊年満作踊りなども運動会でするようになった。これがフォークダンスのルーツである。つまり、運動会は、参加するすべての人々のためのお祭りだったのであ る。また、運動会の会場が家から離れている場合が多いということもあって、遠足という要素も混じった。そして、お弁当を作るという習慣ができたのである。

では、騎馬戦や棒倒しはどうして始まっただろうか?それは、国会が無かった時代に国会を開くことや憲法を作ることを主張した政治運動=自由民権運動がルーツであった。当時は政府の力が強く、自由民権運動が激しく弾圧された時代で、政府に反対する自由民権の志士たちは、意見を堂々と言う ことができず 街中で演説することもデモ行進をすることも集会を開くことも法律で禁止されていた。そこで、自由民権運動の壮士たちは、自分たちの主帳をどのようにして聞いてもらおうかと考え、 運動会に目をつけた 「最近流行の運動会をするのなら、演説でもないし、デモでもないから弾圧されないだろう と そして 壮士運動会 と称するイベントを開催し、そこで政権争奪騎馬戦 圧政棒倒し「自由の旗奪い合い」といった競技を創り出した。騎馬戦は、だれが政治のリーダーになるかを競う姿をゲームにしたものであり、棒倒しは当時の政府を倒す意味をこめて棒を倒すものだった。(続く)

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なんと!!そんな経緯があったのですね。ちなみに、初代文部大臣の森有礼の文部省令は、小中学生の集団訓練を進めるためで、統率された強い軍隊を作るという時代背景もあったようです。しかし、そんな省令を受けながらも、地域の人たちを巻き込みながら、パン食い競争や大玉転がしのような娯楽性の高い競技を次々に編み出し、お祭りや遠足と一緒にするなんて!いかにこの時代の人たちがクリエイティブで遊び心があったかがわかります。

運動会のルーツがこういう風であれば、なにも今の形の運動会にこだわる必要もないのかもしれませんね。今の時代にあった、本当の意味での“日本らしい”運動会。見てみたい気がします。

 

<日本らしさと運動会>

ところで余談ですが、日本語補習校は、帰国後の学校教育、生活への適応にとてもフォーカスしているのですが、「これが本当の日本なのかな?」と思うことが実は非常に多いです。何が「日本的」なのでしょう。

私の好きなコラムに歴史家の磯田道史先生が薩摩藩出身者が受けた教育について書かれたものがあります。戦国時代までの(武士)教育は「詮議(せんぎ)」という「ケーススタディ」型で、起こり得るけど簡単には答えが出ないような状況をいろいろ“仮想”し、その解決策を皆で考え合う訓練をしていたそうです。薩摩藩は江戸時代に一時下火となった「詮議」を復活させ、幕末から日露戦争にかけ、かなりの確率で勝てる政治判断を下した人材を多く輩出しました。

http://www.excite.co.jp/News/column_g/20130128/Shueishapn_20130128_16824.html

こうやってみてみると、日本人って、少し自信を失っているように見えますが、実はすごく面白くてクリエイティブなのではないかと思うのです。

最後は話が少しズレてしまいましたが・・、私にとって、「運動会の意味」を考えることと「日本らしさ」を考えることはオーバーラップしている部分があります。なぜかというと、「日本」というものを考えたときに、「形式主義である」「目的を考えない」という2のネガティブワードがどうしても出てくるからなのです。

「何のために生きているの?」「なんのためにこの勉強しているの?」「何のために運動会はするの?」こうした問いについて、あまり議論をしないことで、本来持っている日本の良さやクリエイティビティが損なわれているのだとすれば、それは、今一度問い直してみてもいいのかもしれません。

今日はこの辺で。

 

<その他の参考情報>

運動会の始まり

http://koyomi.vis.ne.jp/doc/mlwa/200710100.htm

Wikipedia運動会

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E5%8B%95%E4%BC%9A

 

※日本語補習校は、日本国内の小・中学校同様、学習指導要領に準じ、文科省より無償配付された教科書を使って授業を行い、現地校に通学する在留邦人を含めた児童、生徒を対象に日本語による教育の機会を提供し、帰国後の学校教育、生活への適応、国際的感覚や視野の育成を教育の目標としています。ヒューストン日本語補習校は「ヒューストン日本商工会」が設立した非営利法人「JEIH補習校運営委員会」を運営母体とする「私立」の補習授業校で日本国内の「公立」の小・中学校の様に義務教育を施す学校ではありませんが、文部科学省からのサポートを得て、校長先生は日本から派遣されています。毎週末土曜日に6時間の授業をしています。

(ヒューストン日本語補習校HPからの抜粋他)

 

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