home > Blog > 藤原 さと > アメリカ小学校の算数・理科・社会~キーワードは個別化

こんにちは。藤原さとです。

先週、アメリカの公立小学校2年生(Grade2)の国語の内容について書いてみましたが、引き続き今回は残りの教科について書いてみます。その上で、アメリカの学校の特徴を「個別学習」「協働学習」「一斉学習」の三要素に分けた上で考察し、未来の学校の在り方について少し考えてみたいと思います。

 

<Math 算数>

算数は、基本的には日本の学校のほうが進度が早いのですが、教えるアプローチに違いがあります。特徴は先に概念を体感させて、そのあとで実際に計算のプロセスに入るところです。たとえば、掛け算は2年生の後半まではやりませんが、その前に同額のコインのおもちゃをジャラジャラとグループごとに分けて、いくらになるかを競わせたりします。たとえば、クオーターコイン(25セント)が3枚、10セントコインが2枚、5セントコインが一枚だったら、25×3+10×2+5=100セント=1ドル・・という風なことを繰り返していきます。

また、割り算はやりませんが、多角形や円などのさまざまな形を先に学び、その中に線(補助線)を自由に引きながら、どうやって線を引いたらその図形を等分に分割できるのかに取り組みます。そのうえで、いくつかのブロックに色を付けて、1/4、3/6、2/5などと当てていきます。

 

polygon-G2

 

掛け算については、保護者向けにどういった形で、子供のサポートをするべきかについてレターが来たのですが、こちらの学校の考え方をよく表現していると思うので、ご紹介します。

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2年生での掛け算について、暗記が私たちのゴールではないことをご理解ください。私たちがその前にフォーカスするのは、掛け算の概念理解、同等のもののグループ化のプロセス、そして現実社会で、掛け算が必要とされる場面の認識です。

“Please keep in mind, however, that our goal in second grade is NOT memorization of multiplication facts. Our focus is on conceptual understanding, the process of creating equal groups, and recognizing multiplication situations in the real world.”

 

娘の学校では、シンガポール算数は直接的には採用していませんが、単なる計算というよりも文章題が非常に多く、一部似ている部分があります。シンガポール算数は、こちらではよく聞き、近隣の教育区は公立校で採用されています。

 

<理科 Science

理科は、2年生でやったのは、下記のようなアイテムです。

―月や太陽、地球の関係

―水の循環と天気 (海からの蒸発、雲やハリケーン、竜巻など)

―天然資源と人間の作ったもの

天然資源については、天然資源だけで家を作ってみよう、という家庭課題が出て、こういう時にはここぞとばかりに皆はりきります。。Glue gunという強力な接着剤があって、親も接着剤を使う場面では手伝います。こうしたものを作ったときは、みんなの前でプレゼンテーションします。

Galatas-natural-resources-G2

 

<社会 Social Science

2年生の社会は、娘が家に持って帰ってくるものを見ている限り、アメリカの歴史と地理が中心だったように思います。初代から今までの歴代大統領についてそれぞれ担当を決めて調べ、発表もしていたようでした。コロンブスやボストンティーパーティーの時代から、ゴールドラッシュ、奴隷制度からの脱却(リンカーン大統領やマルチンルーサーキング)、エジソンなどの発明家などについて。現代については、連邦政府、州政府、地方議会についてそれぞれの役割を学んでいました。ヒーローとリーダーの条件についての課題があったりして、なかなかアメリカ的です。最後にマネー教育がありますが、これはまた別の機会に纏めて書きたいと思います。

social science G2

 

<その他の教科>

アメリカの多くの小学校では、国語・算数・理科・社会はクラス担任の先生が教えますが、そのほかに、アート、音楽、体育、リーディングなどのクラスがあり、それぞれ専科の先生が教えます。こうした基本四科目以外の教科は学区によって違いがあり、違う学区ではコンピューターサイエンスやロボティックスが入っているところもありますし、逆に教育予算がきちんととれていない州ではアートの授業が実施できなくて問題になっていたりするケースもあるようです。

専科の先生なので、アートは異素材を使った作品や結構面白いものを持って帰ってきます。一方で、体育などは、トライアスロンをする先生で、「今日何してたの?」と聞くと娘曰く「腹筋と腕立て伏せとランニング・・」とブートキャンプですか??というようなことをやっているようです(笑)ちなみに運動会は、体育の先生と、PTA(こちらではPTO)がやってしまうので、担任の先生は当日の引率程度でなにもありません。

art-G2

 

<ICT機器の利用について>

この辺の詳しいことはこちらのブログに書いてありますが、娘の学校では2年生の段階ではそれほどバリバリに使っているわけではありません。(近隣教育区の学校で、一人一台iPadというような公立校もありますが、娘の学校では少なくともG2でiPadは見ません。) クラス内では、上に掲載した天然素材で作ったおうちの写真の後ろに見えるように、数台のコンピューターがあり、グループに分かれて、授業を行う中で、一部リーディングや算数の個別学習をパソコンでやったりします。先に進んでいる子がパソコンで学習する間、その分野が苦手なグループの子が数名先生の周りに集まって、より丁寧に教えてもらうことが多いようです。

また、2年生になると、3年生・4年生のプロジェクト型学習のために、子供用の検索サイトをつかって検索を始めたり、簡単なグラフ作成を始めます。まだまだ使いこなすというよりは、次学年に向けての準備という感じです。学校に一つ、Technology Labがあり、そこではクラス全員の子がパソコンをつかって学習できます。

graphs-G2

 

プログラミングに関しては、昨年はHour of Codeに学校として参加していましたが、今年はしていなかったようです。この辺は、学校それぞれが判断しているように見えます。

 

<時代は「個別学習」×「協働学習」にシフトしている>

2年目になってだんだんわかってきましたが、もし仮に学校での学習を「一斉学習」「個別学習」「協働学習」と分けるとすると、アメリカは「個別学習」の要素がとても強い「個別学習」と「協働学習」の組み合わせだと思います※。

3月に参加した全米最大の教育イベントのSXSWeduでも、その色はとても濃く反映されており、Personalized Educationに関するものが割合も多く目立っていました。それぞれの子どもの特性に合わせて、その子の伸びる方向性でできるだけ支援するのが望ましいという考え方です。これはGifted & Talented クラスの設置など色々なところでその思想が見え隠れします。

一方で、「協働学習」はグループになって座っているので、一緒にワークをする機会も時間的にはそれなりにあるのですが、それでアウトプットを出すことはほとんどなく、最終的に自分の決めたテーマに従って、自分のプロダクトを作っていくというスタイルが主体だと思います。この辺は、アメリカはチームスポーツや、ボランティア活動を含めた課外のコミュニティ活動など、学外活動に譲っているようですが、ヨーロッパの一部の国や国際バカロレアなどでとても発達しているように、協働学習のスタイルが学校の中にもっと入ってもいいのになぁ、と個人的には思ったりもします。

翻って日本。日本は、「一斉学習」からどのように変わっていくのでしょうか。今まではアクティブ・ラーニングなどにみられるように、どちらかというと、「協働学習」を志向する雰囲気が強かったと思います。私たちのプログラムも社会構成主義をベースとした「協働学習」のスタイルをメインに据えた探究型学習を実施しています。ただ、ICTの発達により、昔は不可能だった個別学習の在り方が実現するようになり、時代はだんだんに「個別学習」×「協働学習」に論調がシフトしていっているように見えます。

今までの社会を振り返り、これからの社会を想像していくことで、時代に合った学習形態を模索していくことが必要です。それはどう考えても、高度成長期の同規格大量生産時代の「一斉学習」ではないことは明確です。「教育」って何のためにあるのか。そこを見逃すことなく、かつ変化を恐れないことが求められているように感じます。

 

Galatas-exibition-G2

 

※ここでは、みんなで一緒のビデオを見るとか、基本的な知識をみんなで共有するという行為そのものを見るのではなく、どのような文脈で、こうした行為が行われているかという視点で書いています。よって、そのような行為があったとしても、「一斉授業」の中に含めていません。

 

<関連ブログ>

アメリカ公立小学校での論理力の育て方

http://kotaenonai.org/blog/g2-review-at-us-school-satoblog160502/

子供の個性を認めるのはさすがに得意!?アメリカの公立小学校の新学期

http://kotaenonai.org/blog/satolog/861/

アメリカ公立小学校 一年上期の授業内容

http://kotaenonai.org/blog/satolog/465/

ウチの子供は問題児!?アメリカでの解決方法

http://kotaenonai.org/blog/satolog/388/

アメリカでの学校選び

 http://kotaenonai.org/blog/satolog/62/

アメリカ公立小学校の新学期

http://kotaenonai.org/blog/satoblog_140830/

アメリカの学校現場におけるITの導入からみる日本のICT導入に関する議論の特殊さ

http://kotaenonai.org/blog/satolog/1003/

アメリカでの習い事(1)チルドレンズミュージアム

http://kotaenonai.org/blog/satolog/627/

デジタル教材に限界あり? アメリカ公立校でのデジタル教材との付き合い方

http://kotaenonai.org/blog/satolog/329/

ここだけはマネしちゃいけないアメリカの教育格差

http://kotaenonai.org/blog/satolog/1076/

 

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