アメリカ公立小学校での論理力の育て方

こんにちは。藤原さとです。

テキサスは一歩一歩夏の盛りに近づいています。今、大雨が降る時期で、先日はヒューストン地域で8名の死者がでる洪水、先週は竜巻警報がでて、明け方に洗濯機のおいてある小部屋で縮こまって寝ていました。昨年は自宅の庭の木に雷が落ちたりとなかなかワイルドな場所でもあります。

アメリカの多くの学校は6月に終了し、8月もしくは9月に新学期が始まります。そろそろ学年も終わるので、私自身の備忘録も含めて、娘が在籍する小学校2年生(Grade2)でどのような勉強をしていたかについてまとめてみました。

まず今回は一番日米で違いがはっきりするLanguage Arts(国語)の授業についてレビューします。

 

<アメリカは文章の論理構造理解を徹底する>

2年生も引き続き、文章の読解・記述における論理構造をしっかりさせることを目的に、トレーニングを重ねていきました。

1年生の時には、短い文章を読んで主題(main idea)を一文で書く、もしくは日本でもおなじみの時系列(はじまり→中間→おしまい)というものや、5W1Hを学びましたが、2年生になると、ノンフィクションもラインナップに加わり、もっとその構造は複雑になってきます。「この文章はどの目的で書かれたものか?説得なのか?情報提供なのか?楽しませることなのか?」また、「あなたが今発言・記述していることは事実(fact)なのか、意見(opinion)なのか?」と聞かれるようになっていきます。

 

1)文章の目的と種類

まず、文章の類型として、大きくフィクションとノンフィクションに分かれ、サブカテゴリ―として神話やフェアリーテイル、日記、学術論文、新聞記事・・など様々な文章の形があると学びます。

次に、PIEと言って、文章には目的があり、大きく下記の3つに分かれると学びます。

P:  Persuade  (説得するための文章)

I:   Inform (何かを知らせるための文章)

E:  Entertain (人を楽しませるための文章)

 

2)Fact or Opinion? (ノンフィクション)

文章を書く長さも長くなってきます。長さ的には、日本の小学校2年生と同等だと思いますが、文章を書いているときに、書いている、もしくは読んでいる内容が事実(fact)なのか、意見(opinion)なのか問われるようになっていきます。

 

3)キャラクター設定 (フィクション)

フィクションのストーリーについては、1年生の時にはどんなキャラクターがいるかにとどまっていましたが、2年生になると「どんなキャラクターか?」また主人公は物語のなかでどのような変化・成長を遂げたかについて自分なりの意見を書く必要が出てきます。

 

4)ストーリーの接続と展開(フィクション)

アメリカのエンタテインメント作品は、ハリウッドの映画作品に代表されるように三幕構成をベースとした非常にリジッドなストーリー展開が特徴ですが、基本形を早くも学んでいきます。こうした物語では主人公は目的を持ち、数々の困難に立ち向かい、問題を解決していきます(ハリーポッターや、スターウオーズなど、欧米の多くの作品がこの構成をもっています)フィクションを読むにあたって、物語の設定(setting)、キャラクターの変化、ストーリーの展開と接続について、少しずつ学んでいきます。

 

4)サマリー (ノンフィクション・フィクション)

1年生の時にスタートした、文章の中で一番大切なメッセ―ジを把握し、シンプルな短い文章にするというワークは継続して行われます。併せて、自分なりの解決法を考えたり、次の展開を想像したりもします。

 

Galatas-languagearts-G2-2

(G2の教材)

 

<自宅での読書>

1年生のころからスタートした毎日20分の自宅での読書を継続します。もし本人が読めない場合は読み聞かせで良いので、読んでくださいと指示が来て、毎週読んだ本の題名を本人が書き、親のサインをもらって金曜日に提出します。こちらでも、文章の構造理解についてのインストラクションが保護者に配られ、子どものサポートをするように指示されます。

本は学校の図書館や地域の図書館から借りてもいいのですが、オンラインのリーディングサービスがあるので、それを読んでいっても構いません。私は、はじめは図書館に通っていましたが、途中からオンラインに切り替えました。こちらのほうが、スモールステップになっていて、英語がまだおぼつかない娘にとっては、英語で読み上げをしてくれるので、助かります。

 

Razkids

(学校で使用しているオンラインリーディングアプリ)

リーディングは、個別学習として教室内でもオンラインで行っていて、読解テストが最後についていてクリアしていきます。読むのが上手な子はどんどん先にステップアップしていきます(気持ち的には少し複雑ですが)。最低限クリアしないといけないレベルがあるので、遅れている子は先生がサポートをします。

基本的に、読ませる総量は圧倒的にこちらのほうが多いかと思います。

 

<日米の国語の比較>

私の娘は週末は日本語補習校に通っており、学習指導要領に則った国語学習も並行して行っているので、その違いをよく見ることができます。

日本の文学は、どちらかというと「どうして?・なぜなら」という論理主体ではありません。むしろ伝えたい美しさや面白さが先にあって、それは有無をいわず動かしがたいものであり、それをいかに面白く、美しく、そして場合によっては心地の良い驚きを与えながら表現するかに注力されてきたのではないかという理解をしています。娘の小学校の国語の教科書をみていても、詩や俳句の割合が多く、文章も情緒的な美しい文章の紹介が多いと感じます。アメリカの小学校の「main ideaを書きなさい」「この文章の目的を書きなさい」「構成を明確にしましょう」を繰り返すものとは全く違います。谷川俊太郎さんの詩なんて、言葉なのに、音が聞こえてきたり、何か色が見えてくるような質感にあふれていて大好きです。非常に高度なコミュニケーションの姿がそこにはあります。

一方で、アメリカの学校は、そもそも英語談話の構造が因果律を特徴としていることもあり、上述のようなWhy Becauseの論理接続を基本とした国語教育が行われています。

どちらが良いという問題ではないのですが、こうした差が、大きくなったときのコミュニケーションの取り方の差になってくるのだろうと思います。

日本の報道番組や、ネットでの投稿、議論を見ていると、「何の目的で話しているのかわからないこと」「定義をはっきりせず、みんなある言葉に対してバラバラのイメージを持ったまま議論をすすめること」「目的に対してどこのどの部分の議論をしているのかが明確でなく、枝葉末節の話で終わってしまうこと」などがよくあります。

私個人としては、日本固有のものを捨てる必要はまったくないと思います。日本の伝統を大切にし、日本ならではのコミュニケーションの仕方をしっかり引き継ぐことは非常に重要で、決してこうしたベースを失ってはいけないと思います。ただ残念ながら、グローバル化に合わせ、多様なバックグラウンドの人たちと仕事をすることが増えています。そうなるとそういう人たちと何かを成し遂げていく過程では、Why Becauseの論理接続の構成を並行して学ばざるを得ない、という状況に私たちが放り込まれているという現実も一方で直視せざるを得ないのでしょう。

いつ頃からこうした論理構造を学ぶべきなのか、また、そういったときに、アメリカのように頭からフレームをドーンと落としてエクササイズを重ねるのが良いのか、そういったことも含めて、議論してみてもいいのかもしれないと感じることがあります。この辺については、私たちの実施している探究型学習の中でどのように位置付けていくべきなのか、引き続き考えてみたいと思います。

 

<関連ブログ>

子供の個性を認めるのはさすがに得意!?アメリカの公立小学校の新学期

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デジタル教材に限界あり? アメリカ公立校でのデジタル教材との付き合い方

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