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藤原さとです。

さて、本日は年初らしく、本当はもっと崇高なものを書きたかったのですが(笑)、昨年秋からスタートしたアメリカの学校で導入された個別学習のラーニングシステムを使って4か月目に入ったので、そろそろ感じたことをまとめておきたいと思います。

 

【昨年の秋学期から娘の学校で個別学習のラーニングシステムが入りました】

私の以前のブログ「マイクロスクール~学びの個別化と協働学習のミックスの理想を追うアメリカの新しい学校のカタチとは?」で個別学習のラーニングシステムについて紹介しましたが、アダプティブラーニングとは、「個人に最適化した学習」と訳され、特にICTの技術を使って、学習者のログを丁寧にとり、得意不得意、学習進度・速度、解答速度、学習者のクセなど膨大なデータを拾っていきます。そうしたデータをもとに、学習内容だけでなく、学習方法までその個人に最適化させていくことを目指していくものです。

娘の学校では昨年9月に学校から連絡があり、今後アダプティブで、子供の理解度に応じて進められるオンラインプログラムを使用します!と連絡があり、使い始めました。IXL https://www.ixl.com/というもので、アメリカのコモンコアスタンダード(合衆国全体での指導要領のようなもの)、もしくはコモンコアを採用していない州はその州のスタンダードに応じてK-12(年長から高校3年生まで)の国語算数理科社会における、必要なスキルセットとそれぞれのスキルに対応する問題から構成されています。

IXLはすでに190か国で25万人の先生と600万人の生徒に使用されている(一時的なものも含む。2017年1月時点。同サービスウエブサイトより)メジャーなもので、娘の学校が特に最先端で導入しているわけではありません。

 

 

【IXLの内容】

具体的には、例えば、算数だと359スキル、国語161スキル、理科84スキル、社会92スキルがあって、それぞれのスキルに対して、設問があって、回答していくようになっています。

こちらの問題を解いていくと、時間や正答率が測られて、アナリティクスが表示されます。これらの問題は教室で実施するほか、ブラウザで見るタイプなので、家のPCで宿題をしたり、本人と親(ともちろん教師)がその進捗度合いを確認しながら進めることができます。

 

宿題をしている様子

 

【先生が個別学習やシステムに慣れ、コミットしないと成り立たない】

このラーニングシステムですが、実は9月にやります!と言ってから数週間停滞していました。一度宿題になったっきり、音沙汰がなく、更新もされませんでした。完全紙に戻っていました。もうやらないのかな?と思った11月に入ってやっと再稼働しはじめ、今は紙と並行して、学校でも使われ、レベルチェックと宿題に使われています。

やはりいきなり使えと言われても、先生が使い方に納得し、少し慣れないと初動は時間がかかるようです。

 

【システムを使ってみて。こどもが先に進みすぎたときはどうする?】

また、簡単な問題の場合は、真新しいのと、少しゲーム感覚なので、子どももとても喜んで使いますが、それだけにすぐ飽きました。やっぱり勉強は勉強なのですよね。なので、(ほっておいても勉強する子は別として)紙での勉強と結局一緒で、何等かのモチベーションを保持する仕組みがなければ、継続しません。

さらに、ある日、娘は「自分だけが難しいことをやらされているような気がする」「難しくてわからない。」「いやんなっちゃう」と文句を言いだしました。

そこで、(オンラインのいいところですが)一緒にウエブページを開けて、どこで躓いているかが見れるので、一緒に問題を見てみたところ、以下のような内容のものでした。

 

<問題の日本語訳>

マーサは旅行を計画してます。彼女は海に行くか、町に行くか、山に行くか、川に行くかを選べます。また、そこに行くのに飛行機か車を選べます。ホテルに泊まるか、キャンプ場に泊まるかも決められます。マーサはあと一人一緒にいい人がいて、友達と一緒に行くか、お父さんと行くかを考えています。マーサが選べる旅行の選択肢は何通りあるでしょう?

これは、組み合わせの問題なので、4×2×2×2=32 の32通りが回答です。もっと複雑な問題もありました。でも、これをクラスで習ったことがなくて、入り込んでしまったときはどうしたらいいのでしょう?娘はとりあえず、先生にやり方を聞き、掛け算すればよいということだけはわかっていましたが、機械的に掛け算をしていました。これは本人にとっての本来の学びになるのでしょうか?

 

このあたり、岩瀬直樹先生の「学習の個別化」というブログで触れられていますが、そこにこんなことが書かれています。

 

*********

学習の個別化は決して「孤立化」ではありません。

一人で黙々と進めるのなら家でやればよい。

ネットコンテンツの急速な発展により、何も学校に来なくても一人で学習する条件は整っています。非常に個別化で、進捗も管理してくれる。

そこでの問題点は何か?

一つ目は、それは先にも書いた「孤立」が起きること。

「わからない」が「わかる」に移行する際に、自分の力以外になくなってしまいます。

行き詰まってしまったときどうしようもなくなってしまう。

その学びの環境は必ずしも安心・安全とはいえません。

******

 

まさに娘のケースでは、上記のことが起きました。

先生はそのほかの問題点(2つ目、3つ目)も指摘されていますが、それはブログを読んでみてください。共感します。

このように、学習の個別化を推進するアダプティブラーニングは使い方を間違えると、ネガティブな方向に進んでしまうのです。

 

【だからといってアダプティブラーニングシステムは不要なのか?】

でも、だからと言って、入れないほうがいいのか、といういとそんなこともないな、というのが私の意見です。

なぜならこの数か月だけでも、子どものパフォーマンスが継続的に教師と親と子で瞬時に整理した形で共有され、バラバラと紙でまるつけされたものが来ても、親も整理しきれないので、よくわかるようになりました。

先生にとっても、どこでどの生徒が行き詰っているかを一人一人細かく把握するのは大変だと思いますが、このアナリティックスがあると助けになるのではないでしょうか。また、他の先生に共有するときも瞬時に行えます。

 

【ICTは使ってみてからがスタート。ICTに対する無駄な幻想は捨て、期待値を敢えて下げてみよう】

本来、アダプティブラーニングシステムが目指していることは、もちろんこんなレベルではなく、それぞれの子供の理解度や認知の特性に合わせたコンテンツをアルゴリズムによって、提示していくことにあります。必要に応じて単元に関連したコンテンツに後戻りしたり、ビデオやテキストなどいろいろ組み合わせがされたレッスンが提示される、、というものが未来像です。

ただ、今回の組み合わせで娘が躓いたとき、適切なチュートリアルが見つからなかったので、私はウエブでCombination G3 youtubeなどといろいろ検索してみて、娘の理解しやすいコンテンツを探すのに時間を使いました。Kahn Academyのようなコンテンツも見てみましたが、ベストフィットなものはすぐには見つかりませんでした。私自身も紙に書いて一から教えなければ、ビデオを見ただけでは本人は理解しませんでした。これだけの作業をAIやシステムが行えるようになるにはまだまだ時間がかかると思います。

ただ、もちろん、こうしたアダプティブラーニングシステム。少なくとも現段階は非常に原始的なものであっても、有効な部分があるのであれば、そこを認めて少しずつ使っていくことが、結果的に良い学びにつながっていうのではないかという可能性を感じます。

残念ながら、日本は、一般論で言って、Education Technologyの領域に対して、やはり保守的すぎるように思います。つまり、「使う」前に「考えすぎ」のように思います。

考えすぎると、たとえば上述のケースのように「先に進みすぎた子はどうするんだろう?」というような不安ばかりが先行してしまいます。

でも、一度使ってみれば、(当面は)教室内ではそういう使い方をしなければいいんだと決めればいいだけのすごくシンプルなことだとわかるのです。特にクラスに30人もいて、一人の先生が教える公教育の場合、(家庭教師を上回るような優れたティーチングシステムが完成でもしない限り)何も学校のクラスルームで教えていないことまで学校で面倒を見る、という風にしなくていいのだと思います。それは使ってみて初めて分かることです。

そうすると、現時点のレベルのアダプティブラーニングシステムは、当面生徒の学習進捗管理と、本当に先生が有効だと思うティーチングコンテンツの利用に限って割り切って使用し、本来の「学びの個別化」はプロジェクト学習や学び合いのような場で丁寧に行っていくということもできるな、、と冷静になれるのです。娘の学校でも午前はIXLも補助的に使いながら認知的な学習を中心に行い、午後の時間はほとんどグループでのプロジェクト学習を行います。こうした海外の個別学習のスタイルを参考にしてみたり、思ってもみないような有効な使い方をする先生がいらしたらその知見を共有していけば、もっともっと使いやすくなるかもしれません。

 

時代は変わっています。Design Thinkingと言われるように、まず使ってみて、考える、改良点を探す・・というサイクルを高速で回していかないと、どんどんおいていかれる時代です。こういう時は、トライアンドエラーをしながら前に進むほうが早いのです。

私が日本の学校環境を見ていて残念に思うのが、最先端のシステムでなくても、明日からも先生の業務や保護者とのコミュニケーションを大幅に改善し、コストも下げられるような技術ソリューションが世の中にたくさんあるにも関わらず、議論ばかりで堂々巡りをして、結局導入に至らず、いつまでも効率的とはいえない運営がそのままになっている部分です。

残念ながら、この領域においては、アメリカだけではなく、ヨーロッパ、アジアの他の国にもすでに遅れてしまっているし、この態度が変わらないと、その差は広がっていく一方ではないかと心配になります。

もちろん、これは個別の先生や学校現場だけが頑張ればいいというような問題ではなく、むしろそれよりも上のレイヤーの組織や、もっといえば、全体を取り巻く保守的な“空気感”もが大きいと感じています。もっと、失敗や、新しいものに寛容だったらいいのになぁ、と思います。これは保護者にも言えることですね。

最後に、年初っぽいことを言うとすると、今年は(も)やはり保守に回るのではなく、チャレンジを続け、かっこ悪くても前に進むような年にしたいと思っています。

ということで、今年もどうぞよろしくお願いいたします!

では今日はこの辺で・・。

 

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